死神道具の分類
遅れて申し訳ございません
死神の力は心臓から生れ血によって体全体に流れていると信じられている。
これは死神が人間であり、心臓が動いていることで生きることが出来ているからだ。
心臓が動いていることが生きることに必要と言うこと。死神が力を振るう為の力もどこからか、無から有など生まれないのだから死神が特別に必要ないというわけでもない。
常に死神としての力を感じられるのは体で常に動いている場所、心臓からと考えられている。
心臓が死神の力を生み出していることにより死神はいつでも体の奥底から力を感じることが出来て振るうことが出来るとされている。
悪魔の狙いが心臓と知り、死神達は険しい顔付きで沈黙していた。
「……エライことになった」
悪い状況から光が差し込んだと思ったら急に雲がかつった様に状況が暗転したと忠信が呟いた。
これから取るべきことを考えないといけないのだが、悪魔の狙いには慎重になる必要があった。
これまで犠牲になった桜花の死神の数だけ悪魔は心臓を喰らい力を付けてきている。
その力は4人が一度に返り討ちに合っているほど。一筋縄で行かないことは突然変異であることを抜きにしても考え付く。
加えて、心臓を抜かれるということは死を意味しているのことが当然のこと。どの様な抜かれ方かは分からないが、心臓を含めた臓器を抜かれないように振る舞う必要がある。
しかし、忠信が、桜花の死神全員が悩んでいるのはそれではない。
「どうやって倒す?」
佐助の言葉に桜花の死神が頭を捻る。
悪魔の力は分かったが突破する方法が思い着かないでいた。
突然変異である悪魔に複写が有る限り死神は力を使って倒すことが出来ない。
普段なら嫉妬の悪魔が複写を使ったとしても気にせず力を振るって倒すのだが今回はそうはいかない。
複写の能力が魔王に近づきつつあることで死神が力を出した瞬間に自分と同等かそれ以上、もしくは悪魔との連携に苦戦させられ、しかも死神特有の力ではなくとも同じ攻撃や手法を繰り出してくる為に直に触れることも出来ない。
しかし、悪魔を倒すには力がなくては倒すことが出来ない。
「道具はどうだ?」
「道具か……ちびっと厳しくないか?」
一つの可能性として佐助が閃いたが、栄一郎が苦い顔を浮かべる。
「そやな。道具を使った戦いはしたことがないから戦うとなると……」
「それに、道具を使うと悪魔に感づかれるからつららが使ってからはしてへんだろ」
「そおやったな……」
つららがモルテに連絡を入れたのが最後と思った時、あることに気づいて殆どがつららを見た。つららもその理由に行き着いていたことで顔色がよろしくない。
「さいぜんまで使っとったな!」
豆庵堂に逃げ込むとつららはモルテから渡された死神道具をすぐに店内の隅に置いて使っていた。
もしかしたら使ったことにより力を感じ取って迫って来ているのではと緊張感が張られ、モルテが手を出す。
「それはない。つららに渡した道具の一つは確かに領域の応用を使い力を飛ばしていたがもう一つは察知する為に外へは出ないものだ」
「外へ出す?」
「死神道具の作り手がいたら話しは早かったのだがな」
豆庵堂の隅で今も起動している死神道具が安全であると証明する為にモルテはコートから幾つか死神道具を取り出した。
「道具にはそれぞれ特徴がある。力を放出するものには渡りの伝達文箱、こちらでは伝書箱だな。力をそのままにして外へと現象を作り出すもの。今そこで使っている悪魔探知機は内蔵に力を溜め込み放出しないもの。引っ付き網、こちらでは付け紐か。力を変換して別の力として動くものと分かれている」
それぞれの死神道具を見せ、指差しながら説明する。
「伝書箱は分かったけど、店の隅にある道具はどうしても悪魔の存在が分かるんどすか?あと、付け紐が別の力になっとるってどういうことどすか?」
分類は分かったが詳しい仕組みは分からないと忠信が問う。
「悪魔探知機には内部で悪魔の認識が出来るようになっている。分かりやすく言うなら……中に目があるようなもので領域を使っていない」
「そやし力を出しておらんのか」
モルテが言った例えになるほどと首肯く。
「そして、変換の方だがこれはどう説明したものか……」
そう言ってしばらく悩んだモルテは説明を始めた。
「変換には2種類ある。力を通し道具を全く別物にするもの、力で促して形だけを変えるものだ」
「色々あったんだな」
モルテの説明になるほどと首肯く。
「そやし、つららはあんたと話す為に放出する方の道具を使っとるはずや。来ないわけはないだろ?」
「つららから連絡が来たのは悪魔を飛ばした後だから感づかれていないだろう。それに、幾つか道具を用いて戦ったが力を放たないものであるなら複写の力は使えないことが分かった」
ある程度予想した上で実戦で試していたことを伝える。
「そうすると、道具を使っても問題ないってことか?」
「ああ。あやけど、幸も言うとったが戦うことには不馴れそやし余り期待出来ねえな」
死神道具を用いての戦いは現実的ではないと忠信は保彦の言葉を否定した。
「モルテはんは道具を使った戦いは慣れとるん?」
「いや、道具は普段から用いない」
「え?それじゃその黒い上着に何で道具が沢山?」
モルテのコートからこれでもかと死神道具が出てくることが不思議に思うふみが見つめるようにして尋ねる。
その様子に仕方ないとモルテは椅子にかけていたコートをふみに渡した。
「向こうから実践を兼ねて使ってくれと頼まれたからだ」
コートを受け取ったふみはすぐに広げ、納められている道具の数々に驚愕する。
「モルテ、向うって?」
「別件が立て続けに起きてな。その都合で他国の死神と動いていたのだが……休憩などする暇が全くなてな。こちらに来てから5日は寝ていないな」
「五日!?」
まさかの不眠につららが驚愕するが、忠信達も釣られた。
まさかその様な状況の中で駆け付けて来てくれたと思っておらず、しかも桜花に来てからも休んでいなかったことにモルテがこの件に対する姿勢が本気であることが感じられる。
「……もそやけどもて、エライ時に呼んだ?」
「山場を一つ越えて落ち着いた頃だったから問題ない。それに、他国の死神達に話したら準備が必要と言い出し色々と用意を始めたのだぞ。あれは芳藍がどういった国か知らない故の気遣いによるものと分かったが、コートを一から作り道具を隠し入れる為とか防具だから持って行けとはどう思う?お陰で予定していたよりも遥かに遅くなったものだ」
気遣いであると分かっていても思い出せばボヤかずにはいられないとモルテは悪態をつく。
「その……」
どうやら自分達を助けてくれているのはモルテだけではなく名前も知らない大陸の死神のお陰もあると悟り忠信が口を開く。
「大陸でも何やあったようで」
「その話しはこの件が付いてからだ」
話せば長くなるからと後回しにした。




