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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
2章 葬儀屋の仕事
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予想外すぎた一日

 その頃、ディオスとミクは……

「はぁ……はぁ……」

「はぁ……ディオ、早いよぉ……」

「ご、ごめん……はぁ……」

 全力を出し切って息切れを起こしていた。

 逃げている途中でおかしな音を聞いたがものすごいスピードで追いかけてくる愚者から逃げる為に振り返ることも出来ず、走り続けて現在は新住宅街東通りで疲れて足を止めていた。

 ディオスは荒く呼吸をしながら走って来た道を見て、周りを見渡した。

「振り切れた、のか?」

 周りに愚者がいないことを確認すると深く息を吐いて張っていた糸を緩めた。

「た、助かったぁ~」

 その場にへたりこみたいがミクの前でだらしない格好を見せたくないディオスは肩を落とすことで我慢した。

「うん。助かった」

 ディオスの言葉に同意するようにミクも頷いた。

「それにしても、幽霊(ゴースト)なんて初めて見た……それに、追いかけられるなんて……」

 息が荒くてもなお話し続けるディオス。

 それだけに今さっきの出来事が強烈すぎて落ち着かないでいるのだ。

「そもそも俺、霊感なんてないと思うんだけど?」

 ふと幽霊を考えて思うディオス。現に幽霊なんて生まれてこのかた一度も見たことのないディオス。世間では霊感がないと幽霊を見れないとか何とか言われているが全く興味がなかった。

 それが幽霊を見たことはなく霊感なんてないし関係ないと思っていたディオスが目にしたのだ。もしかしたら幽霊は霊感に関係なく見れるのではと考えてしまう。

「あれ?そうなると幽霊って姿を変えられるのか?」

 老人とピエロの様な姿をしていた愚者の幽霊を思い出して改めて考え始めるディオス。

 そんなディオスに呼吸を整えたミクが指先で軽くつつく。

「どうしたのミクちゃん……じゃなかった。ミク?」

 つつかれたことで一度考えを停止してミクを見る。

「これからどうするの?」

 ミクの口から言われた言葉にディオスの表情が曇った。

「……分からない」

 そう言うとディオスは顔を上げて夜の空を見た。

 その時、二人の近くに一台の車が止まった。それは見覚えのある車ですぐに運転席から見覚えのある存在が降りた。

「ここにいたか」

「ファズ!」

「ファズマさん!?」

 まさかファズマが車でここまで来たとは思わず驚くディオスとミク。

「どうしてここに!?」

「お前らの帰りが遅いからに決まってんだろ」

 ディオスの質問に呆れながらファズマは言った。

「何でレオナルド店主の所に荷物届けて現場に花を手向けるのにこんだけ時間経ってんだ!」

 出たのは昼過ぎと聞いている。それが現在は真夜中であれから時間がかかりすぎている。

「……すみません」

 色々と事情があると言いたかったディオスだが一連の出来事を言っても信じてもらえないだろうと諦め謝罪をした。

「……たく」

 ディオスの謝罪にファズマは呆れて息を吐いた。

 大体の経緯は分かっている。いや、予想という形でモルテから聞かされているからある程度どうゆう出来事にディオスがあっていたかは想像が出来る。それに、後で詳しくモルテから聞くつもりであるから聞くつもりもない。

 では何に溜め息をついたのか。それはもしかしたら信じてくれるのではという信頼をディオスがまだファズマにそれほど抱いていないことへの不満からであった。

 昨日あれだけ一緒だったのに全く信頼されていない。しかも、誘拐を阻止したのにも関わらず全く頼ろうとしないのだから溜め息をつきたくもなる。

「とにかく、今戻れば店長はいない。気づかれる前に戻るぞ」

 もっとも、モルテは怒るつもりはないがあえてそれを知っていてもそのように言うファズマ。

 その言葉に真夜中まで出歩いてしまいモルテに叱られたくないと帰って来る前に葬儀屋フネーラへ戻るとディオスとミクは急いで車に乗り込んだ。

「はぇよ」

 その行動の速さにファズマは呆然としながら自分のペースで車に乗ると車の運転を始めた。


 車の窓から夜の街並みを見渡すディオス。だが、その表情は優れていなかった。

「どうした?」

 そんな様子を運転席から見たファズマはディオスに尋ねた。

「一体どうしたいのか分からなくて」

「は?」

 思ってもいない解答にファズマはすっとんきょうな声を上げた。

「色々ありすぎて俺自身どうしたいのか分かっていないんです」

「……そうか」

 どうやらしばらくはおとなしくさせておいた方がいいとファズマはさっきまで抱いていた思いを閉まって方針を転換させる。

「ねえねえ、もしかして生霊(リッチ)のこと考えてたの?」

「ああ、あの幽霊のことをね」

 そんなファズマの意思を無視して無邪気に問うミクの言葉にディオスは頷いた。

「幽霊がやったことなんが今でも信じられないし、そもそもそんな相手をどうやって証明しろとか信じてほしいとか……」

 そうして口を閉じたディオス。

 本当に今回はディオスにとって予想外すぎる一日で気持ちや考えが追い付いておらず落ち着いていないと考えさせられてしまう。

「ミク、この話しは終いだ。ディオスも考えるのはやめろ。帰ったらさっさと寝ろ二人とも」

「……はい」

 気を利かしたファズマの言葉に力なく頷くディオス。正直言って落ち着いていないディオスにとってタイミングがいい言葉であった。


 その後、店に戻るとモルテがまだ帰って来ていないことに安堵したディオスとミクはファズマにより無理矢理部屋に押し込まれたのであった。

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