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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
12章 覚悟と霊剣
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追われる弟子

「アリアーナ、大丈夫か!?」

「少しかすったけど……」

「見せろ!」

 悪魔の足止めをしていたアリアーナを既の所で助け出したマオクラフはすぐさまアリアーナが怪我を追った場所を見た。

「かすったってもんじゃないだろ!」

 アリアーナが受けた傷は深くはないが広い。右脇腹から右肩へと上がるようにしていくつもの傷があった。

 痛みで顔が僅かに歪んでいるだけで呻こうとしなければ立ち上がろうとしているのだからとんでもなく我満しているのが分かる。

「くっそ!もっと早くに気づけば……」

 だが、傷は傷。未だに傷口から流れ出る血にマオクラフは上着を脱ぐとアリアーナの右腕が動かないように固定する。脇腹の傷は血を止めるものがないためにこのままにする。

「もうアリアーナは動くな!」

「けれど……」

「それで動かれても困る!」

 マオクラフの制止にアリアーナは口を閉じた。


 アリアーナの傷は悪魔の腕が異形になったことで負ったものだ。

 優位に進んでいた弟子組であったが、ついに悪魔が気を切らして一瞬であるが異形となってアリアーナを返り討ちにたのだ。それに気がついたマオクラフであったが救出が遅く負傷させてしまったのだ。

 そして、アリアーナを退けた悪魔は飛び上がりディオスへと向かってしまい一瞬にして詰め寄られることとなった。

 これではディオスが逃げにれないとロレッタがマオクラフに申し出て遊撃として向かった。

 そもそもロレッタがマオクラフと共にいたのはマオクラフの手助けだけではなく何らかの理由で対応している他の弟子が動けなくなりディオスを守るものがいなくなった場合にロレッタが動くこととなっていた。

 そのタイミングは本来なら今でなくてもよかったのだが、他の弟子がすぐに追い付けないこと、その間にエミリアだけでは対処出来ないことからロレッタが飛び出したのだ。

 とは言え、これによってディオスは逃げることが出来、アリアーナと入れ代わりでロレッタが参戦することになったのだが、状況は今までの中で最悪であり一気に傾いてしまったと言える。


 マオクラフは領域でロレッタとエミリア、そしてディオスの様子を見る。

 ディオスは疲労しながらも懸命に逃げているが、ロレッタとエミリアの状況は悪い。

 アは異形化を解除しているが内に力を貯め込んでいる。

「ロレッタ、エミリア。すぐにそこから離れろ!」

 マオクラフは領域を使って伝えるとアリアーナに向けて領域を使った。

「待って!」

 アリアーナが気が付いて何かを言おうとしたが、それよりも早くマオクラフはエノテカーナへと飛ばした。

 エノテカーナにはレオナルドとオスローがいる。負傷したアリアーナを見ればすぐに手当てをしてくれると。

 それからすぐに領域で悪魔を見ると、2人に指示を出したのは正解と思えたら。

 指示を出した直後に悪魔は完全に異形と化して周囲の地面を抉ったのだ。

 その力と速度は弟子組には辛いものであり、マオクラフが指示を出したお陰でロレッタとエミリアはそれぞれ細い通りへと避難出来たが、出なければ巻き込まれて負傷していた。


 だが、ここでマオクラフが思っていない事態が起きた。

 細い通りへと逃げ込んだエミリアを悪魔が追いかけたのだ。

「何だと!?」

 領域を通して慌てて逃げ出すエミリアと追いかける悪魔。

 2人が細い通りへと逃げたのなら悪魔はディオスを追いかけるはず。だが、そうしない理由は一つ。明らかに弟子組の排除に乗り出したのだ。そうしなければいつまで経っても悪魔はディオスを捕まえられないからだ。

『マオクラフ!悪魔が……』

「分かっている!」

 領域を伝って聞こえてきたエミリアの声にマオクラフは指示を出す。

「そのまま逃げろ!」

『ちょっと、本気!?』

 追いかけられているエミリアを犠牲にしてディオスが逃げる時間を稼ぐことにする。

 完全に悪魔は作戦のことを知ってしまっているがそれでもディオスが狙いなのだから、ディオスが逃げ切れることに意味がある。

 まだ、作戦の根本は変わっていない。

「いつまでも逃げろってわけじゃない!ディオスが目的の場所まで逃げ切る時間を稼げばそれでいい!」

『無茶苦茶な……!』

「適度でいい!無理なら無理で俺が助ける!」

『今が無理なんだけどーー!!』

「持ちこたえろ!」

 エミリアの悲鳴を無視してマオクラフは領域の感度を広げる。

 ディオスとエミリアがこれから逃げそうな道と弟子組がどこにいてどうやって向かっているのかを。そして、これからのことを。

「……父さんの苦労が今になって分かるよ」

 アシュミストのまとめ役であるレナードがどれだけ考えて対悪魔・生霊リッチ相手に死神に指示を出しているのか痛感する。


 そう思いながらもマオクラフも考える。しかし……

「やっぱり、決め手がない……」

 いくら考えても悪魔を留める一手がないことに唇を噛む。

 そうこうしている内にエミリアが悪魔に追い付かれようとしていた。

「限界だな」

 すぐに領域を使ってエミリアを現在遠くにいるフランコの元まで飛ばす。

 突然消えたことに悪魔が一瞬立ち止まった。

「さてと……」

 次の一手へと動こうとする。

 だが、突然大きな力をマオクラフは感じ取った。

「何だ!?」

 突然のことにマオクラフは振り返った。その方向、河の向こう側を。

明日から9日まで諸事情により21時投稿になります。

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