表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
12章 覚悟と霊剣
504/854

図面にない通路

 地下水路に侵入しているレナード達は地上で起こっている状況と真逆で何事もなく進んでいた。

「ここも比較的傷んでいないな」

「保存状況がいいんだろう」

 深くまで侵入したが壁や床には目立つ破損らしきもがない様子にレナードとアドルフが会話する。

「しかし、ここまで地下水路が図面通りでしたね」

「ああ。正直良かったと思える」

「はい」

 走りながらリーヴィオとクロスビーが地下水路を迷うことなく進んでいられることに安堵する。


 いくら地下水路の図面を手に入れていたとしても古く、新しいものでも水路から細かく枝分かれしていたことから深く入るまで調べた通りであったのか不安であったのだ。

 しかし、中に入って図面通りにしばらく走っていればその通りであることが分かる。

 だが、図面通りでは死神と天眷者がいくら走っても目的地までは遠回りをしてしまう為に時間がかかってしまう。

 だが、レナードを筆頭とした侵入組は可能な限り時間の短縮を行っていた。


「ここだ」

「ガイウス、頼む」

「おぉ~よぉ」

 図面を持つアドルフが足を止めたのに合わせて侵入組も足を止めた。そして、ガイウスが壁に向かってゴルフクラブを構えた。

「チェストォォォォ!」

 そのまま振りかざすと壁を破壊。壁が崩れた奥には不思議なことに書き写した(・ ・ ・ ・ ・ )図面(・ ・)に記されていない空間が広がっていた。それも長く。

「どうやら当たりだ」

「ファズマが気がついたお陰だな」

「ああ。そうでなければ領域を使わなければ分からなかった」

 死神は通路が出現することを知っていた様子で驚くことなく入ると迷うことなく進行方向へと走った。


 ガイウスによって出現した通路はファズマが昔過ごしていたスラムで地下水路を根城にしていた者達が堀作った通路である。

 地下水路を根城にしていた者達はある程度古い地下水路の壁に穴を開けて自分達にしか知らない通路をいくつも作っていった。これは近年の地下水路の構図に記されていないだけでなくアシュミスト統治議会も知らないことだ。

 そんな者達が地下水路で暮らしていた理由は薄々と感じるものがあり、そこでの暮らしを快適にしたりする一方で住む傍ら仕事で全体を把握する必要があった。その為に近年の地下水路全体を詳しく知る唯一の存在としてファズマが尋ねたのだ。

 そして、アシュミストの改革によってこれまでの行いから手を洗い一定の収入を手に入れる生活を送るだけでなくの地上で暮らしている。


 ファズマがそのことを思い出してくれたお陰でレナード達は地下水路の壁を破壊をしながらも隠された通路を使って短距離で移動している。もちろん、騒動後に修復することを忘れていない。

「チェストォォォォ!」

 そして、何度目かになるガイウスが古いゴルフクラブが地下水路を根城にしていた者達の通路の壁を壊し、書き写した図面の通路へ繋がる。

「全く、こんなものがあることに気づけなかったとはな……」

 通路から通路への移動中にアドルフがぼやく。

 地上ではいくつもの犯罪者が使う裏ルートを見つけては潰し、監視をしてきたアドルフであるが、アシュミストが酷い時代に地下水路にこの様な通路があり見抜けなかったことを悔やむ。

「アドルフ、今はぁいぃからよぉ」

 ガイウスから早く案内しろと急かされアドルフは気を持ち直して誘導する。



 いくつもの通路を跨いでしばらく。

「もう少しだ!」

 目的地付近にまで来たことをアドルフが叫んで伝える。

 気持ち的に早く走りたくなるのだが、地下水路に侵入する前にレナードが言ったことが気になり誰かが何かを言ったわけでもないのに周囲を注意する。

 そして、目的地へ辿り着いた。

「何だこれは!?」

 直後に全員が足を止めるとそこにあった物に驚愕した。


  ◆


 その頃、エノテカーナでは……

「むぅ……」

 店内で暇になったミクがテーブルに頬を当てて口を尖らせていた。

「ミクさん、寝てもよろしいのですよ」

「寝ないし眠たくないもん」

 夜も遅いからと気を利かすオスローだがミクは首を横に振った。

 その様子をレオナルドが静かに見ていたが、すぐに時計へと視線を戻した。

 何故3人がエノテカーナにいるかというと留守番である。

 レオナルドは地上と地下水路で何かが起きてもいいように待機しており、ミクは1人で葬儀屋フネーラにいさせることに不安だからとファズマに連れられて、オスローはミクの面倒を頼まれてエノテカーナにいるのだ。


 皆が出てから時計の長い針が一周半回った。

 レナードとマオクラフから手助けの連絡は未だになくどちらも上手くやっているのだとレオナルドは考える。

(しかし、この先はどうなるか……)

 領域を使えば早いのだが、レナードからは無闇に地下水路を覗くなと言われており、マオクラフの方は力の温存の為に使用していない。

 今は連絡を待つことしか出来ない。

 また沈黙、と思った時、突然扉が叩かれる音が聞こえてきた。

「レオナルドさん」

 警戒するオスローにレオナルドは一つ頷くと自ら扉へと歩んだ。

 オスローもミクと共にカウンターの奥へ非難する。

 レオナルドは領域をエノテカーナの外へ展開して何がいるのかと探る。

(人でさない。しかし、これは……)

 外にいる存在は悪魔でも生霊リッチでもない。しかし、この場所にいるにはあまりに異常であり、疑問が浮かぶ。

 そう思いながらもレオナルドは開けなければならないと扉を僅かに開けて隙間から確めた。

(……)

 そして、やはりおかしいと結論を着ける。

 なんせ、扉の外にいるのは白い馬、白馬だからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