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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
12章 覚悟と霊剣
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ディオスが戦えるわけ

 その日の夜。

「これはまた手酷くやられたね」

 アリアーナの腕に出来た打身の手当てをエミリアは痛そうな顔一切せずにてきぱきと行っていた。

「レオナルドさん、相当に力を入れているんじゃないかな?」

「ディオスを鍛え直すって言ってたから余計にね……」

 アリアーナだけでなくディオスとアンナも遅れてやって来た医学生組の手当てを受けていた。

 とは言え、手当てを受けている3人の怪我は少なく殆どは目立たないもの。ただし、これから支障に出たらいけないと医学生組が行っているだけだ。

「もしかして僕達も手厳しく鍛えられるのかな?」

「……うん」

「やっぱり」

 そして、既に手抜きがないことにフランコが苦笑いを浮かべた。


「でも驚いたわ。ディオスって戦えたのね」

 アンナの手当てを終えたロレッタがディオスに向かって言った。

 命を捨てるようなディオスの発言に怒っていたロレッタであるが、死神集会が終わった後に数分ほど話した末に双方謝罪をしていることでわだかまりはない。

「何で言わなかったんだ?」

「言わなかったって言うより、隠してた?」

「えっと……言う機会がなかったし、隠してたわけでも……」

 医学生組の質問にディオスは懸命に考えた末に口数少なく言う。

 何しろ、家が潰れたと同時に鍛えることがなくなったことと悪魔や生霊リッチに通じる通じない以前に逃げに撤していたから立ち向かうことが人前でなかっただけなのだ。

「……でも、やっぱり腑に落ちない」

 そして、やはりアンナがディオスのことばに睨み付けた。

「まあ、アンナの気持ちは分からないわけじゃないねど……」

「探してた宿敵がディオスだったんだからね」

 エノテカーナでレオナルドが明かした話しは色々と衝撃を与えたものであった。


 そもそもディオスは財閥時代に教育の一環として武道を学んでいたのだ。

 ブジェットと呼ばれる剣術と武術が合わさったシュミラン独特の武道をディオスは学んでおり、アシュミストで行われていた大会で何度か優勝していたのだ。

 そして、アリアーナとアンナもブジェットをレオナルドから学んでおり、同じ様に大会に出場しており優勝も経験している。

 しかし、3人の優勝回数はディオスとアンナが同数となっている。

 ブジェットは男女別と混合の二つがある。男女別は文字通りであるが、混合は性別と年齢を問わず多くの参加者が腕試しにと参加をする。その際は一定年齢ごとに分けられて試合が行われている。

 3人は年齢が近いこともありって試合をすることもあった。その為に何度も顔を合わせているはずなのだが、ブジェットをする際は顔を隠している為に素顔は分からず、名前で呼ばれることもない為に相手がどういった人物かもはっきりとない。

 さらに、1年前に行われた大会でディオスが不参加であった事もあってアリアーナとアンナはそれらしい癖を持った相手がいないのとを不思議と感じながらも理由があったのだろうと思いながら忘れていたのである。

 そして、アンナは優勝回数が同数であったのがディオスであると知るとまるで目の敵、ライバルとも言いそうな覇気で攻めより宣戦布告の様なことを言ったのは笑い話である。

 お陰でアンナの「もう一勝負」に付き合わされるディオスの構図が見られるようになった。

 ちなみに、1年前にあった大会はアンナが優勝したのだが、相手が宿敵(ライバル)であるディオスでないからとカウントしていない。


 そんな裏事情もあって一日一杯の特訓でディオスが特に疲労している。

「それで、勝敗はどんな感じ?」

 エミリアが興味本位で尋ねた。

「今のところアンナが二勝多いですよ」

「へー。すごいじゃん」

 ディオスにブランクがあるはずと思いながらもアンナがリードしていることをエミリアは称賛する。

 しかし、アンナは不機嫌であった。

「すごくないですよ。1年以上もブランクあるはずなのに半日で大体の勘を取り戻しているようなものですよ」

「……え?」

「だから二勝しか差がないんですよ。本当だったらもっとあるはずなんですよ」

「確かに」

「それに、弟子である私達と対等に戦えるってことが普通じゃないから!」

「それもそうね」

 上げれば上げるほどディオスが身に付けていたブジェットの実力と元からある身体能力が高いことが伺えることに気づき医学生組は唖然とする。

「……そんなに、おかしいですか?」

「おかしいっていうよりは、すごすぎ、ね」

 一言で片付けたロレッタ。正直言ってそれについて論じたらディオスが落ち込むのが目に見えた故の対応である。

「そういえば、ファズマは知らなかったのかな?」

 アリアーナの疑問に全員が仰視した。

 言われて見ればディオスの身元をファズマは調べているはずなのだ。しかし、エノテカーナの店内でレオナルドから聞かされた話に驚いていた。

「ディオス、ファズマから聞いてないかい?」

「一応聞いたけど……」

「何て言ってたの?」

「その……忘れてたって」

「……は?」

 ファズマが驚いた意外な理由にファズマとミクを除く弟子組は目を丸くした。


  ◆


 ファズマは身仕度を整え終えるとミクに声をかけた。

「それじゃ行ってくる。レナードマスターが何か頼んできたらそん時は頼むな」

「うん!」

 仲間達に連れられて帰って来たミクは元気よくファズマを見送った。

「気を付けてね!」

「おう!」

 普通じゃはこの日もエノテカーナへと向かった。

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