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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
11章 変動の鼓動
451/854

巻添え

 先程まで陥っていた危機から脱することとなったディオスであるが悪魔がけとばされた方をただ茫然と見て、それがどの様なことによってか理解していくと徐々に表情を驚きへと変える。

「け……蹴り飛ばした?」

 自分が悪魔を吹っ飛ばした時は鉄の棒がくの字に曲がり両手が痺れる程であったのに、まさかモルテが悪魔を蹴り飛ばしただけでこうもあっさり危機から脱したことに驚愕する。

 だが、今度は違う危機が迫っていた。


 モルテとローレルが同時に駆け出すとそのまま鎌を振るい始めた。

 刃と刃が擦れる音を響かせ、鋭い切れ味を持った刃に刈られない様にと姿勢を屈め、突き出された柄からは身を翻して避けると息せぬ攻防を繰り広げ、その余波が周りへと拡散する。

「……くっ」

 戦いの余波は問答無用に近くにいたディオスにも襲って来た。

 衝撃波と言ってもいい余波は車両倉庫の壁を剥がしたり吹き飛ばしたり、更には地面を抉ったりと傷を付ける。

(何なんだ、これは……)

 ディオスは遮るものがない場所で顔を腕を覆いながら耐えていた。

 その間は時折腕と腕の隙間からモルテとローレルの戦いの様子を見るが2人の動きが素早く全く見えない。それでも戦いが続いているということは刃が擦れる音や余波から感じ取れていた。


 そして、ディオスの頭上に車両倉庫の木片が飛んで来た。

「まずい!」

 ディオスは大慌てで避けるとモルテとローレルの戦いに巻き込まれないようにと走り出した。

 しかし、ディオスが走る場所と平行してモルテとローレルの戦う場所も移っていた。

 すると突然、前方でまたしても車両倉庫の壁が壊れてそこから木片と共にローレルが吹っ飛ぶと後からモルテが現れた。

「まだ逃げていなかったのか」

「店長!?」

 モルテはディオスの気配を感じて言ったがけして顔を見ていない。常にローレルから目を逸らしていないのだ。


「驚きました。ここまで力を持っていたとは……」

 モルテによって車両三台を巻き込んで吹き飛ばされたローレルはまるで何事もなかったかのモルテの本まで歩き寄って来た。

「やはり七人の死神(デュアルヘヴン)として選ばれる程の実力があります。それでは私も本気を出すとしましょうか……死神と悪魔の力を!」

 その瞬間、ローレルの雰囲気が変わったことをディオスでも感じられた。

「逃げろディオス!」

 モルテは素早く言うとローレルへと一瞬にして詰め寄り鎌を振るった。

 しかし、ローレルは簡単に受け止めてしまった。

(クソ!)

 今出している実力では死神と悪魔の力を同時に使いこなし始めたローレルには通じないと歯噛みする。

 加えてローレルが予想以上に二つの力を使っていることにも驚く。恐らくは家族を亡くして心が壊れたことが追い風として二つの力を使うことを疑問に思わせることなく使いこなせる切っ掛けとなったと考える。

「はぁぁぁぁ!」

「っ……」

 ローレルはモルテを突き飛ばした。

 その突き飛ばした勢いは先程から何度も行っていたもの以上で、先程の礼としてモルテを車両倉庫三棟を巻き込ませた。

「店長!?」

 その突然の音に振り返ったディオスが車両倉庫へと突き飛ばされていくモルテを見て足を止めた。

 しかし、モルテはディオスの悲痛な声を聞いていないかの様にすぐさま立ち上がりながらまたローレルへと瞬時に詰め寄った。

「まだ来ますか!」

 迫り来るモルテに立ち向かうようにローレルは鎌を構えると、また受け止めた。

 モルテもそれを分かっていたからか地面に足が付く前に体を捻らせながら鎌を別の角度から素早く振るった。

 だが、ローレルはそれも見切り鎌で防ぐと体の重心を逸らしながらモルテが振るった起動から外れ、鎌を小さく振るった。

 モルテもそれを見切っていた為に鎌の持ち方を変えて鎌の刃で受けとめ、地面に足が付いた、瞬間であった。


「ふっ!」

「なっ!?」

 ローレルがモルテが着地した瞬間を狙って足をかけて転ばせた。これには予想していなかったモルテが驚愕と共に声を上げ体のバランスを崩す。

 ローレルは隙ありと鎌の刃を下に向けてモルテに突く。

 しかし、おどろいたのも一瞬、モルテは鎌を消す動作と握り直す動作を瞬時に行うと手に改めて鎌を握りしめた状態で降り下ろされた刃の先を自分の鎌の先で軌道を逸らして回避した。

「小癪な!」

「ぐっ!?」

 これで殺すことが出来なかったローレルは地面に倒れ落ちるモルテの腹目掛けて蹴り飛ばした。

 蹴り飛ばされたモルテは立ち直ろうとしたが真後ろに足を止めて立ち尽くすディオスに気が付いたことで鎌の刃を地面に刺して勢いを殺したが、完全に殺すことが出来ずにディオスを巻き込んだ。

「うわっ!?」

「くそ!」

 モルテは巻き込まれたディオスを掴み取るとそのまま体を捻らせながら抱き締めて車両倉庫に激突した。


 蹴り飛ばされたモルテと共に車両倉庫に激突したディオスであるが、モルテが庇ってくれたことでホトンド無傷で済んだ。

「怪我はないようだな」

「て、店長!?すみません!」

 モルテの体から抜けながらディオスは深く頭を下げて謝罪した。

 今にしてみればモルテとローレルの戦いに気にせず逃げていれば良かったのだ。

「まったく、だから逃げろと言ったのだが……」

「すみません」

 モルテがぼやいただけなのにディオスはまた頭を下げる。

 そして頭を下げて気が付いた。モルテの手に鎌がないことに。

「店長、武器が……」

 ない、とは言わずディオスは大慌てで周りを見回した。

 恐らく庇う過程で手放してしまったのだろうと予想する。

 実際にモルテは車両倉庫の壁に激突する直前で鎌を捨ててディオスを守ることを優先していた。

 モルテとしては小さなこと、けれどもディオスにしては一大事であった為にディオスは慌てて、見つけ出した。

「あった!」

 地面に深く落ちていた鎌を見付けて拾う為に駆け出したディオス。

 その行為にモルテは焦りが浮かぶ。

「触れてはならない!」

 大慌てで止めに入ったモルテ。だが、一足早く会いたいディオスが鎌を握ってしまい、異変が起きた。

「……あっ……」

 鎌を握ったディオスの動きが止まった。

 そして……

「あっ……あっ……うわあぁぁぁぁぁぁ!!」

 突然頭を抑えて叫び声を上げた。

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