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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
13章 桜花死神連続変死事件
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頼るべき相手

 レナードの狙いに気がついた瞬間、遠方の通信(リモータ)からレナードではない声が聞こえてきた。

 恐らく先程の話はレナードが独断に考えていた様なものなのだろう。そこから断片ではあるが何をしようとしているのか気がついて問い詰めているのだろう。

 それを証明するのがモルテの様子だ。遠方の通信(リモータ)に直接声を送ってはいないが腕を組み無言で険しい表情を浮かべ、とても話し掛けていい雰囲気ではない。

 加えて、場の流れで話を聞くこととなった桜花の死神も向こうが険しい状態であると理解し、会話を切らないようにと気を使い遠方の通信(リモータ)に交替で力を通している。


 そうして、モルテが口を開いた。

「レナード、そうするべき理由は何だ?」

 だからこそ、何故ディオスを死神の弟子にしてまで必要なのか問う。

『先程も言ったが悪魔はディオスがいなければ現れない。それに、俺達が出ると逃げ出すようだ』

「つまり、ディオスで引き寄せ気づかれない場所から狙い、その隙にユリシアを救出……いや、領域で救い出せばいいはずだ」

 ディオスを使って引き寄せると言えどそれは僅かな時間だけでもよく無理に死神の弟子にする必要もない。

 それに、死神は武器の種類を問わずを遠距離からでも攻撃出来るから悪魔気を引き寄せれば後は領域を使えばいいと言う。

『ああ。最悪、領域に閉じ込め抜け出さない限りはこちらもディオスを……待て』

 途中でレナードが自分から話しを止めた。

 そのまま沈黙が続き、やっとレナードの声が聞こえた。

『どうやら領域で救出するのは難しいみたいだ』

「どういうことだ?」

『悪魔が潜んでいる場所を突き止めたんだが、厄介なものがある』

「厄介?それが領域を使えない理由とどんな関係がある?」

『全体を捉えきれてはいないが、領域で触れた瞬間に取り返しがつかないものなのは確かだ』

 レナードの緊張を含んだ声にモルテは確めるように一言言う。

「爆弾の様なものか」

『ああ』

 どうやらレナードが捉えたものは相当危険なものであった。

「難しくなったな」

『ああ……』

 まさか領域が使えなくなる展開になると思っていなかった為にレナードは自分が建てていた作戦が崩れる気がして僅かに覇気が薄れた。


「モルテ、どういうこと?」

 レナードとの話で何が難しくなったのかとつららが尋ねる。

「レナードはディオスを使い悪魔を引き寄せている間にユリシアを領域を使い救出。その後に悪魔を刈るつもりだったのだが、悪魔が潜む場所が領域を使えばアシュミストに影響を与える可能性があるから使えなくなっているのだ」

 つららだけでなく桜花の死神達にもレナードが考えていた策を教え、何故難しくなったのかと理解させる。

「そないなら向こうの死神を分ければええやろう?」

「あいにく、アシュミストも今こちらにいる人数と同じだが私が抜けている。二手に分けるにも悪魔が潜んでいる場所がまだどう言ったものか分からず最善とは言えない。それに、悪魔が死神を避けていることが本当なら逃げ出す時に何かをするはずだ。それが周囲に大きな被害をもたらすものなら防ぐ手だても考えなければならない」

 だから死神二手にする案はないと佐助の案を却下する。

 なお、後程レナードから詳しい話しを聞かされ、モルテ経由で悪魔がミクとユリシアを追い掛ける際に足止めとして現れたマオクラフと医学生組に向かって周囲を無視して市場の一角を破壊しまくったことを聞かされ鳥肌が立つこととなる。


 しかし、佐助の案にモルテは全否定していない。

「だが、二手に分けるのはあながち間違ってもいない」

 散々死神を分けることは賛成ではないのに急にいいと言い出したモルテに凝視する佐助を栄一郎が宥める。

 その間にモルテは遠方の通信(リモータ)でレナードに思い付いた案を言う。

「レナード、弟子達を使ったらどうだ?」

『何を考えている!』

 瞬間、レナードから突っ込みが入り、桜花の死神の間にも緊張感が張る。

「死神を避けるということは敵わないと理解しているからだ。そんな奴は自分よりも格下なら平気で襲いかかる」

『つまり、悪魔の都合に合わせるということか?』

「そうだ。弟子達が悪魔を引き付けている間にレナード達がユリシアを救出し、悪魔を倒せばいい」

『それでは負担が重くなるだろ!』

「弟子ではないディオスを囮にと言っているのだ。今は弟子ではない者を何故私達の都合に巻き込ませ、身内である弟子達を何故使わない?頼る相手が逆だろ!」

 モルテの言葉にレナードの声が聞こえなくなった。

 そう、ディオスは死神の弟子ではない。例え弟子にならうがなかろうがディオスの存在は絶対に必要になる。

 そんな危険な状況に巻き込ませようと言うのにアシュミストにいる死神の弟子達を巻き込ませないようにしている。

 本来は逆であることを突き付けられたのだ。

「それに、ファズマ達は頼られたいと思っているはずだ?あの一件以来、全員が自分達がいる場所に甘えていると気が付き変わろうと努力をしている。ここで頼まずにどうする!」

『だが、相手は悪魔と言えど下級だ……』

「レナードかマオクラフがサポートに回り助ければいい。ファズマ達にも話せばユリシアを助けたいと言い出すはずだ。今の実力なら下級程度でも何とか逃げ切れることは出来る」

 だから心配は少ないはずと言う。

「それに、死神は弟子を助け守るだけの存在ではない。見守ることも必要だ。過保護は余計なものであり成長を妨げる。今回の悪魔からディオスを守り、やり過ごすのに弟子達以上の存在はいないと私は思うが、どうだ?」

 モルテの自信溢れた言葉にまたしても遠方の通信(リモータ)からレナードの声が聞こえなくなる。

「もし弟子達をディオスと共に悪魔の相手をさせるなら、ディオスを弟子として迎え入れ、霊剣を作ろう」

 そして、だめ押しに、けれども本心からディオスを弟子にする趣旨を伝えた。

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