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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
12章 覚悟と霊剣
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難易度が上がった救出

 マオクラフが異変を感じ取る少し前。


「どうだ?」

「こっちはねぇなぁ~」

「こっちもだ」

 地下水路でユリシアを探すアドルフ達であるが周辺も捜索したが見つけることが出来なかった。

「一体何処に?」

「何処かに移したか?」

「それはないだろう。悪魔が俺達の行動に全て気づいていたとは思えない」

 隠しそうな場所を探したがいなかった

「領域を使えれば……」

「レナードは何故使うなと言ったんだ?」

 本来なら領域を使えばすぐに見つけ出せたのだが、レナードが渦を調べ終えるまで使わないでほしいと要望をしたのだ。

 何故と思いながらもその時のレナードの様子に一同は飲み込んで手探りで探したのだ。そして、時間をかけたが結果は見ての通り。

「レナードがぁこっこぉ見たぁ時からぁ領域使うのぉたぁめらってたよなぁ」

「確かに珍しいことだが……」

 ガイウスが思っていることに同意するリーヴィオだがユリシアを見つけられていないことが尾を引いている為に表情は曇っている。

「領域といえば、レナードは領域を使ってここにディオスの妹がいると言っていたな……」

 アドルフが思い出して言うとそう言えばと顔を合わせる3人。

 そして、レナードなら分かるのではないかと意見が一致する。


 その頃レナードは周りに衝撃を与えない様に慎重に渦を調べていた。

 渦については大方分かっていたことでスムーズに進んだが、表情は強張っていた。

「どうですか?」

 そこにユリシアを探していたが見つけられずに戻って来たクロスビーが近寄って来た。

 レナードは無言で腕を組んで渦を見つめる。

「予想通りと言えば予想通りだが……」

「複雑、と言うことでしょうか?」

「一纏めにすればそうだ」

 クロスビーにそう言うとレナードの表情はさらに強張る。

「レナード!」

 そこに意見が一致したアドルフ達が駆け寄る。

「レナード!お前ならディオスの妹を見つけられるだろ!」

 他には領域を使うなと言ったがレナードは渦を調べる為に使っていた。

 使うなと言った本人が何で使っているのだと突っ込みを入れたくなるが、渦が悪魔のものであり、当初から領域で探ることに危険を示していたことでこの場において領域をどの程度使えばいいのか分かっているのがレナードだけであるから唯一とも言える。

「……ああ。渦の中にいた」

「はぁぁぁぁ!?」

 既にレナードが見つけていたことと渦の中にユリシアがいたことに全員が驚く。

 そもそも、何故渦の中にという疑問が浮かぶはずなのだがこの場においてそれを思う者はいない。

「それなら早く……」

「そのことで悩んでいるんだ」

 渦の中にいると分かれば助け出さなければと乗り出すリーヴィオをレナードが止めた。


 アドルフはレナードの口振りから渦がどういったものかわかっているのではと考える。

「レナード、この渦のことが分かったのか?」

「ああ。これは水をに吸収して山に飛ばしているものだが、下手に解除しようものなら長年山に貯められた水が濁流としてアシュミストに流れ込む」

「濁流か。長年と言うがどれくらいだ?」

「数十年分だ」

「はぁ!?」

 流石に年単位、それも十年単位と思っていなかったことにまた驚愕する。

 そのことを肯定するようにレナードが補足を入れる。

「水路の近くに住んでいた人が言っていたことだが、昔と比べて随分と流れる水の量が減ったと言っていた」

「まさか……」

「待て!それならおかしいだろう!ここはディオスの実父が……」

「いや、実父とは限らないだろう。他にも悪魔がいてここに渦を仕掛けた。そこにディオスの実父が潜んだんだろう。そうだろうレナード?」

「ああ」

 随分ととんでもないことになっていたと背筋に冷たい汗が流れる。

「これを仕掛けた悪魔がどういった存在かは知らないが、渦を利用してユリシアを隠したんだろう。だが……」

 そう言ってレナードは話を修正する。

「話を戻すが、これを強制的に止めると数十年分の水が山の木々と地面を巻き込んで濁流となってアシュミストを襲う。」

「その様子で襲うと言うことは……滅ぶってことじゃないか!何でそんな冷静に言えるんだ!」

 あっさり言ってのけているレナードにリーヴィオが叫ぶ。

「この仕組みが分かったからだ。だが……」

「ディオスの妹か」

「ああ」

 どうやらユリシアがいることでレナードは躊躇っていた。

「このままやったらディオスの妹は巻き込まれてしまう」

「生きてぇはいるがぁ上げぇることがぁでっきないのかぁ」

「そうだ」

 どうやら悪魔も思っていない事態になっており、救出の難易度が上がっていた。


「どうにかなりませんか?」

 もはや渦をどうにか出来るのはレナードしかいないとクロスビーが尋ねる。

 数秒考えてレナードは渦を背にして振り返った。

「かなり危険があるが頼めるか?」

「ああ」

「おぉよ」

「はい」

「何言っているんだ?元々はディオスの妹の救出に来たんだ。それを言うか?」

「……そうだな」

 どうやらこの事態に全員覚悟を決めてくれていたことにレナードは心の中で感謝する。

「まずはここにかけられている妨害を解除する!」

 第一段階へと踏み出す。

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