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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
12章 覚悟と霊剣
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3人揃っての朝食

 翌朝。

 モルテがいない朝食の席であったがディオスが戻って来たことで久し振りに3人揃っての朝食となった。

 朝食はモルテがいない為に量と種類は少ないが、それでも一般的家庭よりは多い。

 恐らくこれはモルテと暮らしている為に身に付いてしまった癖とも言える。

「そういや、前は気にならなかったんだが、エクレシア大聖堂の朝飯ってどうだった?」

「急にどうしたの!?」

「いや、教会の飯って粗食って聞いたことがあるから居た間どうだったのかと思ってな」

「ああ、なるほど」

 突然何を聞くのかと戸惑ったディオスであったがファズマが疑問を答えたことで納得する。

「普通だったよ。普通のご飯が出てきて」

「普通?」

「普通の」

 ディオスの返答にファズマとミクが目を丸くする。


「堅いパンとお水だけじゃないの?」

「それ牢獄で出される気がするな……」

「ミク、そこは水じゃねくてスープだろ。それも味の薄い」

「それも牢獄と思うけど?」

 明らかに監獄に閉じ込められている状況や飢餓か何かの時に出そうな食事にディオスが反応に困る。

「なら、具体的には何が出てきた?」

「そうだな……パンとスープは出ただろ。それからオムレツにサラダ、あとはキッシュとかソテーとか色々」

「すげー出たんだな」

「何かイメージと違う」

 エクレシア大聖堂で出された食事が普段食べている様なものと同じことにファズマとミクがギャップを抱く。

「つかソテーって、教会って肉いいのかよ!?」

「いいみたいだよ。ただ、俺達が思うイメージがそのまま常識になったって言ってた」

 ファズマの反応にあの時に自分がした反応と同じことにディオスは苦笑いする。

「でも、ヴァビ……最初にエクレシア大聖堂に行った時より種類は少なかったよ」

 ついヴァビルカ前教皇が生きている様に言ってしまうところであったディオスは何とか既のところで言い直す。

「は?」

「最初の時ってどれくらいでたの?」

 そして、ディオスが言い直した言葉にファズマとミクが食らい付く。

「最初にエクレシア大聖堂で朝ごはんを食べた時は10種類くらい出たんだ」

「それは七人の死神(デュアルヘヴン)がいたからエクレシア大聖堂が気を使ったんだろ?」

「それもあると思うけど……」

 何せヴァビルカ前教皇が歳の割に大食いで朝から数種類食べなければ気がすまない人物であったから人数を差し引いても量と種類が多かったのだ。

 ヴァビルカ前教皇が今もなお生きていることは秘匿とされているために詳しく教えられないディオスはそうとしか言えない。


「でも、味は?」

「おいしかったよ」

「ファズとどっちが?」

「そりゃ……」

 ミクの尋ねに答えようとしたディオスであったが、ここで下手な返答はマズイと気づいて無理矢理話を変える。

「待ってミク、急にどうしてその質問をしたんだ?」

「んと、ディオスが持って帰って来たお菓子にファズが悔しそうだったから」

「え?それで……?」

 ミクの口からでた全く関係のない繋げ方に唖然とする。


 ケエルからお土産にと渡された菓子を食べたファズマの反応は今でも覚えている。

 持ち帰った菓子を食べた瞬間にファズマは仰天したのかディオスに出所を聞いていた。

 どうしたのかと尋ねたディオスにファズマは美味すぎると言ってしまうも、最期には何がどうなってかものすごく落ち込んでいた。

 恐らくは自分が作る菓子よりもうまいことに落ち込んだのだろうというのがディオスの考えであるがそこまで気にすることなのかとも疑問に思っている。

 しかし、葬儀屋フネーラの料理を担当するファズマからしたらまだまだレベルアップが出来るものと切り換えて翌日には僅かに味付けが変わった料理を食べるとこととなった。


 だが、それでどうしてエクレシア大聖堂の朝食と繋がるのか分からない。

「ミク、どうしてお菓子と朝ごはんが繋がるの?」

「え?どっちも大聖堂がある場所だからだよ」

 胸を張るミクにディオスとファズマは呆れてしまった。

「ディオス、どうなんだ?」

「そこでこっちに言わないでくれないかな……」

「ディオスにしか答えられなだろ」

 全てを丸投げしたファズマは完全に自分は無関係である立場を取った。

 そして、ディオスの解答は……

「ミク、朝ごはんとお菓子は別々にした方がいいよ。聖職者からもらったものじゃないから」

 至極当然の解答であった。

「そうなの?」

 てっきり同じ場所で同じ人物が作っていたと思っていたミクは首を傾げてきょとんとした。


 ディオスが無理矢理話を終わらせたことでファズマは懐中時計の時間を確認してミクに声をかけた。

「ミク、そろそろ行く時間だ」

「もう?」

 話をしながらであったから思っていた以上に時間が早く流れていたことに驚いたミクは気持ちを切り換えて椅子から降りた。

「それじゃ行ってくるね」

「ああ」

「行ってらっしゃい」

 そう言ってミクは学園に向かう為に駆け出した。


 店のドアベルが鳴ったのを聞き終えるとディオスとファズマはどっと椅子に背を深く預けた。

「お疲れさん」

「……うん」

 ミクの予想外の言葉にディオスとファズマは驚きもしたが、それよりも解答に苦しんでいた。

 それが、ミクが学園に行ったことで解放された2人は思い思いの格好をとる。

「……少し休んだら掃除するか」

「うん」

 こうしてこの後の予定を決めてしまうと時間までゆっくりしていた。

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