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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
13章 桜花死神連続変死事件
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検死結果

 モルテへの説教は保彦の半分以下で終わった。

 忠信の説教を要約すると保彦を助けに真っ先に向かってくれたことには感謝するが突発過ぎる、1人では危険すぎる、そして、足止めという役割を何故誰にも頼らずに背負い込んだのかと、とにかく心配してのことであった。

 まさか忠信がモルテに説教すると思っていなかったつららは終始顔を青ざめて落ち着きがなかったことで栄一郎といった桜花の死神達から心配されていた。

 モルテはどうかと言うと、忠信の説教に唖然としていたのだが終わった直後、何を思ったのか徐々に肩を震わせ……

「あはは、清々しいな」

 笑い出した。


「モルテ?」

「へ?何で?」

 だからこそ殆どの桜花の死神は目を丸くした。忠信に説教されたはずなのに何故笑えるのかと。

「な、何で笑うんだ?気がおかしくなったか!?」

「失礼な!」

「モルテ、どうして笑うのよ?おやっはん怒ったのに」

 モルテが笑い出した理由が分からないとつららと佐助が怪訝な顔で見る。

 その言葉にモルテは心底スッキリしたように言う。

「怒鳴られたことが実に久々過ぎて、嬉しく思ってしまったのだ」

 意味がわからないというよりも理解出来ないという思いが漂う。

 モルテのことをあまり知らない幸達は元よりよく知るつららでさえも目を丸くしており、説教をした本人である忠信は予想外の反応に戸惑いを見せている。

「何せ、心の底から心配して叱られることが随分なかったからな」

 だから忠信から叱られたことは悪くないと言うモルテだが桜花の死神は全く理解していない。

「何だそれ?」

 叱られるのは嫌だし、ただでさえ忠信に雷と言う説教は勘弁したいものだと佐助が眉を寄せると、そこにつららがようやく理解したと声を上げた。

「ん?あ……ああ!なるほど、そういうことね!」

「つらら、何がなるほどだ?」

「モルテって心配されることがないのよ」

「心配されへんって、何で?」

「強いからよ」

 その理由によく分からないと一部が疑問符を浮かべた。

 モルテが強いかどうかと言われると、元凶の足止めの為に1人で時間稼ぎをしたことからそれなりに強いこを感じているが、力の強さと怒鳴られてうれしい気持ちが結び付かない。

「モルテって強くて色々知っとるから頼られるのよ」

「それって、信頼されとるからか?」

「そう。時々呆れられることがあってもモルテそやしって怒られいで済まされるのよ」

「そやし本気で怒鳴られてうれしい、か」

 ようやくモルテが言った意味が分かったと理解した桜花の死神。

 だが、忠信は何とも言えない表情であった。

「そやけどもな、こっちとしてはこの反応は複雑だぞ。それにな、出来ることなら説教なんてしたくもないことだ」

 忠信としてはモルテが心配であったから怒ったことは間違いないのだが、だからと言ってしょっちゅう怒鳴るのはしたくないとぼやく。

「そうだよな。親父の説教、怖いからな」

 そこに釣られるようにして佐助が呟いた言葉が聞こえた忠信は冗談で語りかける。

「そないなら佐助にも説教するか?」

「説教はごめんだ!」

 自滅に近いが佐助の反応に全員が僅かに笑い出した。



 その後、落ち着いた死神達は一つの机を囲むようにして子椅子に座った。

「さて、モルテはん、早速だが仲間が死んだ理由は分かりましたか?」

「ああ。確実にあの悪魔が原因だ。詳しいことはふみから聞いているか?」

 モルテの話を進める上での確認に頷く忠信。ついでにふみにも確認すると話していたとのことで先に進める。

「あの突然変異の悪魔がどの様な領分(クラン)に属しているかは死んだ5人の話しをしながら掻い摘まんで言う」

 前置きをしてモルテは本題に入った。


「まず、つららと栄一郎の所が1人づつ。そして孝之介は外傷による死因だ。孝之介は背後から頭を貫かれたことによるもの。つららの所は首を切られ、栄一郎の所は右腹部を貫かれたことによる出欠多量。これだけでも死に直結する」

 3人の死因を手を使いながら詳しく教えるモルテ。

 だが、最後に含みがある言葉に栄一郎が反応する。

「これだけでも?つまり、他にもあるのか?」

「ああ。だが、それを話す前に残りの2人だ」

 まだ話し終わっていないとモルテは話しを戻した。

「残りの2人だが、死因に繋がる外傷はなかった」

「ない?」

「ああ。傷があったからどれかと思ったのだろうが、死に繋がる外傷はなかった」

 残り2人の死因結果に保彦が反論した。

「待てよ!傷が原因ではおまへんのなら何が原因って言うんだ!」

 保彦の言葉は桜花の死神の気持ちを代弁していた。

 傷によるものでないのなら一体何なのかと言う気持ちをモルテは慌てることなく順番に話す。

「それが今回の悪魔の狙いだ」

「何だよ狙いって?」

「おかしいと思わないか?孝之介は背後から攻撃された。2度もだ。恐らく1度目は胴体。2度目に頭」

「それが何だ?」

「何故一撃で仕留めなかった?残りの2人もそうだ。死因に繋がる外傷を受ける前に幾つもの深い傷がある。まるで狙う場所を選び、慎重に殺しているみたいに思わないか?」

 殺し方が不自然と言うモルテの言葉に真っ先に反応をしたのはつらら、佐助、栄一郎の葬儀業を営む死神。

 モルテに言われるまで気づかなかったことがあり、指摘されたことで今までの遺体に共通しているものがあったのだ。

「それは、悪魔に何か狙いがあると?」

 次いで何かを感ずいた忠信がモルテに問いかける。

 その気づきかけているという反応にモルテは笑みを浮かべ、真相を口にする。


「残りの2人、そして外傷で死んだ3人は傷以外のものにより早く死んでいる」

「それは一体?」

「臓器。共通して心臓が抜かれているのだよ」

 桜花の死神が連続して変死している原因が明らかとなった。

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