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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
13章 桜花死神連続変死事件
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忠信の雷

お久し振りです。


 モルテと連絡を終えたつららは死神道具の起動を落とすと深く息を吐いた。

「無事みたいだな。それにしても、その道具から声が聞こえるの聞こえてきたのには驚いたな」

「そやな。大陸にはこんなすごいものがあるのね」

「電話ってのが大陸にあるけど、死神の道具であるのは知れへんよ」

 モルテが渡した死神道具がつららの記憶にないことを驚く栄一郎とふみだがそこで話しが中断する。

「阿呆野郎!」

 忠信の怒鳴り声に空気が揺らぎ、反射的につらら達の体が震えた。

「親父の雷、落ちたな……」

 直接言われたわけでもないのにその怖さから佐助が震えた。


 手当てを終えた保彦と机を挟んで向かい合う忠信は腕を組んで椅子に座ったまま険しい表情を浮かべて怒鳴り続ける。

「何度も言うただろ!勝手に動くなと!それなのに何しているんだ!」

 忠信から説教を食らう保彦はビクリと肩を上げる。

「元凶倒せばええと思ったのやろうが、動いたら返り討ちにされることに気づかなかったのか!」

「はんざんこっちは殺られ続けてきたんだ!こっちから仕掛けて何が悪いんだ!」

「それがこれか!孝之介は殺され保彦はこの怪我!阿呆か!どうせ孝之介が保彦の誘いに乗ったんやろうが、その勝手な事で孝之介が死んだことは分かっとるのか!」

 忠信から避けられない言葉を投げつけられ、強気でいた保彦は顔を伏せた。

 保彦とて孝之介を死なせるつもりはなかった。仲間である死神を殺していた元凶に怒りがあり、仕留めればそれでいいと思っていた。けれど、1人よりも多ければ確実と思い孝之介を誘った。

 その結果は元凶が悪魔であると分かっただけで倒すことは出来ず、代償は孝之介の死と自分が負傷という割に合わない、傷を残す結果となった。

「何や言え!」

 忠信がバーンと机を叩くと保彦の肩がまた反射的に上がる。

「孝之介が死んだんだぞ!保彦はその事を何とも思わないのか!」

「……思っとるに、決まってるだろ!こんなつもりじゃ……」

「こんなつもりがなんだ!死なせといてこんなことになるはずなかったと言うのか!」

「それは……」

 忠信の剣幕と言いたいことを先に言われた保彦は口を閉じた。

「わしが何で動くなって言うたかまるっきし分かってへんな!これ以上仲間が屍になるのが見たくないからだ!それなのに……」

「……すんまへん」

「すまんじゃねえ!」

 保彦の謝罪に忠信の怒りが更に増し、机を再び叩く。


 そんな怒気をこれでもかとぶつける忠信に冷静な声がかけられた。

「その辺にしなあんた」

 いつの間にか幸が忠信と保彦と同じ机で間に入るようにして椅子に座って聞き入っていた。

「聞いてれば反省促すどころか責任を押し付けとるように聞こえるよ。あんたが保彦に言いたいことを全部言うのは構へんけどやるなら説教だけにしな」

 保彦が可哀想とかそういうことではなく、忠信の説教が見ていられないからと怒気を抑えろと促す幸。

 そう言われた忠信はしばらく幸を見ると保彦へと顔を見て、深く息を吐いた。

「保彦がモルテはんに不満を持ってることは分かっとったがな、それと悪魔倒すことはまるっきし別というのは分かっとるな?まして理由にしてええものでもない。ちゃうか?」

「……ああ、そうだ」

 怒気が僅かに引いた忠信の指摘に保彦は頷いた。

 保彦は悔しかったのだ。大陸から突然現れた死神の手を借りなければならないということが。

 大陸の死神に桜花の事の何が分かるのか疑心に思い、頼るということに嫌気が差した。そして、今まで貯めていた悪魔を倒したいという思いを実行するいい切っ掛けと思っていた。

 だが、忠信に指摘されたことでその事に気づき、間違いであったと理解した。

「自分がどんな間違い犯したか理解しとるならほしてええ。だがな、次はないからな」

「分かっとる」

 こんなことは二度とごめんとキツく釘を指した忠信の言葉に保彦が素直に受け入れた。

 その呆気なさに忠信は内心で驚いたな。

(急に素直になったな……)

 説教が効いたというよりは自分の間違いに気が付いたほうが正しいかと忠信は捉えた。


 保彦の説教が終えたことで忠信は座敷に座っているつららに問いかけた。

「そういや、モルテはん戻って来ないな」

 どれ程説教をしていたか分からないがそろそろ戻って来てもいい頃合いだと言う。

 その言葉につららが言う前に幸が口を開いた。

「何言うてるの。モルテはんなら……」

 幸が言うのに合わせて店の奥から何食わぬ顔でモルテが現れた。

「大分前に戻って来て孝之介の屍見るって奥に行ったわよ。モルテはん、もうしまい?」

「ああ」

 店の奥から出て来たモルテの登場にいつの間にと驚く忠信と保彦だが、それ以外はモルテが帰ってきていたことを知っており、戻って早々に孝之介の死因を確認すると言って動き出していたことも知っていた。

「戻って来とったのなら声をかけてくれてもよかったんだが」

「あんたが保彦の説教で気づかなかったのよ」

 幸に言われたことで忠信は気づけなかったことを理解する。


「ほしてモルテ、孝之介は?」

 つららは孝之介の死因は何かとモルテに尋ねるが忠信が止めに入った。

「つらら、そら後にしてくれ。モルテはん、悪いがここに座ってくれへんか?」

 忠信の要望にモルテは疑問に思いながらも向かい合うように、保彦の隣に座った。

「何だ?」

「モルテはん、わしはどうしても言いたいことがある」

 そう言って、忠信は険しい表情をモルテに向けた。

「何で自分から危険に飛び出して行ったんだ!」

「は?」

 何を言うんだと意味を理解していないモルテに忠信が畳み掛ける。

「モルテはん、あんたが好意で助けに来てくれたことは分かるがここまで危険に置く必要はないはずだ」

「何を言っている?私は……」

「ええや、言わせてもらうが……」

 そのまま、何故かモルテにも説教を始めた忠信に誰も止めに入ることが出来ない。


「親父の雷、また落ちた……」

 ただ、ぼやくしかなかった。

地震、雷、火事、親父。

怖いものは怖い……

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