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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
12章 覚悟と霊剣
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前倒しになる作戦

 ディオスを見つけた悪魔は特に考えることなく走り出していた。

 ディオス(あれ)を消したい。とにかく殺したい。そして眼球を手に入れたいという一心で追いかける。

 死神の弟子の一人が手を引いて走っているが大したことではない。いずれ追い付くことは理解している。しかし、それで足を緩めることはしない。

(殺せれば……殺せれば恐らく……)

 ずっと抱いている感情から解放される。されたいという欲望が気持ちを掻き立て追いかける。

 だからこそ……

「てぇぇやぁぁぁぁ!!」

 別れ道から現れたアリアーナのカウンターとも言える一撃を胸に一線食らい足を止めた。

「……またか」

 悪魔は忌々しいとアリアーナを見下ろすが、既に追撃を食らわせる準備が整っていたアリアーナの短剣が再び振るわれる。

 しかし、悪魔は見切っており短剣を握る右腕を受け止めた。

「嘗めたことをする」

 あっさり受け止められて困惑するかと思った悪魔であるが、アリアーナは気にせず右手で握っている短剣の柄に左手を添えると悪魔の腕に突き刺した。

「ぐっ……」

 思った以上に深く刺さったことで悪魔の顔は歪み、アリアーナを投げ飛ばした。

 アリアーナにしたら振り払った悪魔の力は強いはずなのだが、何とか着地を決めると構えた。


  ◆


 その間、ディオスはフランコに手を引かれて走っていた。

 何故こうなったかというと、迫り来る悪魔が早くこのままではすぐに追い付かれてしまうからだ。

 幸いフランコはリーヴィオの弟子であるから更に速く走ることが出来るのだが、ディオスには弟子に必要な物がないために弟子組程の身体能力がない。

 よって、フランコがディオスを引っ張って走る構図が出来たのだが、これが端から見たら様子も合間って何かから逃げている様にして見える。その通りであるのだが。


「フランコさん、早い……」

「ああ、スピード落とすよ」

 そう言って徐々に走るスピードを落としたフランコであるが、通りを二つ越えて走ったディオスの体力は尽きており足を止めた。

 その様子にフランコは申し訳ないなと思いながらも現状の確認の為にこの場にいないながらも全体を把握しているマオクラフに尋ねた。

「マオクラフ、悪魔は?」

『アリアーナが足止めをしている。だが、いつ突破されてもおかしくないし、このままじゃあっという間に追い付く』

 マオクラフの言葉にフランコは一瞬胸が引き締められた。

 薄々感じていたがマオクラフがそう言ったと言うことは状況はかなり厳しい。

 ファズマが初手を止め、アリアーナが時間を稼いでくれたお陰で何とかエミリアとアンナが合流予定としているフィルムに辿り着いた。

 だが、元々合流は次の手段、止めるのに時間が短くなったころにするつもりであったのだが思っていたよりも早くなっている。

「マオクラフ、悪魔が動き出したら教えて……」

『ちょうど突破された』

 言いかけた所でマオクラフから知らせが入った。

 さすがにタイミングが悪いこともあるが次の行動を決めきれていないところでの知らせなのでフランコの表情が歪む。


「いた!」

「フランコ、ここにいたの」

「エミリア!」

 そこにアンナとエミリアが2人と合流した。

「ロレッタ、フランコとディオスと合流したよ」

『うん』

 エミリアはマオクラフの領域を使っているロレッタに連絡を入れた。

『フランコ、ディオス。街中を回る予定だったけど変更する。このまま外に向かえ!』

「外って、郊外」

 マオクラフからの思いもよらない指示に息が切れていたはずのディオスが驚愕する。

『ああ。このままじゃ追い付かれるのは分かっている。だから郊外に向かってくれ。それも水が流れていない場所に!』

「それってもしかして……」

『郊外なら俺が出てもすぐに逃げることは出来ないはずだ』

 それはマオクラフの早期参戦を示唆していた。

「だけど、それでも難しいんじゃ?」

『ああ。だからロレッタの指示に従ってくれ』

「ロレッタの?」

『ええ。私達だけじゃ止めきれなくなるかもしれない。だから一瞬だけでも悪魔が見失ってくれればいいの。その道は私が誘導する』

 どうやらロレッタの方で既にルート選出をしていたようだ。

『悪魔の方が見失ってくれたら父さんが持ってきた試作の道具で時間も稼げる』

「だけどそれじゃ……」

『どのみち、これを使う時点でバレるのは分かっていることだし悪魔だってそこまで馬鹿じゃない。まあ、頭に血が上ってたら話は別だけど……』

「でも、やるべきことをするならそれしかないよね」

「うん。何も変わってない」

 すっかり忘れがちになっているが弟子組の目的はディオスを守ることと、それにより死神が地下水路に潜る時間稼ぎである。見つからない、捕まらないが重点である。


『フランコ、ディオスを連れて今すぐ逃げろ!もう迫っている!』

 直後にマオクラフから焦った声が聞こえてきた。

 そう言われてフランコは気持ちと思考を切り替えた。

「……分かった。ロレッタ、案内を頼めるかい?」

「そのつもりよ」

 何で疑問系と話を聞いていた全員が思ったが突っ込むことはしない。

 そして、ディオスとフランコを見送ったアンナとエミリアは短剣を握った。

「あいつには何杯を食わされているから倍返しにしてやる!」

「……目的、忘れないでよ?」

 さっき話したばかりなのにと暑くなっているエミリアに不安を見せるアンナ。

 そうしていると目の前からものすごいスピードで迫る悪魔を認識した。

 その瞬間、2人にとって、いや、誰も思っていない予想外が起きた。

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