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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
13章 桜花死神連続変死事件
529/854

桜花の死神達の対応

※通訳(?)がいません。

 遺体が置かれてる部屋から出た栄一郎は居間へ戻らず店の中へと向かう。

「待たせたな」

「そないな待ってへんから安心しろ」

 縁側に座り茶を飲んでいた保彦が栄一郎が現れたのに気がついて返した。

 店内にいたのはつららと幸を除いた桜花の死神であった。


「ほして、どうやった?」

 少し前にいつきから受け取っていた茶が入った湯飲みを縁側に置いて忠信はモルテが行っていることについて尋ねた。

「ウチらとやり方がちゃうな。入念に準備して屍に触っとる」

「見るだけじゃあかんなのか?」

「あれだけじゃ満足出来なかったみたいだ」

「何だそれ?ん、触る?触るだけならウチらと同じやろう?」

 同じ様に葬儀業を営む佐助はモルテがしていることが自分達と大して変わらないのではと尋ねる。

 その言葉に栄一郎どの様に言おうかと悩み、ありのままのことを言う。

「言うたやろう、やり方がちゃうって。異国の人間はどうもウチらと見方がちゃう。あらウチら以上の術を持ってもいれば手慣れとる。それもそんじょそこらのって訳とちゃう。動き一つ一つがちゃうんそやしな」

「そないなにか!?」

 これだけでの話で佐助はモルテが持つ技術が違い、それを使っているのかと理解してしまう。

「なあ、そないなにちゃうのか?」

「栄一郎、もっと詳しくおせてくれへん?佐助が分かっても屍扱う二人と違ってこっちは分かれへんのよ」

 孝之介とふみがそれだけでは分からないからと更なる説明を求める。

「そうだな……こらウチが見て思ったことそやけども、あの人がやっとることはウチらが普段屍にせんこっちゃ。例えばやけど、屍なら体拭いて化粧するだろ?けれども、事故か何やで傷負った屍なら傷口を丁寧に拭く、塞いでから化粧する。そやけどもな、あの人がやることはもっと凝ってる」

 そこで一度区切るとモルテがやっていたことを教える。

「傷を見たら傷口を見る、傷がある場所の確認をする。傷の他に何やないかも見る。見方がまるっきりちゃうんだ」

 あれは自分達がやること以上であると栄一郎は言う。


 ちなみに、遺体を吹いたり化粧をするというのは忠信達にも分かることである。

 芳藍で葬式を営む家では自分達でそれを行ってしまうのが多く、葬儀業というのは葬式をする家が何処なのか広めたり遺体を火葬場に運ぶのが殆んどだ。

 例外として忙しいからと呼ばれたり、傷があるから塞いでほしい、遺体を置く場所がないから預かってほしい等々、理由があれば引き取るものであり、葬儀業を営んでいるからには宣伝も含めて家々以上のことをしている。

 芳藍ではあまり仕事がないように思える葬儀業ではあるがなければ困るためにそれなりに頼られてはいる。


 栄一郎の話を聞いて忠信は考えた上で言った。

「丁寧以上にやってるってことか?料理で言うなら仕込みの有無だけでなくどれだけ丁寧にやることで味が変わる感じか?」

「それとも何やちゃう感じがするが、そないな感じでええんやないか?」

 捉え方は妙に違うが、忠信がそれで理解したのならそれでいいと佐助は頷いた。

「仕込み言うたら忠信はん、店は?」

「お幸がやるって言うてこっちに来たんや。その代わり話ししっかり聞いてこいってな」

 どうやら幸が気を利かせて店番をしてくれていることで忠信が訪れたのだとふみは納得する。


「それにしても、あの異国の死神が屍の見方がちゃうってのは分かったけど、肝心の方はどうなんだ?」

 モルテが本気で取り組んでいることは分かったが、それによる結果を栄一郎が置くから出て来たということは掴んだのではないかと孝之介はまっすぐ見て言った。

「分からん。ここから先手の込んだことするからウチは邪魔と言うて追い出された。ただな、何や分かってはいる気はしたな」

「何でだ?しつこく聞けばええだろ?」

「どうも死んでった仲間には誤差があるらしい。その誤差が何や分かれへんまではおせる気がないみたいだ」

「何だそれ?」

 意味不明の返しに孝之介は眉を寄せた。

「何でそう言い切れる?」

「つららの所にあった屍と同じ死に方みたい言うとった」

 栄一郎の言葉にこれは重要なことだと全員の意見が一致する。

「ほんまに!?」

「そないならつららに聞くか?」

「つららが知ってるって保証はないだろ?」

「やっぱりつららも入れればよかったか……」

 つららがこの場にいないことを全員が後悔した。


 そもそも、昼間に集まった死神の殆どがいるのに何故理由がある幸を除いたつららがいないかと言うと、モルテという死神がどういう人物であり、何を使用としているのかと一度話し合う為である。これにつららがいればモルテを知っている身として庇ってしまう為に密かに行われることとなったのだ。

