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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
13章 桜花死神連続変死事件
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桜花の死神の現状

遅くなって申し訳ございません

 しばらくして桜花にいる死神が揃い、場所も座敷では全員が座れないからと椅子の席へと移動した。

「こっちが蔵本孝之介くらもとこうのすけ。こっちが一関いちのせきふみ。そして、湯野栄一郎ゆのえいいちろうよ」

 つららが新たに訪れた死神をモルテに紹介する。

「あんたがつららが呼んだって異国の死神か」

「そうなるな」

 つららによる自己紹介が終わると孝之介がモルテに尋ねた。

「あたしが呼んだ異国の死神。モルテ・アストロ・ケセドよ」

 モルテが自己紹介をする前に先に紹介したつらら。

 いくらモルテが流として旅をしていても桜花特有の訛りの前では上手く伝わりにくいという考慮である。

 いや、モルテは桜花の訛り方を知り話そうとすれば話せるのだが、本人にその気がないことも分かっている。

「……つらら、何処が名前だ?」

「モルテの部分が名前よ」

「そこか」

 初めて聞く異国の名前に何処が名前で姓なのかと芳藍とは違う名乗りに栄一郎が戸惑い、納得する。

「モルテ、今いる死神はこれで全部よ」

 つららが何かを含んだような言い様にモルテは記憶にあったことと噛み合わないことに首を傾げた。

「前聞いた人数とは違うな」

「それも今回のことに関係あるわ」

 やっぱり気が付いたとつららは顔をしかめた。

「つらら、おせてへんのか?」

「モルテがまとめて聞くって言うたからおせてへんのよ」

「なるほどな。モルテはんと呼んでええか?」

「構わない」

 モルテから呼び方の承諾を貰った忠信が一つ頷いて話始めた。


「さて、モルテはんはつららからの連絡で何処まで聞いたか?」

「こちらの死神が多く死んだ事件が起きたということだけだ。それも原因不明のな」

「そうか」

 どうやら大雑把ではあるが桜花の死神の現状は理解力してくれていると忠信は安堵する。

「事が起きたのは一月前や。こっちの死神で久田典男ひさだのりおが原因不明で死んだんだ。何で死んだのか今も分かれへん。ほんでや。妙なことが周りで起き始めたのは」

 忠信はここで区切ると続きを話す。

「ほんで何日だ?」

「五日よ。何忘れてるの」

「異国の死神前にしておせるの緊張するんだよ」

「そやしって、忘れるトコ忘れたらあかんでしょ」

 忠信の度忘れに幸が突っ込むと、そのやり取りを忠信は無理矢理中断させる。

「とにかく五日後にまた一人、三輪祐玄みわゆうげんって言うのが死んだんだ」

 それから間を開けるごとに死神が次々と原因不明で死んでいったと言う。

 これはさすがにおかしいと2人目が死んだ時に既に集まって話し合われていた。

 動きは早かったが当時はまだ何も分かっていない状況であったことで、その時に出た結論は周囲の注意、並びに怪しいと思う者や場所には単独で動かないことだけであった。

 また、亡くなった2人の死因は少し離れた港に駐在する天眷者を密かに呼び寄せたりもしたが、呪でもなかったことで今も分かっていない。


 そこまで聞いてモルテは口を開いた。

「一つ聞くが、外傷はあったか?」

「死に繋がりそうな外傷はなかったな。そうやろ?」

「そうだな。典男と祐玄はなかったな。やけど、お寿ひさが死んだ時から外傷は出来てきたな」

「そのお寿は何人目だ?」

「四人目だ」

 忠信からどうだったかと遺体を預かっていた佐助の言葉にモルテは思考を巡らせる。

「確認だが、この件が起こるまで桜花にいた死神は18で合っているか」

「ああ」

