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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
12章 覚悟と霊剣
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待つ間に

 エノテカーナ店内では未だにレナードがモルテと電話越しに話していた。

「けっこう長いね」

「うん」

 アリアーナとアンナは壁に掛けられている時計の長い針が半周回った頃だろうと思う。

 ちなみに、全員が集まってから随分と前に日付けも変わっている。

「随分と話してたみたいね」

 2人が時計を見たことで釣られてロレッタとエミリアも確認した。

「それにしても、外に出た皆遅いね」

 アンナは悪魔の出現によって飛び出した死神達が未だに戻って来ないことが不思議に思う。

「レオナルド、マオクラフからの連絡はどんなものだったんだ?」

「アンナの予想が正しかったと言うことです。それと、悪魔には逃げられてしまいましたが、狙いにディオスさんの母親も含まれているとのことです」

「……そうか」

 どうやら幾つか解決したが改めて考えなければならないことが出たことでリーヴィオは頭を抱えた。

「それで、どうしてまだ戻って来ないの?もしかしてディオスに何かあったの?」

 アンナが然り気無く言った言葉にロレッタの表情を僅かに暗くさせた。

「気が動転したと言えばいいでしょう。落ち着きを取り戻すまでは戻れないと」

 それに気づかずレオナルドがディオス達が戻って来られない状況を教えた。


「それと……」

「まだあるのか!?」

「これは今回のことにそれほど重要というものではありません。ディオスさんが動揺した理由ですが、実父が義父を殺したことを明かしたと」

 その途端、電話に集中しているレナード以外が仰視した。

「えっ!?父さんそれって……」

「ディオスさんからしたら相当に衝撃があったようですね」

 これではディオスが動揺しても仕方がないと意見が一致する。

「しかし、それなら1年ほど前にディオスさん達は義父をと共に殺されていてもおかしくはないはずですが、何故今になって?」

 グランディオが亡くなったのが1年程前であるが、その時に殺されなかったのは何故かとクロスビーが疑問を言う。

「私にもそれは分かりません。そもそも1年を過ぎているとはいえ私達が今回の悪魔の存在に気づくことがありませんでした。そして、その間は何処に隠れていたのかと謎もあります」

「大きな事件もありましたからどさくさで見つかっていてもおかしくありませんが……」

 また考えることが増えたとレオナルド、リーヴィオ、クロスビーは頭を捻らせた。

「お飲み物を準備いたします」

 その様子にオスローは席を立つとレナードに許可を取って調理場へと入って行った。


 エミリアも考えようとした時、ロレッタが複雑そうな表情を浮かべていることに気が付いた。

「ロレッタ?」

「……大丈夫。ちょっとキツくし過ぎたかなって思っただけ」

 声を掛けられたロレッタは何ともないと言ったが、エミリアには何を思っているのか、無理して気丈にしているのか何となく分かっていた。

「ロレッタが気に病むことじゃないよ。結局あれは誰かが言わないといけないことだったんだから。その風当たりが少し強くなっただけ」

「ん……でも、その切っ掛けを作ったのは私だから……」

「まあ、ロレッタがあれに対して怒るのは分かってたけど、落ち込むのは初めて見た」

「そう、かもね……」

 思ったことを口にしたエミリアだが話が僅かにズレた気がして修正する。

「でも、ディオスにはあれがちょうどよかったんじゃないかな。深く落ち込んじゃって外に出たのには驚いたけど……」

「うん……それもあるんだけど……」

「え?」

 フォローするはずが、どうやら考えていたものと違っていたようだ。

「ディオス君のことをもっと知っていればってわけじゃないんだけど……今回のことってどうしてもディオス君にとっていい方に転ばない気がするの。それで、どうやったら……」

「ああ、……なるほど、ね……」

 ロレッタが何を気にしているのか分かったエミリアは相槌を打った。

 死神としては悪魔を倒して事件を解決出来ればそれでいい。しかし、関係者であるだけで本来なら関わるはずのないディオスが渦の中心にいる。どうしたら傷口を深くしないですむのかと悩んでいるのだ。

「それにね」

「まだあるの!?」

 どうやら考えていたことはそれだけではなかったようでエミリアが声を上げる。

「ええ。ディオス君ってどこまでならメンタルが耐えられるのかなって?これからまたあんなことを言った時にどこまでなら耐えられるのかなって……」

「あんたは何を言っているんだーー!」

 思いもよらない方向にロレッタが口走ったことでエミリアの口と手が同時に出た。

「ひゃっ!?」

「せっかく真剣に聞いていたのにそこでそれ!?」

「まっ、エミリア待って、ひゃっ!?」

 突っ込みとばかりにエミリアの手がロレッタの体をくすぐって悲鳴を上げる。

 ただ、くすぐられている際の動作が色気を出しているはずなのだが、ここにはそれに釣られる男がいない。

「……何やってるの」

 唯一、アリアーナが呆れて突っ込んだ。のみであった。


「ただいま~って、何してるの!?」

 その時、外に出ていたマオクラフがエノテカーナの扉を開けるなり、妙に色気を出しているロレッタに驚愕した。

「え?何も」

 慌ててロレッタから手を離したエミリアだが、手遅れだとロレッタに睨まれる。

「それならいいけど……」

 本当に何があったのかと思いながらマオクラフは店内の席へと向かった。

 それに続いてアドルフ達も入って来たが、ファズマに背中を押されて入って来たディオスにアンナが驚いた。

「ちょっと、どうしたの!?」

 ディオスの様子は一言で言えばやつれており、二言目には髪が乱れていた。

「マオ坊に張り倒された」

「……本当になにがあったの?」

 何をどうすればこうまでやつれてしまうのかと疑問に思う。


 フランコは自分がいた席に戻るなりレナードを見た。

「電話?」

「そう。少し前まで声上げてすごかったんだから」

 フランコが店内から出て行った後のことをエミリアは思い出しながら言った。

 そこに丁度オスローが持ってきた飲み物を置いたことですぐに中身を飲んだ。

「それで、そっちはどうだったの?」

「そうだね……色々かな?」

「色々?」

「そう。色々と変わったよ」

 何かを含みながらももったいぶった言い様をするフランコにエミリアが教えろと視線を送る。


「父さん、ディオス連れ戻してきたよ」

「そうか」

 マオクラフはディオスを連れて戻って来たことにを伝えると、連絡は受話器から耳を離した。

 そして、目探りでディオスを探すと声をかけた。

「ディオス、モルテが言いたいことがあるらしい。出ろ」

「えっ!?」

 モルテからの連絡とやつれていたはずのディオスは驚いた。

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