見えた光、2つ
ディオスに必要なものは背中を押すこと。
妙な所で踏み出すことが出来ず1人で抱え込む方へと向かってしまうディオスには頼ることが悪いことではないと促す。
これについてどの様に捉えるかは分からないが悪い方向へ進むことはないだろうと思い、これくらいでいいと思ったモルテは話しを終わらせた。
「話しはこれで終わりだ。ファズマに代われ」
ファズマにも言うことがあると連絡の相手を代えろと言う。
『……は、はい』
間を置いて反応したディオスの声が聞こえ、少しして今度はディオスではない声が聞こえた。
『店長、どうしましたか?』
ファズマの声を聞いたモルテはいささか参っている様にも聞こえたが問題ないと捉える。
「話しはレナードから聞いている。私がそちらにいないばかりに面倒をかけさせるな」
『いつものことじゃないですか。今回は今までの様なものじゃないですが』
「本当にそうだな。そちらにいないことを悔やむばかりだ」
アシュミストにいないことを申し訳なく思いながらモルテは本題へと入った。
「これから忙しくなる。レナードとディオスを支えてやってくれ」
『は?』
具体的に2人の名前が上がったことにファズマの疑問の声が出た。
「レナードには頼み事をしていてな。しばらくそちらに付きっきりになるはずだか困らない程度に手伝ってくれ。ディオスについては要所々々で支えてやってくれ。今回の件にどの様な形であれ介入することになる。ディオスにとっての正念場が始まる。折れないように支えてやってくれ」
『分かりました』
詳しいことは後で分かるという長年の付き合いで素直に聞き入れたファズマ。元より、ディオスについては薄々悟ってくれていることをモルテは直感する。
「頼む。レナードに代わってくれ」
『分かりました』
ファズマに伝えたいことを伝えるとレナードに代わるように促す。
そして、遠方の通信にレナードの声が再び響いた。
『言いたいことは言い終わったみたいだな』
「ああ。時間を取らせて申し訳ない」
『構わない。それに、こちらもようやく方針が纏まった』
「そうか」
どうやらレナードの中でアシュミストに現れた悪魔をどの様に対処するのか道筋が見えているようだ。
「それでだなレナード」
『分かっている。日数だな』
「ああ」
そうして、モルテはこの二つの案件の最大の問題を話始めた。
「最初に箱の方から話させてくれ。箱を隠している領域と罠を解除するにはどうしても時間がかかる。長くて数日、早くて3日と私は考えている」
『……理由は?』
「罠が一部連動しているのだよ。ひとつを動かせば複数が、1つを解除しようものならいくつもの罠が同時に動く」
『おい……』
それはなんだと呆れる声が聞こえてきた。
「加えて、いる場所によって動く罠もあれば動かないものもある」
『何故そこまでひねくれたものを……』
まるで針を持った生き物が同じ針を持つ生き物を拒絶している様に思える。
「私がいない時に持ち出されては困るからだ」
『そう言うがそれで今までよく誤差動がなかったな』
その理由は軽すぎないかと思い、本当に今までファズマ達が犠牲にならなかったと思いながらも突っ込身を鋭くすれば負けであるとレナードの呆れ声はそこで終わった。
『それで……』
「霊剣は一から作ることになる。今日動けば3日後には出来上がる予定だ」
『買うわけにはいかないのか?』
「アシュミストと桜花では細かい所が違っていてな。慣れれば問題はないだろうが今回は時間がないだろ?」
時間がないと言われ、レナードの低い声が聞こえてきた。
『ああ。どのみち時間はそれだけかかるということだな。その間はこちらも打てる手を打つしかないな』
時間が空いてしまうことは痛いが仕方ないと割り切る。
それに、どうやっても調べなければならないことと準備もあるから時間が必要である。
『それで、どうやって送るつもりでいる?』
互いに頼んだ物を現地に送るとなると問題があった。
霊剣と箱では渡りの伝達文箱には入らず直接持って渡すしかない。
「そこは手がある。こちらから霊剣を送るから持ってきた存在に箱を渡してくれればそれでいい」
『何故そんな手段があるのか聞くのは野暮だな』
どうせ後で知ることになるからと聞かないことにした。
『モルテが言う箱は任せてくれ』
「こちらも霊剣は引き受けた。とびきりの物を準備する」
『ああ。健闘を祈る』
「こちらもだ」
そう言って遠方の通信による通信は終わった。
モルテはふぅ、と息を吐くと忠信を見た。
「時間を取ってしまい済まないな」
「そら構おりませんが……」
モルテが今で話していた内容を振り返り、忠信は言いたいことがあるといった様子である。
「モルテ、何で死神の剣を持ってるん?」
「色々あってな」
「そら後で話せ。モルテはんのお陰でこっちも道筋が見えて来た。これからの事を話すで。っとその前に……」
つららに疑問を後回しにさせた忠信は何とも言えない様子を一部に向けた。
「力使いすぎだろこれ……」
「もうあかん……」
「長すぎる……」
若手の男3人、何故怪我をしている保彦も話しを可能にする死神道具に力を通していたのか分からないが、モルテの長話しにぐったりと机に倒れ込んでいた。