 どうしてモルテが桜花にいた死神の数をしっているのかと疑問にも思ってしまった忠信だが、つららと交流があるのであれば知っていてもおかしくないと納得する。

 そして、現在桜花にいる死神は8人しかいない。1ヶ月の間にどれだけの被害かは話をする側も聞く側も嫌でしかない。

「お寿が死んだのは?」

「十日前だな」

「遺体は……既にこちらでは燃やしたか」

 暑さある時期では遺体の腐敗が激しいことと芳藍特有の理由により骨が土の中にあることを思ったモルテは考えを本命をだすまえに更に確認をする。

「残りの6人は?」

「一人が八日前、もう一人が七日前。ほして、一昨日に四人。一気に殺られた」

「一度にか!?」

 モルテは驚愕した。

「すまないが、敵のことは?」

「今もまるっきし分からねえ。ほんまに不甲斐なく申し訳ないがほんまのことだ」

 既に見知っている中であれば敵がどんな相手であれど後れはとれないはず。連携も出来れば何らかの手段で逃げ出し敵の情報も知れるはず。例え逃げ出さずともだ。

 だが、桜花の死神にその様子がない。いや、この場合は何らかの理由で出来ないと考えればいいのかと思うが、それが正しいか今は分からない。


「それにしては、つららの手紙には力を使うなと書かれていたな」

 モルテは一つの疑問を口にした。

 つららが救援として書いた手紙には死神の力や道具に頼らず桜花に来てくれと書かれていたのだ。

 敵についての情報がないのに何故死神の力を使えないという疑問は当然のものであった。

「それはな、最初に死んだ二人が道具作りに力を使っていたからだ」

 保彦の言葉にいまいち分からないとモルテの表情が呆ける。

「耳を疑うどすか?あたしもあの時は耳を疑ったわ。もしかしたら死神の力を辿って現れるんじゃないかって。正気とは思えなかったわよ」

「おふみさんが言うのも分かる。お寿がもしかしてと言って試した挙げ句があれだからな。浮かばれねえよ」

 どうやらお寿が外傷を負ったのは敵を誘き出し、交戦して亡くなったことと理解する。

「そう聞くと、最初の2人は戦う前に殺された、もしくは戦うことが出来ずといったところか」

「ほんでや。わし達の仲間がどんどん負傷した姿で死んでいるのが見つかるのが」

 これは中々に厄介とモルテが心の中で呟く。

「話を戻すが、多分そやけども四人は纏まって動いとったんやろうな。そこを襲われて屍となった。今は栄一郎の所に二人と…… 」

「あたしの所よ」

 つららの所に遺体があった理由はそういうことかと納得する。


「一つ聞くが、遺体は栄一郎の所にまだあるか?」

「あるにはあるが、どうした?」

「何、簡単な頼みだ。遺体を調べたい」

「は?」

 モルテの予想外の頼みに栄一郎だけでなくつららを除いた死神が何を言うんだと驚愕する。

「つららの所は調べたからな。調べられるのなら多く見たい」

「待て!何で遺体を見ることになるんだ!」

 遺体の状態は既に見ているのに何で見たがるのか分からないと栄一郎が預かっている側でもあることでモルテに追及する。

「決まっているだろ。死因を確認するんだ。それが同じか、もしくは違うのか確認することで敵が死神を狙う理由が分かる」

 モルテとしては既につららの元で調べたことで心当たりと確信は掴めていた。

 栄一郎の元にある遺体を調べるのはここにいる死神に一層の理解をしてもらう為だ。

 そうしなければ、桜花の死神は危険を知ることなく全滅してしまうからだ。

「聞くが、そら必要なことか?」

「必要だな。最悪、つららの元で見た遺体と死因が違っていたら困るからな」

「そうか」

 どうやらモルテは掴んでいるのではと忠信は思ったが口には出さず栄一郎に言う。

「二人の屍、見せてやってくれ」

 忠信からの頼みに栄一郎は渋々頷いた。

明日も予定が入ってしまった為に、26日も22時投稿になります

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