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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
12章 覚悟と霊剣
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面影

 日頃から市場関係者が多く訪れる市場にある道具街の一角にある店の中でディオスは頼んだものが運ばれてくるのを待っていた。

「お待たせしました」

 しばらくすると奥から店の店員が小さな木箱を持って来た。

「備品の名前と数の確認をお願いします」

 そう言われてディオスは木箱の中に入っている小箱を手に取ると一つずつラベルを見る。

 ただし、その動きはゆっくりで慎重であった。

「何かありましたか?」

「いえ……どうしてそう思ったんですか?」

「動きがいつもと違いましたので」

 ディオスが葬儀屋で働いているのを店員は知っていた。

 そもそも葬儀屋フネーラは顧客であるからディオスが初めて店に訪れてからずっと店員はディオスと関わる機会があった。だからディオスが今までの動きとはが違うことを店員は感じてたのだ。

 気兼ねなく言った店員の言葉にディオスは内心でビクリとした。

「いえ、何も」

「そうですか」

 そう言って誤魔化したが、ディオスは目を細めた。

(危なかった……)

 店員とのやり取りでまた視界が歪み遠近感を失っていたディオスはバレてしまったのではと焦った。

 そもそも、店員は死神のことなど分からないのだからディオスの目が時々歪むことを知らない。もしかしたら体調が良くないだけと思われていることを今のディオスはそこまで考えていない。

 視界が歪むなかでディオスは可能な限りの早さで小箱のラベルに書かれた文字と中身を確認して数も確かめる。


 そして、頼んでいた備品と数が一致しているのを店員に伝えた。

「はい、今から包みますのでお待ちください」

 店員は手際よく備品の小箱を袋に入れていく。

(あ、これじゃ何があったか聞かれるな……)

 その動きにディオスは内心で不審に思われても仕方ないと感じてしまう。

 実際に何気なく覗いた懐中時計で時間を確かめるといつもより店にいた時間が長いきがした。頼んでいた備品は多くはなかったのだが、やはり視界の歪みで動きが遅かったからと考える。

「お待たせしました」

 その間にも店員は小箱を袋に詰め終えており、ディオスに差し出した。

「ありがとうございます」

「体調には気を付けてください。またのお越しを」

「……はい」

 どうやら体調不良と誤解されていたことに苦笑いを浮かべながらディオスは店から出た。


  ◆


 店から出るとディオスはファズマから渡されたメモを確認した。

「後は今日のご飯の材料だけか」

 視界の歪みが収まったことで文字がはっきり見えたことで確認がスムーズに終わりメモをポケットにしまう。

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 その時、悲鳴がディオスの耳に聞こえて来た。

「……ユリシア!?」

 その悲鳴がユリシアの声であると気づいて驚愕すると、直後に複数の悲鳴が聞こえ、曲がり角から人が走って来た。

「うわっ!?」

 悲鳴やわめき声を上げながら迫って来たことでディオスは飲み込まれない様にと店の扉に寄って道を明け渡し、様子を茫然と見送った。

 そして、誰も走って来る様子がなくなったことでディオスはユリシアの悲鳴が聞こえた方を見た。

「……一体、何があったんだ?」

 誰もいなくなった道をディオスはただ事ではないと思いながらも見つめる。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「ユリシア!」

 そして、再び聞こえてきたユリシアの悲鳴にディオスは反射的に走り出した。


 聞こえてきた悲鳴がよく聞こえていたことからユリシアがいる場所は近いと考えたディオスは逃げて来た人達が現れた曲がり角を曲がって、目にした。

 ユリシアが背を向けている男に首を捕まれたまま持ち上げられて苦しんでいるのを。

「ユリシア!」

「お……ぃ……ちゃん……?」

 声に気が付いたユリシアがディオスに助けを求める様に見つめ、声を出そうとするが首を締められている為に出ない。

 その様子にディオスの中で男に対する怒りが湧く。

「ユリシアから離れろぉぉぉぉ!」

 男からユリシアを助け出す為にディオスは走り出した。

 目には男から何か分からない黒いものが漂っており、それが危険であると本能が察していたが、そんなことを今のディオスは気にしていなかった。

 ユリシアを助け出すことに意識を集中していた。

 ディオスは持っていた小箱が入った袋を男の頭に向けて振るった。

 中身は角張った箱であることとここまで走って来た間に中身はぐちゃぐちゃになっていることで角が立っており当たると痛い。

 そんなこと考えず振るったのだが、男は痛さで呻くことはせず平然と立っている。

「……えっ」

 あり得ないと驚くディオスをよそに男はユリシアを見たままだ。

「は……な……してぇ……」

 ユリシアが抵抗を始めたことに忌々しさを感じ始めた男が目に見えない力でユリシアの意識を刈り取った。


 それをの目にしたディオスは何も出来ない自分の悔しさを抱く。

「ユリシアに何をした!」

 ディオスは男が背後を向けたままであることをいいことにユリシアの元まで近寄ると握っている手を離そうと必死になる。

 これに男は予想外だったのかディオスを忌々しそうに見る。

 その瞬間、ディオスにも目に見えない力が襲った。

 一瞬だけ押されるような力を全身で感じたディオスであるが、怯まず男からユリシアを引き離そうとする。

「失せろ」

「……え?」

 男が忌々しそうに呟いた声にディオスが戸惑いを浮かべた瞬間、男はユリシアを握ったままぶつけるようにしてディオスを払い除けた。

 その間、ディオスは抱いてしまった特定の感情のまま男を凝視したまま弾き飛ばされた。

 近くに倒れているミクもユリシアをぶつけられたことも今のディオスに驚きと戸惑いを抱かせて考えることなど出来ない。

「ありえない……」

 ディオスは立ち上がると目を見開いたまま男を見続ける。

「……ありえない……何で……」

 信じられないと震える声で感情のまま叫ぶ。

「どうして生きているんですか!亡くなったと聞いているのにどうして!どうして……どうして生きているんですか……」

 その口調は先程までの乱暴な口調ではなく母であるシンシアに語りかける様な言い方であった。

「とと様?」

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