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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
13章 桜花死神連続変死事件
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検死準備

 豆庵堂で更に話が進められてしばらく。夕方になって話が終わると栄一郎に連れられて向かったのは桜花でもとびっきり道が入組んだ場所。

 そこに栄一郎が営む「湯野葬儀店」があり、亡くなった2人の死神の遺体が置かれている。

「ここだ」

 栄一郎に連れられて両手に荷物を持ったモルテと付き添いとしてつららが中に入る。

「今戻ったぞ」

「おかえりなさい。おや、つららはんやないか」

「今晩はいつきはん」

 奥から現れたのは栄一郎の妻である湯野ゆのいつき。

 湯野葬儀店に嫁いだ関係で死神の事を知り関わりを持っている。

「今晩は。ほして栄一郎、そっちは誰?」

 つららと栄一郎に挟まれた形でいる見たことのない人物、それも前髪が赤く話に聞く異人であることは察することが出来たがそれだけだ。

「モルテって言うつららが呼んだ異国の死神や。ウチの所で預かってる二人見たいと言うて連れて来た」

 正直言って異国の死神が何を考えているのか栄一郎には分からない。

 遺体はこちらで調べて死因が分からなかったのに今さら何かが分かると思えないからだ。

「まあ、異国の人はそういう趣味があるん?」

「モルテが特殊ってだけどすよ」

「待て。それでは私の趣向がおかしいと言っていないか?」

「向こうにそういう職があるって聞いたけど、モルテは幅が広すぎるのよ」

 異国の感性がおかしいと言われている気がして腑に落ちないモルテは訴えかけるも、つららがモルテだけと綺麗に丸める。

「とりあえず上がれ。いつき、茶出してくれるか?一息入れたら案内する」

「そう。モルテもほしてええ?」

「構わん」

 栄一郎の提案を飲んでモルテは靴を脱いで中へと入る。

 芳藍特有の文化で履き物を脱いで中へ入るのが一般的なのである。

 ちなみに、芳藍では外を歩く履き物は主に下駄なのだが、つららの家ではモルテが履ける下駄がなかったことでそのまま靴を履いてであるいていたのだ。


 そのまま座敷へ入るといつきが茶が入った湯呑みを死神達に持って来た。

「ここまで来るのえらいじゃおまへなんだか?」

「そうでもない。慣れているから大変でもなかったぞ」

「はい?」

 モルテが言った言葉にいつきは首を傾げた。

 つまり、何を言っているのか聞き取れなかったのだ。

「えらいじゃなかったって言うてますよ」

 そこにつららが翻訳として間に入る。

 つららがモルテに着いて来た理由はモルテの言葉を桜花の話し方に直して伝えること。

 モルテは桜花の方言を聞き取れた上で返しているのだが直す気がない為にちょくちょくつららが間に入り翻訳している。

 豆庵堂でもやっていたことであるのだが、それにより話が長くなったとも言える。

「そう。異国の人の言葉は聞き取りにくいわな。あ、不満を持って言ったわけではおまへんどすよ。ちびっと驚いただけどす」

「構わん。こちらが言う気がないだけだからな」

 そう答えたモルテであるが、やはり聞き取れる部分と聞き取れない部分があるといつきは首を傾げ、言えるのなら言ってほしいとつららが恨めしそうに睨む。


 なお、この後に栄一郎が何を言っているのかとつららに尋ね、教えられた内容に呆然。

 しばらくその事についてやり取りが行われるも、モルテが器用に避け続けたことで桜花の死神側は色々と不発に終わってしまった。


 その後、時間が経ちすぎてしまったことで共に湯野家と下働きという弟子達と共に夕食を取ることとなった。

 その間も初めての異国の人間、死神と言うことで興味津々と話が盛り上がり、気づいた頃には夜となっていた。


 だが、それでモルテが明日など言うことはなかった。

「この部屋だ」

 そう言って栄一郎はモルテを連れて2人の死神の遺体が置かれている部屋へと連れて来た。

「ふむ。中はつららの場所と同じか」

 遺体には布が被さっていることで様子を見られないモルテは部屋の中を見渡し、そこがつらら店と同じ作りであることを確認する。

「どこも同じだろ?」

「向こうでは違うものだ」

 言いながらモルテは遺体に被せられている布を僅かにめくると状態を確認する。

「……ふむ」

 そうしてもう一つの布をめくってから栄一郎に尋ねた。

「明日火葬するつもりだったか?」

「ああ。それがどうした?」

「間に合って良かったと喜ぶべきか」

 何かを深く納得したモルテは持って来ていた荷物の一つを開けると、中から特大の布を取り出した。

「それは何だ?」

「これを部屋の中に吊り下げる」

「これを?」

 布を吊り下げてどうするのかと思った栄一郎だが、モルテは気にせず鞄から同じ大きさの布を何枚も取り出す。

「おい、その中にどれだけ入っとるんだ!?」

 入れられる量が違いすぎると突っ込みを入れるが、モルテは聞き流す。

「吊るすのを手伝え。遺体を囲むようにしてだ」

「待て、これ吊るして何しようとしとるんだ」

「言っただろう。遺体を調べると」

 そう言ってモルテは部屋の一家に行くと器用に布を吊るし始めた。

 その手際のよさに栄一郎は渡された布を見た。

「そやし、何しようとしとるんだよ!」

 詳しく説明よりも何を考えているのか分からないと叫ぶのであった。

明日から通常の投稿時間に戻ります。

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