 モルテが遺体が置かれている部屋で作業に没頭している間に忠信達はそれなりに話していたのだ。

 つららが信用しているとはいえ本当に信用に値するのか、分不相応であるならどうするかと話し合われている最中に栄一郎が現れてモルテが何をしているのか伝えたのだ。


「ほしてどうする?」

 今までの話からどうモルテを受け止めるのかとふみは忠信に尋ねた。

 忠信は一つ唸るとはっきりした口調で言った。

「わしは信用してもええと思う。これから先に変化があるかもしれへんが、少なくとも信用しても悪くわないやろう」

 忠信の言葉に保彦は眉を寄せて問い詰める。

「そらあの人が仲間の死の原因を掴んでいるからか?」

 モルテが何かを掴んでいることを保彦は許せないでいた。知っているのなら教えてほしいと言うのが保彦の気持ちであるからだ。

「それもあるが、こっちの事情に関係ないのに手を貸してくれとるだけでなく懸命になってくれとる。そういう人を信じないっていうのはちびっと酷い話そやしな」

「ほして裏切られてもしたらどうするんだ?」

 この場合は実力不足も含まれている。いくら腕がよくてもそれが違っていたり本当は分からなかったでは保彦の気持ちは収まらない。

「その時はその時や。努力してくれていってことは分かっとる。まあ、あの大食いだけは勘弁そやけどもな」

 未だに昼営業が一人の人間によって早く店を閉じることになったのを忠信は引きずっていた。

「それにな、つららが信用しとるってこともあるが、栄一郎はさいぜんまで見とったんだ。モルテはんのことは信用しとるんやろう?」

 忠信から急に話を振られた栄一郎であるが、事実であるからと包み隠さず話すことにした。

「見とったからそら言える。それに、今やっとることはウチらが納得でけるものを探しとるからと思える」

「納得でけるものって何だと思う?」

「異国の死神が考えとることは知れへんが、ウチらにとって悪いものではおまへんとは思う」

「なら信じる」

 栄一郎の言葉を聞いて佐助もモルテを一定ではあるが信じることにした。

「ふみはどうよ?」

「あたしは保留な。店にいた時もあまり話さなかったからどんな人かってあまり分かれへんもの」

「そりゃそうか」

 ふみの気持ちもあるとその気持ちを忠信は受け入れるとまだ聞いていない残りの2人に尋ねた。

「そうか。ほして、保彦と孝之介はどうなんだ?」


  * * *


 その後、モルテからの報告を聞くまで勝手な行動をしないようにと話し合われ解散した。

「なあ、孝之介はどう思うよ?」

 帰り道、保彦は孝之介にモルテは信用できるのかと尋ねた。

「わしはあんまり信用出来ないな。突然来た余所者が何仕出かすか分からん」

「孝之介はそう言うか」

 孝之介らしい神経質に保彦は理由に納得する

「ウチはな、何や隠しとるのが気に食わん。分かっとることがあるなら話してくれてもええだろ」

 どうやら2人はモルテが突然現れて好き勝手やっていることが気にくわないらしい。

「親父はああ言うたけど、ウチらが何とかすれば問題ないと思うんだ」

「やけど、勝手に動くなって言われただろ?」

「やっちまえば怒られる理由もちゃうからええんだ」

「怒られる上で動くって呆れるが胆据わってるな」

 保彦の行動力に呆れながらも孝之介はその誘いに乗ってしまう。

「なら聞いてしもたからには乗れへんわけにいかないな」

「おお。それじゃ元凶探して一発殴ってやる!」

 完全に忠信の忠告を無視して保彦と孝之介は暴走を始めた。

今年の投稿は12月29日までとなります。

来年は1月5日からになります。

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