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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
12章 覚悟と霊剣
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危機回避

「いぃぃやぁぁぁぁぁぁ!!」

 背後から聞こえてきたアンナとエミリアの悲鳴にディオスとフランコは何事かと反射的に振り返った。

 そして、目にした光景に2人は言いかけていた言葉を止めてしまった。

「何あれ!?」

 驚愕するディオスとフランコの視線の先には地面が波打っていた。

 文字通り路面が津波の様に迫って来ている。

「逃げてぇぇぇぇ!!」

 そして、波に追われてアンナとエミリアも走って来る。

 言われるまでもないとディオスとフランコは体力など気にせず全力で走り出した。

「エミリア!こんなおかしなもの連れて来ないでくれるかな?冗談にしては過ぎてる!」

「これが冗談なわけないでしょ!」

 フランコは途中からディオスの手を再び握って走り出すと背後にいるエミリアに向けて叫ぶ。

「どうしてあんなもの連れて来たんだ!」

「連れて来たくて連れて来てるんじゃない!」

「だったら、何で別の道に逃げないんだ!」

「一本道だから仕方ないてしょう!」

「細い道もあるだろう!」

「これがそこに入ると思う?逃げたらフランコの方にいくでしょ!」

「……それもそうか」

 収まるところに収まった。


「ファズマ!悪魔があんなことまで出来るって聞いてない!」

『はぁ!?知らねぇよ!つうか、こっちだとどうなってるか分からねえのに八つ当りしてくるな!』

 マオクラフの領域を使ってファズマに向けてアンナは説明不足と文句を言う。

 あらかじめファズマから悪魔が地面で押し潰してきたことを聞かされていたが、波まで作り出すとは思っていなかった。

「ちょっと聞くけど、ファズマの時はどうだったの?押し潰してきた地面って?」

『どうって、通路一杯って言っただろ!そっちはどうなってんだ?』

「波になって押し寄せてるよ!」

『……マジかよ』

 どうやらファズマとやり合った時以上と理解する。


「そもそも、何で地面が波打っているんですか?」

 地面が波になっていることに呆然としていたディオスは我に返ると原因を追求した。

「悪魔が力を使ったからに決まっているでしょう!」

「悪魔……ってまさか!」

 アンナの言葉にディオスは振り返った。


 波打つ地面の上には悪魔が立っており、見下ろすようにしていた。

「見つけたぞ」

 そして、ディオスを見つけるとそこから飛び上がった。


「やっぱり!」

 悪魔が地面を操っているということはその近くにいるだけでなく利用しているのではと思ったディオスはその通りであったことに驚いた。

 しかし、飛び上がった悪魔は走っているアンナとエミリアを、さらにはディオスとフランコおも飛び越えてしまった。

「くっ……」

 悪魔が上空を過ぎたことに気がついたフランコは着地地点を予想すると空いていた片手もディオスの手を握りしめ、走る勢いも利用して細い通路へと放り投げた。

「うわっ!?」

 ディオスは悪魔に意識が集中していた為にフランコの行動に気づかず、走っていた勢いも合間って細い通路へバランスを崩して転倒した。


 フランコはディオスを放り投げた勢いを利用して体を反転させるとそのまま短剣を握り締めて着地してきた悪魔へと切りかかった。

 だが、悪魔はフランコの動きを見ていたことで着地既で受け止めた。

「ここは僕が抑え込む!」

 背後から走ってくるアンナとエミリアに叫ぶとフランコはそのまま悪魔を足止めする為に握っている短剣に力を込めて動けなくさせる。

 そして、アンナとエミリアはその意を飲んで細い通路へと入って行った。

 役割交代を意味している。

「こしゃくな!」

 どうやら弟子組は何がなんでもディオスを渡さない、殺させないつもりであると理解する。

 しかし、フランコの背後からは悪魔が生み出した波が未だに迫って来ている。

 このまま逃げなければフランコは巻き込まれる。対して、悪魔にはその心配はない。生み出したのが悪魔であるからだ。


 だが、フランコはその場から逃げることを考えていない。

「うおぉぉぉ!」

「愚かか?」

 フランコは徹底的に悪魔に食らいついてきた。背後から危機が迫って来ているというのに気にしない様子に悪魔は童謡する。

 悪魔としてはフランコが避けた隙にディオスを追いかけるつもりだったのだ。

「なるほど。犠牲になることを選んだか」

 どうやら波に飲み込まれてでも足止めをする気と理解する。

「まさか」

 しかし、フランコはその考えを否定した。

 だが、波は既にフランコから十数センチ。逃げるどころか避けることも不可能。

 やはり犠牲であったと言葉だけであったと悪魔が思ったその時、突然フランコが上空に向けて消えた。

「何!?」

 驚く悪魔を避けるようにして波が枝分かれした。

 通りすぎてすぐに悪魔は上空を見上げるとフランコが短剣を突き下ろしたまま落ちてきた。

「はぁぁぁぁ!」

 その攻撃に悪魔は大きく後退して回避した。

 相手は違うが同じような攻撃がこれで二度目。しかし、どちらも不意打ちであるために反撃など出来なかった。

 いや、そもそも……

(何故避けることが出来た?)

 既に回避不可能で合ったはずなのに悪魔にとってなかった選択肢、上空への回避を成功させたフランコだがその方法が分からない。

 悪魔の中で焦りが生れたて。


  ◆


 マオクラフは安堵から深く息を吐いた。

「間に合ったか……」

「もう、ハラハラした……」

 マオクラフに同意とロレッタも胸を撫で下ろした。

 フランコが回避に成功したのは作戦開始前にクロスビーが天眷術で身体能力、特に速度と飛躍の向上をかけたからだ。

「だけど、これで手札の一つも削った」

 天眷術による身体強化も中盤まで使うつもりがなかった。

「フランコ、なるべく長く足止めをしてくれ」

『分かった』

 フランコに連絡を入れたマオクラフは眉を寄せて次の手を考える。

「……父さん達はどうしているんだ?」

 予定していた時間稼ぎが出来ないのではという心配からマオクラフは別で動いているレナード達を思って呟いた。

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