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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
13章 桜花死神連続変死事件
531/854

もう1人の……

皆様、明けましておめでとうございます。

今年は書きたい小説などが可能な限り書ける年であればいいなと思っております。

死神の葬儀屋をよろしくお願いします。


「感じで来てみれば死神がここにいたぁ~」

 ギャハハハっと霧の中で笑う声は聞き慣れた、聞き慣れ過ぎたものであった。

 しかし、正面から向き合うようにして立つ保彦は驚きを顔に出さず睨み付ける。

「釣られたとも分からん阿呆だな」

 霧の中の影が濃くなるのに合わせて鎖鎌を構える。

 しかし、武器を構えているはずなのに内心では恐怖が支配しており、嫌な気配を体全体で感じている。

「釣れたと思っとる阿呆はそっちだな」

 瞬間、影は一瞬で詰め寄り、刃と刃が真正面からぶつかり合う音が響いた。

 当然、影の攻撃を受け止めた保彦は鎖鎌で防いでいるが、受け止めている武器も同じ鎖鎌である。

「釣れたとしても抵抗されて命を落とす。大物の獲物をボロい竿で釣ったら呆気なく折れ、釣ったと思った獲物に反撃される」

 影が鎖鎌を振るい保彦を狙うが、保彦も負けじと鎖鎌を振るい影を仕留めようとする。

 霧の中で影は桜花の鈍りではあるが何処と無く間延びした言葉で詞を歌うようにしている。まるで、余裕があるかの様に。

「つまりだ、釣る以前から立場はさかしま転しとる。いや、既に決まっとるのだ」

 鎖鎌が振るわれる度に僅かにだが廻りの霧が晴れては覆われる。

 その繰り返しをしていれば嫌でも相手の影の存在が分かる。いや、分かってしまう。

「それが我と貴様、死神だ」

 もう1人(・ ・ ・ ・)の保彦(・ ・ ・)を相手にする保彦は攻撃を鎖鎌で受け止めた。


  ◆


 霧の中から現れた存在に孝之介は驚愕してしまっていた。

「何だあら?」

 死神の目を使っても濃い霧の中では普段よりも見えないが、影がどんな存在であるかは一瞬見えた時に直観した。

 影が保彦であった。正確には霧の中に保彦が2人いて、武器である鎖鎌の刃の音を響かせながら戦っている。

「あら悪魔か?それとも別物か?」

 悪魔か生霊(リッチ)か孝之介には区別が出来なかった。

 不思議なことに保彦と戦う存在からは悪魔と生霊両方の気配が感じ取れないのだ。

 嫌な汗を額から流しながら孝之介は何故保彦が2人と思いながら弓を作り出した。

 大陸にある遠距離武器代名詞である銃は芳藍ではあまり広まっていなければ現物も殆ど見ない。

 芳藍の遠距離武器と言えば弓と大砲の類いしかないのだ。

(勝負は一撃)

 玄を付かんで力の矢を具現化すると孝之介は本物(・ ・)の保彦が戦っている偽の(・ ・)の保彦に向けて照準を合わせる。

 勝負は一瞬。不意討ちを狙った攻撃を偽者は避けることが出来ないだろう。

 例え避けたとしても回避は間に合わず傷を負い動きが鈍る。そこを保彦が仕留めればこの騒動は終結し、死んでいった仲間たちの弔いにもなる。


 殺る気に満ちた孝之介はタイミングを見計らい指を離そうとした時だった。

「ぐっ……」

 背後から鋭い痛みが刺さった。矢が一本、背後に刺さっただけでなく体を貫いている。

「がはっ……がっ……」

 口からこれでもかと血が逆流して吐く。何度も何度も吐いて地面へと倒れる。

 体を巡る地の感覚を感じることも出来なければ自分が地面に倒れているという感覚も感触もない。

 まさか、自分が不意討ちで命を落とすと思っていなかった孝之介は目の前がぼんやりと掠れていく中で、それ(・ ・)を見た。

「不意打ち狙いってのは甘いな。もうちびっと正面から挑んだらどうだ?」

 それは明らかに自分(・ ・)であった。

 俗に言う走馬灯の類いではない。そこにあるのは紛れもない現実であり、現在なのだ。そして、自分であるが自分ではない。

「寝るんなら手を貸してやる。そやし、さっさと寝ろ」

 そう言って孝之介を見下ろしているもう1人の孝之介は力を具現化させた矢で孝之介の頭を貫いて命を刈り取った。

何気に作中で現役の死神が死ぬのはこれが初めてです。

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