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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
11章 変動の鼓動
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後始末は丸投げ

「やり過ぎよ!」

「あいたぁ!」

 テレーザのチョップがガイウスの頭に直撃して悲鳴を上げる。

 場所はガイウスが作ったクレーターの中心地。そこに降り立ったテレーザ達であるが、降りて早々にテレーザのチョップが炸裂したのである。


「もうちょっと手加減とか出来ないの?」

「あいたぁ!」

 テレーザのチョップがまたしても炸裂する。

「そうだぞ。お陰で車両が吹っ飛んだだけじゃなく消滅しただろ!」

「あいたぁ!」

 テレーザに続いてフィリポもチョップを繰り出す。

「何で無くすほど力放ったんだ!戦いの証拠隠滅が出来ないだろ!」

「しかも地面抉れるってなんだよ!」

「もう少し自重しろ!」

「あいたぁ!あいたぁ!あいたぁ~!!」

 フィリポに続いてダニエル、ヨーデル、リモーネもガイウスに連続チョップをお見舞いする。

 端から見たらふざけあっている様にも見えるがテレーザ達は至極真面目である。

「あの、皆様……」

 一方でオスローは主であるガイウスがランバンの死神から制裁を受けているのを止めようとするが、気迫により止めに入ることが出来ずに声が徐々に小さくなる。


「いっやぁ~、ひっさびさにぃ力使ったからぁ手加減がなぁ~」

「手加減がじゃない!」

 言い訳にフィリポのチョップが炸裂するが、何かを思い出したガイウスがオスローを見た。

「そぉ~だぞぉ~!オスローが武器使えって言ったからだよなぁ~」

「申しましたが力を使ってこの様にしたのは社長です」

「何こいつのせいにしようとしているんだ!」

「あいたぁ!」

 死神の武器を使えと促したオスローを巻き添えにしようとしたガイウスであったがオスローの見事な言い訳とダニエルのチョップによって防がれた。

「そして、力を解放しても抑えきれなかったのは社長の責任でもあります」

「おぉ~い、そ~もそもよぉ力に至ってはぁ……」

「言い訳するな!」

「あいたぁ!」

 続いてオスローに言われた言葉に言い訳しようとするもリモーネのチョップでまたしても防がれる。

「それと、初めから武器を具現化してある程度力を抑えてから振るえばよかったのです」

「い、いや、それは……」

「反省しろ!」

「あいたぁ!」

 言い訳はさせないとヨーデルがチョップを食らわせるとオスローへと向く。

「そもそも何でこんな危ないことやる様に言ったんだ!」

「やれとは申しておりません。ただ、社長がお困りでしたので助言を申したまでです」

 あくまで自分は助言をしただけだと言い切るオスローにヨーデルはジト目をする。

「ついでにもう一発!!」

「あいたぁ~!」

 そして、テレーザの本気のチョップが炸裂したことでランバンの死神による制裁はひとまず終了した。



 何度もランバンの死神からチョップを食らったガイウスが頭を抑えると、テレーザ達に近づく一つの気配が感じられた。

「随分と楽しそうだな」

「モルテ」

 ローレルとの戦いを制し気を失ったディオスを背負ったモルテがガイウスとテレーザ達と合流する。

「ガイウス、力を使ったのか?」

「オスローに言ぃわれてなぁ」

 周りがクレーターになっていることからやはりそうかと感じたモルテはオスローを見る。

「社長がお困りでしたので」

「そうか」

 モルテが視線で何故使わせたかと向けるとオスローはその意を読み取って先に言う。

「しかし、ガイウスに力を使わせるつもりはないと言ってはなかったか?」

「はい。ですが一撃だけならよろしいかと」

 何かを思い出して尋ねたモルテにオスローはまるでまだ大丈夫と言う。

 そのやり取りにガイウスが何かを思い出した様に悔い始めた。

「あぁ~!そぉ~いえばぁ使ぁうつもりぃな~かったんだったなぁ~!」

「忘れるな!」

「だったら口車に乗せられるな!初めから使うな!」

 ガイウスの言葉にモルテが突っこみ、ダニエルがチョップを食らわせる。


「あぁ……もう……」

 テレーザは頭を抱えてこれからのことを考えようとするが、どうしても気になることがあり先にそちらを優先させた。

「それでモルテ、彼はどうしたの?」

 オスローと逃げたはずなのにいつの間にかオスローと別れて今は気を失ってた背負われているディオスについて尋ねた。

 それについてモルテは一言。

「私の鎌に触れた」

「何ですって!?」

 それだけでディオスがどうしてこうなったのか、どの様な状態に陥ったか分かったテレーザ達。その表情は驚愕している。

「大丈夫なのか?」

「すぐに引き離したから命に別状はないが油断は出来ないだろう」

「何でこんなことに?」

「私が至らなかったとしか言えんな」

 ダニエルとフィリポの問にモルテは力及ばずと悔やむ。


 しかし、モルテは次にどうするべきか既に決めていた。

「テレーザ、ガイウスとオスローを貸すからここの後片付けを頼んでもいいか?」

「ええ。私もこの2人を借りようと想っていたところよ」

「おお~い!?」

 モルテとテレーザのやり取りにガイウスが嫌そうに叫ぶが無視する。

「任せてすまないな」

「いいわよ。それに今は彼よ。それと死神デスにも報告をするのでしょ?早く行きなさい」

「助かる」

 テレーザの許可が降りたことで絶望しているガイウスを置いて一足早く立ち去ろうとしたが突然足を止めた。

「……ローレルを頼む」

 本当はローレルと決着を着けた為に後始末をしなければならないのだが、ディオスの状態とラルクラスに報告しなねればならない為に私情よりも死神としての役割を優先させたモルテはテレーザに頼むと改めて足早にその場から去った。


  ◆


 モルテが見えなくなるまで見送ったテレーザ達は改めているメンバーで向かい合った。

 その時に後片付けから逃げようとしたガイウスをダニエルが捕らえている。

「ヨーデル、皆を集めてくれる?ここの後片付けよ」

「分かった」

 事情が分からず後片付けに駆り出されることとなる仲間の死神には申し訳ないと思いながらも人手が足りないからとランバンにいる死神に領域で連絡をする。

「ダニエルとフィリポは今すぐに病院に行って治療してきなさい。それとフィリポはしばらくお休みよ。しっかり治しなさい」

「……そうなるのか」

 活動休止を言い渡されたフィリポは若干落ち込むが、残った中では一番の重傷者であることも理解している為に言い返すことが出来ない。

 一方でダニエルは何も言っていないが内心では自分に対する指示が治療だけでホッとしている。

「それと、ガイウスとオスローは私達と一緒にここの後片付けよ。精一杯働いてもらうからね」

「目がぁ~笑ってねぇ~……」

 そう言って微笑むテレーザの目が笑っていないことにガイウスが引く。

「さあ、始めるわよ!」

 テレーザが手を叩いて後片付け開始を告げた。

 なくなってしまったものは仕方ないが出切る限り使える様にしようと意気込む。



 こうしてランバンで起きていた路面鉄道車内連続殺人事件は幕を降ろし死神による後片付けが始まったのである。

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