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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
11章 変動の鼓動
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閑話 それぞれの後始末(ランバン)

 ランバンの車両倉庫区に出来たクレーター付近では死神達が時間の許す限り戦いで生じた痕跡の後片付けを懸命に行っていた。

「そこの瓦礫はどかして!」

 テレーザの声が車両倉庫区のクレーターから響く。

 その声に作業をしていた死神数名が瓦礫と化した場所に向かうが……

「何でこんなことを……」

 日付けが変わった深夜に突然呼び出されて訪れたらクレーターが出来ていたという事実に驚いたが、呼び出された理由が後始末という何もしていないのに人手が足りないだけで呼ばれたことに対して不満が出る。

「無駄口言ってるとテレーザに怒鳴られるぞ」

「それは分かるが……理不尽だろう?」

「だな」

 不満があるはずなのに仕方なく、あるいは同じ死神がやらかしたことだからか、もしくはテレーザに怒られるのが嫌だからと渋々後片付けに手を貸している。


「そもそも、俺達に隠していたことがどうかと思うんだが?」

 現場に訪れて何故こうなったのかテレーザが説明をした時は呆れるよりも先に怒気であった。

 何しろ鉄道車内で起きていた連続殺人が悪魔によるもので、しかもその事件には死神が手を貸していたのだ。その死神はアシュミストの七人の死神(デュアルヘヴン)が刈ったが、当然そのことの事実を教えられていなかったばかりか数名にしか知られず動いていたのだから信頼よりも隠密で動かれていた方が腹正しい。

 とは言え、これだけで済んだのはテレーザが前置きをして説明をした為に不信感という感情は最小限に抑えられている。この辺りでランバンの死神の絆が発揮されたのは皮肉である。

「だがなぁ……俺とお前は気にしなくても他がなぁ……」

「お前な……」

 もしも何の根拠もなく仲間に悪魔に手を貸していると聞かされたなら多くは信用しなくとも疑心暗鬼というものが徐々に膨れ上がる死神がいる。そうすれば人知れず動きだしダニエルやフィリポのように負傷者が増えていたかのうせいもある。

 そうした者達のことを考えるとテレーザの対応はある意味で正しいがある意味で恨みを感じる。

「だからって言うわけじゃないがこれは酷いだろ!」

 持っていた瓦礫を瓦礫の山に投げ捨てて改めてクレーターに向き直る。


 目の前にはクレーター。その周囲は余波で吹っ飛んだのか車両や倉庫が無尽蔵に壊れていたり散らばっていたり、元々あった場所から吹き飛ばされた跡がそこかしこに残っている。

「どうやったらこんなことになるんだよ……?」

 少人数の行動だったのでは?と疑問に思う戦いの痕跡に目を細める。

「ちょっとー!まだあるのだから早く戻って来てー!」

「はいはい」

 また遠くからテレーザの声が聞こえて死神達は瓦礫片付けに戻るのであった。


  ◆


「飽きたなぁ~」

「おい!」

 元凶であるガイウスのぼやきにリモーネが突っ込む。

「何が飽きただ!」

「だってよぉ~、寄ぉせてもぉ、寄ぉ~せてもよぉ、なくならねぇ~んだからよぉ」

「それもこれも全部お前がやったんだろう!」

 当初はこれほどの破壊をするつもりがなかったのにガイウスのせいで処理が大変になったのだとリモーネが視線を向けて抗議する。

「それによぉ~、俺はこ~みえてぇ片付けが苦手な~んだよなあわ~」

「そんなことはいいんだよ!そもそもどうやったらこんな惨事にまで持ち込むことが出来るんだ!」

 片付けが苦手だからと逃げ出そうとするガイウスを捕まえてリモーネは問い出す。

「そ~りゃあ~れだなぁ。乗りだなぁ~」

「よけにいにたちが悪い!」

「……と言うのはぁ冗談でなぁ、ひっさびさにぃ力使ったからぁ手加減がなぁ……」

「もっとたちが悪い!」

「だったら力を制限してからにしてくれ!」

 ガイウスの答えにリモーネが突っ込むと同時に場所を離れていたはずのヨーデルも突っ込みを入れ、その直後に大きな音が響いた。

「ヨーデル、あったのか」

「ああ」

 ヨーデルの背後には吹っ飛んでいたはずの車両の一台があった。

 その外見は残念ながら吹き飛ばされた衝撃で車体がボロボロで所々が凹んでいる。

「片付けが苦手なら車体を運んでくれ」

「うぇ~……大体よぉ、な~んで列車が吹っ飛ぶんだよぉ?」

「お前が吹き飛ばしたんだかだろ!運ぶことくい簡単だろ!」

「ど~んなぁ理屈だぁ~それはよぉ~……」

 やりたくないオーラを出すガイウスだが、ヨーデルとリモーネがそれを許すことなく吹き飛ばされた車両の残りへとガイウスを引きずる。

「そういえばこいつの執事は?」

「そこで休んでる」

 オスローがいないことに気がついたヨーデルの言葉にリモーネは少し片付いた場所を指差した。

 そこではオスローが休んでいた。体力もなく死神の力を持たないオスローには大変な労働であるのだと追求するのに諦める光景であった。


  ◆


 ヨーデルが見つけた場所に着くとボロボロの車両が数台あった。

「まだ残ってるな……」

「まだ一部で瓦礫を取り除かないと運び出せない」

「うぇ……」

 見ただけで重そうだと嫌な顔をするガイウスをヨーデルとリモーネが押す。

「ガイウスとリモーネはその車体を頼む。俺はこっちをやる」

「ああ」

「いっやだなぁ……」

「そう言ってると終わらないんだからさっさとやれ!」

 リモーネに怒鳴られてガイウスは渋々指定された車両に向かう。

 そして、三人がそれぞれの車両に付くと……

「せーのー!」

 領域で車両を包んで浮かばせる。こうすれば一人一台を軽々運ぶことが出きる。

「だがよぉ、あ~のクレーターはどぉ~するんだよぉ~?」

「埋めるにしても土がないからあのままにするつもりらしい」

「テレーザも苦渋の決断をしたな」

「ないものは仕方ないだろう」

 そもそも一部の倉庫や車両が消失した時点で色々と諦めているのだ。

 もし戻そうとするなら多額の金額と時間がかかるのだから今さらクレーターが何だである。

 それでは片付けをする理由があるのかという問があるだろうが、テレーザからしたらする必要があると考えている。

 一部が消失したとは言え戦いの痕跡を隠すことと無事なものを元の場所に戻さなければシュミランという国とランバンという首都に迷惑がかかることが分かっているから少しでも最小限に、普段通りには出来なくても被害を最小限にする必要があるのだ。

「ま、その詰はテレーザの役目だがな。本当によくやってくれるよ」

 今もなお領域であちこち移動しながら車両倉庫に戻って来ては指示を出すテレーザの頑張りをヨーデルはまだ作業の途中とはいえ労いの言葉を言う。



 翌日、死神達が死ぬ気で後片付けをしたことにより車両倉庫は何かがあったはずなのに綺麗に整頓されているという奇妙な事件が新聞の記事が一面を飾るのだが、ランバンの死神とガイウスとオスローという当事者達はその記事を見たのは昼過ぎであった。

ローレルの遺体ももちろん平行してテレーザがやっていますがどうなったかはもう少しお待ちください


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