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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
13章 桜花死神連続変死事件
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突然変異

 悪魔の肩に木の棒が刺さり霧の中から姿を現せるまでに至ったが、死神の武器でない為に浅かったとモルテは目を細める。

「悪魔の仕業やったのか」

 モルテの言葉を聞いた保彦は悪魔を睨み付け、飛び出していきたい所をふみに押さえ付けられる。

「保彦、動いちゃいけへん。モルテはん、突然変異って?」

 保彦の傷は応急処置しているが動いたら開く可能性ある為に傷に触れない様に体を掴みながら、モルテが言っていた突然変異という不可解について尋ねた。

「悪魔というものは本来一つの領分(クラン)に属しているが、稀に複数の領分を持つことがある」

「そないなの、聞いたことない」

 悪魔がどれか一つの領分に属していることは死神の常識として知っていたが、複数を持つということを初めて聞いたふみが驚く。

「知らなくて当然だ。複数の領分を持った悪魔の多くは魔王が見つけでもしない限りはぐれなのだから群れることをしない。それ故に、魔王の命令が下る訳でもないから他の悪魔よりも力を付けるのが早いことで殆どは上級となりやすく、代りに魔王にはなれない」

 複数の領分を持つゆえの障害であるとモルテは付け加える。

「もしかして、この悪魔も……」

「上級と言ったところだ」

 目の前の悪魔が複数の領分を持つばかりか死神でも手子摺る上級であることにふみの中で緊張が張る。

 直後、悪魔は木の棒を力ずくで抜き、そこから傷が塞がっていく。

「やはり普通のものでは効かんか」

 木で出来た棒が真っ二つに折られるのを目にしながらモルテはポツリと言う。


 死神の武器は悪魔等に傷を与えると治りにくい作用があり、死神によっては一生塞がることのない傷を与える者もいる。

 しかし、それは死神が生み出す武器だから出来ることであり、生霊(リッチ)では殆ど効かず、悪魔では元は人間であったとはいえ治癒能力が人間の倍であるから効果は薄いを通り越して全く効かないと言ってもいい。

 それでも、モルテはあえて悪魔に武器を使わず対峙している。これには理由があるのだが、治っていく様子を見てしまうと僅かに悔しくなる。

(だが、姿を現すのには成功した)

 その悔しさを悪魔を引きずり出すことが成功したことで帳消しとした。

 そんなモルテを悪魔が忌々しそうに睨み付ける。

「よくも……我に傷を……何故我に気が付いた」

「それを言うとでも思うか?」

 悪魔は自分の存在が発覚すると思っていなかった為に見破ったモルテを観察する。

「ならば貴様を……」

「不可能だ。条件を満たしていないのだからな」

 そう言われた悪魔は顔を歪ませ、まるで図星とも思える反応を示す。

 その様子を見ながらモルテには悪魔がどういった領分を持っているのか検討が付いていた。

 しかし、それ故に対処が難しく、悪魔に傷を治す時間を与えていることに歯噛みする。


 そんな二者とは別に悪魔の傷が塞がっていくのを見ながら保彦は鎖鎌を出現させると立ち上がった。

「保彦、何を!?」

「決まっとる!突然変異やろうが何やろうが悪魔が現れたんや。倒すに決まっとるだろ!」

 突然のことにふみが止めようとするが保彦は駆け出して行き、モルテの足掛けによって転ばされた。

「がはっ!?」

「保彦!」

「っ……何する!」

「馬鹿か?今飛び出せば死ぬぞ」

 話を聞いてなかったのかと苛立ちを向けるモルテであるが、保彦は睨み付ける。

「仲間殺した元凶が目の前にいるのに敵を打たない阿呆がどこにいる!」

 保彦としては話しを聞いてはいても敵討ちが優先である為に討とうとしているのをモルテによって止められる。

「馬鹿はお前だ!せっかく繋いだ命をまた失おうとするなど何を考えている。そんな周りを見失った理由を綺麗に並べたところで得られる結果は見えている」

「うるさい!お前は余所者やろうが!関係ないのが何言う。引っ込んでろ!」

「保彦!今そんなこと言わないの!」

 保彦が本音を暴露したことにふみが慌て出す。

「ならば余所者らしく遠慮なく言おう。自滅当然の敵討ちなど小さいことに囚われるな!」

「なっ!?」

 売り言葉に買い言葉とモルテの言葉に保彦は怒りが沸き上がるが、それを許さないようにモルテが叩き込む。

「お前がやろうとしていることはあまりにも小さすぎるのだよ。命を落とせばそれで誰かが報われるのか?誰かが喜ぶのか?ならばお前はどうなる?お前の為を思う奴もいる。それが何だ?死にかけたばかりなのにまだ命を捨てる気でいるのか?そんなものは敵討ちではなく特攻だ。他の死神がやったことをお前は何を思い何を学んだ?過去を全く見ず先へも進めない臆病者に命を捨てさせる行為を許す私ではない!」

 保彦を捕まえ目を真っ直ぐに向けて怒鳴る。

 その言葉に保彦は勝手だからとは言えなかった。モルテがあまりにも怖く、身体中から力が抜けていく気がしたからだ。


「ふみ、これからここを破壊する。こいつを連れて逃げろ」

「ええ。でも孝之介はんは……」

「どうせ近くにいるだろう。手を貸してもらえ」

 保彦を無視してモルテはふみに指示を出すと、ほったらかしにしていた悪魔へと向き直る。

「ここを破壊する?何言う?」

 モルテの言葉に悪魔は笑う。

 今までどの死神もこの霧の中から脱出することが出来なかったのだ。それを逃げるではなく破壊すると言ったのだ。

 出来るはずがないと笑うが、モルテは気にせず懐からあるものを取り出した。

「出来ないことを出来るとは言わない」

 そうしてモルテは取り出したものを起動させた。

 するとモルテを中心にして濃かった霧が一気に晴れていく。

「何!?」

 その様子に驚いた悪魔だが何かをする前に霧が完全に晴れてしまい、モルテ達の背後には桜花の死神達がいた。

諸事情により20日まで不定期更新となります。

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