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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
13章 桜花死神連続変死事件
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霧、攻略

 発生した霧はあっという間に栄一郎と保彦の視界を覆った。

「……またか」

 保彦が霧を忌々しそうに見る。

 今ではネタが分かっているとはいえ、前回覆われた霧の中で幸之助を失っている。直接的原因を作ってしまったことは保彦にとって取り返しのつかない出来事となっている。

「これで逃げることは出来ん」

 そして、霧を発生させた悪魔は勝ち誇った様に2人を見る。

 初めから閉じ込めてしまえば良かったのだ。霧の中から抜け出そうとするなら元凶を倒す為に切れ味の悪い剣ではなく死神の力を使った方が手っ取り早い。

 それを知っている悪魔はあえて死神を追い詰める状況に持ち込み、心臓と他の臓器を喰らう気でいた。

「出来ない、か」

 だが、悪魔の言葉を聞いた保彦はまるで血の気が引いたように落ち着いていく。

 その様子に悪魔が怪訝に思う。

(何だあの様子は。先程までとちゃう)

 力を使わなければ有利に進めるはずであった状況をあえて追い詰められる状況にした悪魔であったが、2人の死神に焦りがないことを不可解に感じる。

「頭の血が引いたみたいだな」

「この霧見てお陰さまでな」

 どうやら霧を見たことで保彦の中で何かが切り替わったのを栄一郎は感じ取っていた。

「栄一郎、やってくれ!」

「そのつもりだ」

 栄一郎は手に持っていた死神道具とは別の道具を懐から取り出すと起動させた。

 瞬間、霧が晴れていき悪魔が驚愕する。

「またか!」

 死神が力を使わず道具で霧を払ったことが偶然ではなかっただけでなく、手段を確立していることに苛立ちが募る。


 栄一郎が霧を払う為に使ったのは悪魔囲い壊せる君(フラグマ・ブレーカー)、もちろんモルテが貸した道具である。

 霧は悪魔の悪魔囲い(フラグマ)であることを直感していたモルテが教皇選挙からさらに性能が良くなったのを幾つか拝借したのだ。

 最も、作った本人達が性能が上がっているのか確認出来たらしてほしいと渡した為に快く貸したのだ。

 しかも、人数分あったことで二種類の死神道具は1人1個ずつ。ただし、通常は悪魔囲い壊せる君(フラグマ・ブレーカー)のみで対処し、それが無理であれば使い捨てである悪魔囲い壊し君(フラグマ・ブラウク)で切り抜けることとなっていた。

 なお、二種類の死神道具はこの件が終わったら同じものを作る為に使ったのは数日ほど貸すことが製作した本人達の意思を聞かずに決定している。


 悪魔囲い壊せる君(フラグマ・ブレーカー)により霧が払われたことで悪魔は狙いが砕かれたと悟り、一気に詰め寄る!

「力を使え!」

 遂に口から本音が漏れた悪魔。

 死神が力を使ってくれなければ姿を写すことができない。心臓を奪うにもある程度の目処を知りたい。心臓から生まれる力の質が良ければ力は飛躍的に増す。

 だから今まで多くの死神の心臓を喰らってきたのだ。死神の力を利用することで。

 それが今になって発覚したことで慣れきってしまっていた悪魔はさっそく手段を捨てたがお粗末となっていた。


 詰め寄って来た悪魔の攻撃を保彦は霊剣で受け止め防御に撤した。

 所々で栄一郎が攻撃を仕掛けて数の優位で悪魔を追い詰めるが、完全に刈り取れるわけではないことで2人は徐々に後退する。

「その様な物で我を刈れるはずなかろうに」

 2人が後退しているから有利と思えるはずなのに全くその気がしない悪魔は苛立ちから忌々しそうに睨む。

 一方で栄一郎と保彦は後退しながらも狙いに気づかれることなく悪魔を誘導出来たと様子から見て思う。

「もうちびっと行くか?」

「そうしたいトコそやけども……」

 尋ねた保彦に栄一郎はどこか諦めた様子であった。

 瞬間、栄一郎が諦めた意味、通りの横から光槍(ライトニング)の槍が飛んできて悪魔の頭上に直撃した。


 だが、悪魔には大した怪我にはならず、僅かに刺さった程度ですぐに槍は消えてしまった。

「硬いな」

「って、何でいきなって使ったのそれ!」

 そこには光槍(ライトニング)を手に持った佐助が悔しそうにしている所につららが突っ込みを入れていた。

 不意討ちを食らった悪魔は忌々しそうに2人を睨み付けた。

「よくも……」

 悪魔の視線が逸れた瞬間、保彦の襟首を掴んだ栄一郎が離脱する。

 それを横目で見ていた悪魔は、狙いをつららと佐助に変えた。

「追いかけへんんだ」

「力を使え……使えぇぇぇぇ!」

 自分の思い通りに行かない悪魔は叫ぶと突撃した。

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