賑やかな食卓
ディオスは朝になったのを感じながらベットの上でゆっくり目を開け、ゆっくり体を起こして一つ体を伸ばして部屋を見回した。
閉められているカーテンからは僅な光を受けているのみ。昨日の晴れたような日射しではない。
反対側に設けられているファズマのベットにはファズマはいない。おそらく朝食を作る為に早く起きたのだろうと思いながらベットから出た。
結局昨夜はファズマに無理矢理部屋に押し込められて疲れてしまったこともありすぐにベットに横になったのだが眠れなかった。昨夜起こった出来事、存在を考えていたら疲れて眠りたいはずなのに眠れなくなってしまった。
それでもいつの間にか眠ってしまっていたようだが、眠っていた時間は僅だろうと思う。
「はぁ……」
ディオスは一つ溜め息をつくとカーテンを開けた。
天気は曇り。まるで現在の心境を写しているようだと思いながら着替えをして下のリビングへと重い足取りで向かった。
(それにしても、あれは一体……)
ディオスは階段を降りながら昨夜から続けている考えを再び始めた。
何度考えても答えが出ない。これからどうしたらいいのかも思い付かないでいた。それだけに昨夜の出来事は強烈で、受け入れがたい出来事であった。
深く考えていたらいつの間にか階段を降りきっており、リビングの近くへと来ていた。
ディオスは一度考えを止めて急いで顔を上げた。
「おはようございます」
「おう、おはようさん」
リビングには朝食を運んでいるファズマといつ帰って来たのか椅子に座り新聞を読んでいるモルテがいた。
ディオスはファズマが朝食を運んでいるのを見て手伝おうと行動した。
「あ、手伝います」
「もう運び終わったからいい。それよりも、顔悪いぞ」
「え?」
ファズマの言葉にディオスは呆けた。
「あんまり寝てねえだろ?」
「あ……はい」
ファズマの指摘にディオスはうなだれながら肯定した。
この会話を聞いてかモルテが小さく溜め息をつくとディオスに目線を向けた。
「ディオス、食後に話がある」
モルテの突然の指名にディオスは驚いた。一体自分が何をしたのか……もしかしたらミクを夜中まで連れ歩いていたことを知ってしまったのではと思い一瞬恐く感じる。
「おはよぉ~」
そんなディオスの気持ちを無視してリビングにミクの眠たそうな声が響いた。
「おはようミク」
ミクの声に驚いていたディオスをよそにファズマはいつも通り声をかけた。
「おはようミクちゃん」
ディオスもファズマに続くように言う。
「だから、ちゃん付けやだぁ~……わぁ!」
ディオスの言葉に頬を膨らましたミクだがテーブルに並べられている朝食を見て目を輝かせた。
「すごい!すごい!」
一体ミクが何にすごいと連呼しているのか分からないディオスは目を丸くして尋ねた。
「えっと……何がすごいの?」
「えっとね、朝ごはんが手抜きなの!」
「おい!」
ミクの発言に間髪入れずにファズマが全力で突っ込んだ。
「どこも手ぇ抜いてねえし手抜きじゃねえから!」
ファズマの全力否定を聞いたディオスはテーブルに並べられている朝食を見た。
今日の朝食はチーズリゾットにトマトの牛煮込み、卵のスープに豆のサラダ。
「あれ?」
さすがに何か違和感があるとディオスも感じた。
まだ葬儀屋フネーラの朝食を三回しか食べていないがそれでも感じられる違和感。
いったい違和感は何なのかと考えたディオスはすぐに思い付いた。
「軽めの朝食?」
葬儀屋フネーラの朝食は食べるには重い料理が並ぶ。それが今朝は
一品を除いてある以外はどれもすぐに食べられる料理であった。加えて、量も少なく見える。
「ディオスは分かったか」
ディオスの言葉にディオスは理解してくれる者がいたと言いたそうな嬉しい表情を浮かべた。
「今日くらいは軽めでもいいかと思ったんだ」
「やっぱり手抜き?」
「ちげぇつってんだろ」
ミクの疑問を加えた思ってもいなかった発言にファズマは睨み付けたがふと何かを思い付いて笑みを浮かべた。
「なら、ミクの朝飯は煮込みだけでいいな。サラダもいらないだろう」
「うそうそ!朝ごはん重くない!ファズマのご飯おいしいもん!重いのもおいしいもん!」
ファズマのイタズラに全力で今までのことを否定してサラダを没収されまいと慌ててファズマを褒め称えるミク。
その光景にディオスは家族といた時とは全く違う風景を不思議に思っていた。
「さて、全員揃ったことだ。朝食にしよう」
そろそろ朝食を食べたいとモルテは新聞を畳むと三人に言った。
モルテの言葉に三人はそれぞれ椅子に座り食べ物を下さったもの達への祈りを捧げて食事を始めた。
この日の朝食はファズマが必死に考えた為か、寝不足で色々と考え食欲が沸かなかったディオスが煮込み以外全てを平らげ、ミクが珍しく朝食を全てを平らげることとなった。




