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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
12章 覚悟と霊剣
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義父と実父

「……は?」

 誰からか疑問の声が漏れた。

「実の父親って、もしかして1年くらい前に死んだっていうディオスのお父さんのこと?」

 アンナの言葉はそのまま全員の疑問を代弁していた。

 ディオスの父親であるグランディオは自殺をして既にこの世にはいない。

 当然店内にいる全員はグランディオのことが最初に思い浮かんだ。


 しかし、そうなると様々な疑問が浮かんでしまう。

「アンナ、それはないでしょう。ディオスの父、グランディオは私が繋がりを絶っていますので悪魔と生霊リッチ不死者アンデットとなっていることはありません」

「確かにそうだけど……」

「そもそも、家で繋がりを切っているし葬式も手掛けたからちゃんとした遺体になっているのは見ているでしょう?」

「そうだけど、それじゃ実の父親って何?」

 レオナルドとアリアーナから異形になっていることはあり得ないと言われたが、アンナの疑問の答えにはなっていない。

「……例えばだけど、悪魔の新しい力とか?」

「それって二重の幻影者(ドッペルゲンガー)の様な?」

「そう。肉体に入り込んで操る感じ」

 エミリアの予想に二重の幻影者(ドッペルゲンガー)の仕組みと合わせたロレッタ。

 しかし、リーヴィオはその予想を否定した。

「それはないだろう。二重の幻影者(ドッペルゲンガー)が肉体に入れるのは入った肉体の繋がりが切れていないからだ。つまり、魂と肉体の繋がりが切れているディオスの父親の体に入ることは出来ない」

「そうだ。死神が繋がりを切って絶つことをするのは肉体に別の魂といった存在が入り込まないようにするためだ。例え悪魔であろうが二重の幻影者(ドッペルゲンガー)の様にはなれないだろう」

 リーヴィオに同意する様にしてレナードも死神の役割りからの面から否定した。

「エミリア、思うのだけれど、悪魔がそれをして何をしたいのか分からないな。数を増やすには効率が悪いと思うし、二重の幻影者(ドッペルゲンガー)の様に凶暴で力が強くなる訳じゃないと思うんだ」

「言われてみればそうだけど……」

 フランコの突っ込みにエミリアが不貞腐れるが、言わんとしていることは分かる。

 死神が繋がりを切っているのにも関わらずグランディオが悪魔として現れたのだ。

「もしかして、悪魔がディオスの父さんの姿を取っているのか?」

「そぉ~としかぁ考えらっれねぇなぁ」

「そして、偶然だが子供であるディオスとユリシアを標的にしたのか?」

 遺体が使われていないのなら考えられることは姿を形とったことしかないが、それでも何かが胸につっかえる。

「そうでしょうか?ご遺体は1年以上前に土の中に埋められています。生前ならともかく、死後に形とることは難しいと思われますが?」

「……そうだな」

 墓地も管理しているクロスビーの言葉は今では不可能と言う。

「でもそれって、生前の知り合いなら問題はないってことですよね?」

「だけど、それなら俺達がすぐに見つけているし、それよりも何で今になって現れたのか、どうしてディオスの父さんの姿をとったのか分からないことだらけだ」

 死神と弟子達が疑問を言えば違うと死神目線から否定と理論が繰り出されるが、いつまで経っても納得がいく答えが出ないばかりか、更なる疑問へと深みにはまっていく。


 まさか一言でここまで泥沼化するとは思っていなかったディオスは勇気を持って訂正に入った。

「あの、|今の父さん(・ ・ ・ ・ ・)の方じゃないです」

「今の、父さん?」

「はい。皆さんが話しているのは今の父さんの方で、俺が言っているのは前のと……父さんのことです」

「え!?」

「それってつまり……」

 ここまで話してようやくディオスが言っていた父親が誰なのかが分かってきた。

「はい。今の父さん、グランディオは義父です。そして、悪魔となって現れたのが実父になります」

 ディオスの告白に全員が驚きの表情を浮かべて何とも言えない様子を浮かべた。

「つまり、ディオスの母親は再婚をしていたということか?」

「はい。ですが、11年前に亡くなっているはずなんです」

「亡くなっている!?」

 予想外の言葉にディオスを仰視する。

「……はい。11年前にあった旅客船の沈没で亡くなっているはずなんです。手紙でその事を知らされて……母さんにも聞きましたが間違いないと」

 ディオスは病室シンシアに尋ねたことを隠さず言った。

 だからこそ死んだはずの人間が悪魔となってあらわれるのがあり得ないと戸惑ったのだ。

「その後に母さんは今の父さんと再婚をしたんです」

 当時の幼い頃のことを思い出しながら言った言葉はディオスにしては珍しく言葉が少なかった。


 しかし、一通りディオスの家族の過去に触れた死神達は険しい表情を浮かべた。

「11年前の旅客船沈没……」

「たぁしかあったなぁそ~んな事件がよぉ~」

「ガイウス知っているのか?」

「おぉ~よ。生存者はぁ50もいぃ~なかったってぇ話だぁ~」

「50人、以下……」

「少ないな」

 11年前にあったとされる事件を知らない弟子組は顔をひきつってしまう。

「原因は?」

「そぉ~こまでぇはぁ知らねぇな」

「知らないと申しますか、誰も分からないと言ってもよろしいでしょう」

「と言うと?」

「沈没した時刻が真夜中であり、助かった方々も命からがらで把握していないのです。港からも調査として船が派遣されましたが手掛かりは掴めなかったというようです」

 ガイウスの言葉にオスローがフォローを入れたが、結局は分からないままである。

「だけど、死んだって連絡が来ていたんですよね?それだったらどうしてディオス君の実父が悪魔に?」

「考えられることは一つだけだな」

 アリアーナの疑問にレナードが断言して言った。

「あの沈没事件は悪魔の仕業によるものであり、ディオスの実父はその時に悪魔になったんだ」

結局ミスリードが失敗している件について。

訂正か挽回か……

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