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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
13章 桜花死神連続変死事件
548/854

朝ごはんを食べながら

遅くなってすみません。

途中で文章に矛盾が生れた為に書き直しをしていました。

「そないなら丁度ええ。朝ごはんにしたらどう?」

「お義母はん!?」

 遠方の通信(リモータ)に力を通していた栄一郎、佐助、保彦が疲労しきっているのを哀れみの目で見ていると、奥から忠信の母親である藤光イエが現れた。

「お袋、何しに来た!?」

「そろそろ朝ごはんにしたらどうかと言いに来たんだ」

「もうそないな時間?」

 イエの言葉に豆庵堂に駆け込んでから随分と時間が経っていたのだと悟る。

 桜花の朝としては遅い時間になっていたということもあり、イエが介入してきたことで全員が腹を空かしていたことに気づく。

「話し終わったと思って見てみれば終わってへんのには驚いたけど、そろそろ一息付くにはええ時間だ」

 時間を忘れて未だに話し合っていた現役の死神達に呆れるイエ。

 イエは元死神であり忠信と幸の師に当たる。

 当然今回の件のことも知っており、話しを聞いても問題ない人物である。

「朝ごはんは全員の分も出来とるから運ぶの手伝っておくれ」

「はい。おふみ、つららも手伝ってくれへん?」

「構おりませんが、幸はん隣はどうするんどすか?」

「あ……」

 ふみから豆苑をどうするのかと言われ幸は硬直した。


 桜花の朝として遅いということは既に豆苑が開いていなければならなかったのだ。

 外では朝早くから仕事に赴く者もいれば朝食の豆腐を買いに隣の豆苑に客が訪れているはずなのだ

 豆腐は忠信が保彦に説教をしている間に前に終わっていたから商品については問題はないのだが、店を開け損ねている、話しに集中し過ぎてそっぽかしていたことに気づいてしまったのだ。


「心配ないよ。店番はあたしがしておくし、今は孫達に任せとる。お幸はこっちに集中しな」

「おおきにお義母はん」

 どうやら既にイエが豆苑の営業を始めていたようだ。

「とにかくあんた達は朝ごはんを食べな。そうでないと片付けられへん」

 こっちは既に食べ終わっているからと言ってイエは奥へと戻って行った。

「二人とも、運ぶの手伝って」

「はい」

「ええ」

 そして、後を追うようにしてつらら、幸、ふみは店の奥へと入って行き、すぐに戻って来た。

「持ってきたよ」

 そう言って、つららとふみが人数分のお椀や皿を机に並べる。

「豪勢だな」

「異国の人が来とるのそやし美味しいもの食べさせたいってお義母はん張り切ったのよ」

 いつもと違う朝食に忠信に幸が理由を言う。

 運ばれてきた朝食は白米、人参と油揚げの味噌汁、豆腐、黒豆の煮物、青菜のおひたし、漬物である。

「ほう、うまそうだな」

 そして、豪勢な朝食の理由となっているモルテは運ばれてきた品に一つ頷いた。

「そう言うけど、向こうで作ってあげとるんそやけども?」

「えっ!?つらら作ってやっとるのか!?」

「作っとるけど何や?」

「なんもないが」

 つららがモルテに作っていると聞いた佐助はこれは脈ありかと思う。

 何せ、つららが一時期桜花にいないことは桜花の死神全員が理由も含めて認知していること。その逃げ場所としてアシュミストに滞在していることを考えると、何故か顔が笑ってしまう。

「アシュミストでは材料が限られているだろう。それに、ない材料もあれば水の味も違うのだから向こうで食べる味とは違うだろう」

 一方で、モルテは桜花でなければ味わえない味もあるからと楽しみそうに言う。

 その言葉につららとしても自覚している為にそれ以上のことを言わない。

「冷める前に食べてしまおう。佐助はええとして、二人は食えるか?」

「休んそやしいける」

「ウチもだ」

 栄一郎と佐助が大分疲れが取れたからと言うと佐助が悲痛な面持ちで忠信に言う。

「ウチの心配もしてくれよ親父!」

「それだけ口動くなら問題ねえだろ!」

 佐助の言葉を無視して、どうやら全員が朝食を食べても問題ないと見た忠信は座り直す。

「それじゃ食うぞ」

 そう言って全員が朝食を食べる為の言葉を述べてから食べ始めた(モルテは普段は祈りだが合わせている)。


「ほして、これからどうする?」

 朝食を食べながら栄一郎がこれからのことについて尋ねる。

 朝食なのだから食べている時くらいはゆっくり休めと言いたくもなるのだが、死神であるからにはどうしても今起きている件が気になってしまう。

「モルテはんの準備が整うまでは動けへんな。モルテはんが持つ剣がどうしても必要となるはずだ」

 忠信はモルテが危険を感じながらもアシュミストにいる死神に頼んだ背景を理解しており、同時に自分達にとって必要であることを理解している。

「言う前に気づいていたのか」

「そりゃ話し聞いてれば分かります」

「モルテは詳しく言わなければとろいからね……」

 理解してくれて助かると言うモルテをいつものことだからとつららが呆れる。

「そやけども、早うて三日だろ?その間にどうするんだよ?」

 最低でもその日数は動けないと言う保彦に栄一郎が言う。

「ウチとつららは葬式の仕事があるし、佐助も孝之助の葬式やることになるからそれだけ動けへんな」

「そやね」

「孝之助の葬式を今から準備しても終わるのはそれくらいだな」

 桜花で葬儀業を営む3人がその間は動けないと言う。

「モルテはんは霊剣作るっていうがどうしはりますか?」

「伝がある。秋人が腕がいいとされる鍛冶職人を教えてくれていてな。都の郊外だから出来上がるまで離れることになる」

「そうどすか」

 どうやらモルテの方も動けないというわけではないが桜花から離れることとなっていた。


「そないならその間は道具の確認や霊剣の感を取り戻す準備にすればええ」

「確かにそないなら動けへん時間でも出来る」

 幸の提案に忠信がそれはいいと頷く。

「保彦はどうします?」

「保彦はしばらくここにいろ。怪我もあるが様子見だ」

「……分かった」

 当然だなと保彦は忠信の指示に従った。

「ふみはどうするか……」

「そないならモルテはんと一緒に行きましょうか」

「おふみはんが!?」

 ふみの予想外の一言に桜花の死神が信じられないといった様子で凝視する。

「いいやろ、おやっはん」

「あ、ああ、ええが……」

 皆が驚いている中でふみは気にせず忠信から許可を取った。


 そんなふみに何かを思った佐助の顔がにやける。

「あ~、そう言うことか。つらら、取られるかもしれへんな」

「取られるって何が?」

「モルテのこっちゃ。好きなんだろ?」

「そうなのか!?」

「何でそうなる!」

 佐助とその言葉に驚いた保彦につららが声を上げる。

 それを聞いたモルテが笑い出した。

「ハハハハハッ!面白い冗談だな!」

「は?」

 何で笑うんだと驚く佐助につららが仕方ないと教える。

「モルテは男ではおまへんの。女、女性なの」

「は?」

 つららの告白には佐助だけではなく全員が硬直した。

 そして、この日一番の驚きが桜花の死神達の口から叫ばれることとなった。

「……やっぱり」

 ただ1人、薄々気がついていたふみを除いて。

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