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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
2章 葬儀屋の仕事
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即興

 愚者が吹っ飛んだのを見届けるとガイウスはカッコつけるように振り返った。

「大丈夫だったかい~?」

 愚者に追いかけられていたディオスとミクをすんでのところで助けたガイウス。だが……

「ミクちゃん速く!」

「うん!」

「おぉぉぉぉぉい!!」

 助けたはずのディオスとミクはガイウスが助けに入ったことは元より愚者が追いかけてこないことにも全く気づかずに逃げ続けており、見る見るうちに遠くへと消えていく。

 せっかくカッコよくタイミングを見計らって助けたのに全く気づいてもらえなかったガイウスはショックを受けその場に膝待ついた。

「きさまぁ~!」

 そんな時、建物まで吹っ飛ばされた愚者がフラフラになりながらガイウスに睨み付けた。その目は獲物狩りを邪魔され恨んでいる獣の様な目である。

「邪魔をしおったな!!」

 元凶であるガイウスに愚者は血眼になった目で宙に浮かぶと先程のスピードが歪んでしまうような、全く嘘かというくらいのもうスピードで迫った。言い換えるなら一瞬。

 だが、ガイウスはその一瞬の間にゴルフクラブを持ちながらゆっくりと立ち上がった。余裕を持って。

「俺はぁ今~」

 次の瞬間、ガイウスは持っていたゴルフクラブで愚者を地面に叩きつけた。

「ガハッ」

 愚者ごと叩きつけられた地面は陥没。深々と地面に埋まり呻く愚者に追い討ちをかけるように今度はゴルフクラブで力ずくで宙へと打ち上げる。

「もぉ~れつに」

「グハッ」

 強い力が愚者の体を襲い、その力により高く飛ばされる。

「ショックを受けているのだよぉ~」

「グハッ」

 そして、ガイウスは落ちてきた愚者を再びゴルフクラブで宙に打ち上げる。

「なぁぜか聞きたいか~?」

「グハッ」

「聞きたいぃよなぁ~」

「グハッ」

「せっかく助けたのぉによぉ~」

「グハッ」

「お礼がぁない~のが~さみしいぃのだよぉ~」

「グハッ」

 落ちてくる愚者をお手玉のように打ち上げるガイウス。

 それだけならまだしも現在の心境を即興の歌として口ずさみ打ち上げている様子が先程まで緊迫していた状況を一瞬にして打ち砕いてしまっている。

 端から見たらよく分からない歌を歌いながらゴルフクラブを振り上げており、歌だけを聞くなら一体この重低音の意味の分からない歌は何なのかと突っ込みを入れたくなる要素だらけである。

 そんなことをしているにも関わらず全く気づいていないガイウスの行動がしばらく続いた。

「かなしぃすぎるぜぇ~」

「グハッ」

「カッコよく決めた~のぉによぉ~」

「グハッ」

「カッコいい!くらいはぁ聞きたかったぜぇ~」

「グハッ」

 どちらも止めてほしいがとりあえずこの歌を早く止めてくれ!と言いたい気持ちである愚者。

 そんな愚者の願いはすぐに叶えられた。

「だからぁお前をふっとぉばすぅ~」

「グハッ」

 打ち上げた愚者が落ちてくるのを見ながらガイウスは握っているゴルフクラブをさらに強く握りしめ力を込めた。

「チェェェェストォォォォォ!!」

 タイミングを見計らい振り上げたガイウスのゴルフクラブに見事打ち上げられた愚者は高く宙に舞い上がり、どこからともなく放たれてきた斬撃が愚者を真っ二つに切り裂いた。

 愚者は呻きも悲鳴も上げることなく光の霧状になりその姿を失った。

歌がヒドイ!

ガイウスの独壇場におつきあいいただきありがとうございます。

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