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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
11章 変動の鼓動
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悪魔優勢

 悪魔の尻尾の先が首から頬へと動き撫でる。それはまるで手の代わりに毛繕いをしているようである。

「してやられた感じね」

 そんな悪魔の様子にテレーザが悔しがる。

 皆と合流する直前に動いたら悪魔のを対処していたのだ。すっかり尻尾が悪魔とくっついたことでもうあの様なことはないと思って油断していたのだ。


 死神が悪魔に向けて攻撃を仕掛けている中で尻尾は密かに悪魔から離れてタイミングを見計らって奇襲をかけたのだ。

 まるで初めから数では勝てないことを理解していたが故の奇襲。それもテレーザ以外が知らない方法である為に不意討ちとして最適。

 よってテレーザの甘さも相まってダニエルとフィリポは負傷してしまった。


 宙を浮きながらくねくねと動く尻尾を悪魔は自慢し始めた。

「ニャハハ!驚いたかニャ?ビックリしたかニャ?」

 悔しがる死神に向けて悪魔はケタケタと笑う。

 それはまるで死神に、特にテレーザに向けてわざと逆撫でするような言い草である。

「ダニエル、フィリポ怪我は?」

「俺は問題ない。フィリポは?」

「……ちょっとキツいが動けないわけじゃない」

 そう言ってダニエルは肩の傷を領域で、フィリポも背中の傷を領域で塞いで悪魔を睨み付ける。

「無理はするな」

 そこにヨーデルがフィリポの隣に立つ。

 元から負傷して悪魔と対峙しているのだ。これ以上深手を負ってしまえばいずれ動けなくことが分かっている故にフォローとして共に動くことにした。


「ニャニャ?まだやるのかニャ?」

 死神が諦めていない様子に悪魔が首を傾げる。

「俺達は死神だ。死神が悪魔を刈れないでどうする。たかが中級ごの悪魔を!」

 そう言って挑発をかけるリモーネ。

 そしてそれはすぐに効果を現す。

「ニャ!?たかが中級とはニャんニャ!それニャらニャーが死神を倒せることを証明してやるニャー!」

 挑発にまんまと乗せられた悪魔は叫ぶと、突然体が部分的に別れて宙に浮く。

「ニャニャニャ!これがニャーの最終手段だニャ!」

 悪魔の体はそれぞれ顔、体、足、尻尾と体から別れているにも関わらず声を発したり動いたりしている。

「これはビックリ……」

「おっどろいたなぁ……」

 体の分割はまるでドッキリショーの如くインパクトを死神達に与えたが、それだけであった。

「それで、その姿でどうするって言うの?」

 いくら体を分割してもそれだけなら死神になんら驚異にならないとテレーザが呆れ顔を浮かべる。

 付け加えるなら、尻尾が体から離れて動くたことと何ら変わりはない。

 悪魔は上級でない為にいずれ倒せると思っている。

「シャー!そこまで言うニャら後悔させてやるニャー!」

 そう言うと、別れた体の手や足が死神へと突撃する。

「皆、気をつけて!」

 テレーザは先程の不意討ちを念頭に入れて叫ぶと、死神は一斉になって対処を始めた。



 リモーネは拳鍔ナックルダスターでどの部分に当てはまるか分からない足を殴り飛ばし、ガイウスはゴルフクラブで叩き落とす。

 そこに鋭い爪を出した手がガイウスへと振り下ろされたが、テレーザが鞭で捕まえて自分の元まで引き寄せると地面に叩き付け、さらに鞭で叩く。

「ニャーいたいニャ!」

 体が別れているとはいえ、どうやら痛みや感覚は繋がっているのだろう。死神の武器により攻撃される痛みに悪魔が悲鳴を上げる。

「なら、これはどうだ!」

 悪魔に追い討ちをかけるようにしてダニエルが対処している足を無視してテレーザが対峙している足に駆け寄ると月鎌ハルパーから銃に変えると死神の力を放ち撃ち抜いた。

「ニャーーーー!!」

 さらに悲鳴を上げる悪魔だがダニエルは無視してさらに数発撃ち込む。そて、完全に足の一本が動かなくかる。

「ニャ……ニャ……ニャ……貴様……」

 恨みを込めて睨み付ける悪魔だが、そこにフィリポが銃で死神の力を放つ。


 だが、悪魔はそれに気づいたのか近くに漂わせていた尻尾で叩き落とした。

「くそ!」

 チャンスと見ていたばかりにフィリポは防がれたことを悔しがる。

「お前は邪魔ニャ!」

 力の威力に加えて不意討ちばかりを狙ってくるフィリポに悪魔はダニエルとやりあっていた足を向けた。

「フィリポ!」

 ヨーデルが慌てて領域を展開したことで一撃は免れた。だが、これにより悪魔の標的がフィリポからヨーデルに変わった。

「小賢しいニャ!」

「ぐあっ!?」

 ヨーデルの領域が邪魔と悪魔が睨み付けると今まで上手く隠していた胴体を腹へとぶつけた。

 足のようにしなやかに動いたり傷を付ける為の爪がない胴体であるが、使い方次第では強力な一撃を与えることが出来る。

 これにより悪魔が得意とする不意討ちで無防備のヨーデルの腹に一撃を与えることが出来たことで吹っ飛ばすことに成功。

「ぐっ……」

 ヨーデルは痛みで腹を抑えて呻く。

「ヨーデル!」

「この!」

 不意討ちを食らったヨーデルに驚くテレーザとフィリポ。だが、テレーザの意識がすぐに変わる。

「フィリポ!」

「!?」

 テレーザに声をかけられたフィリポはすぐに気づくことが出来た。

 ヨーデルが領域を展開していない場所から尻尾が迫っていたのだ。

 叩き付ける様に振られた尻尾であるがフィリポは寸でのところで回避。

 このまま対処しようと体の位置を変えるが、尻尾はそのままフィリポを通りすぎてテレーザへと向かう。

「この!」

 テレーザもそれに気がついて鞭を振るう。

 しかし、尻尾は鞭を避けると今度はダニエルへと向かった。

「何なんだ!」

 今までの様子から尻尾だけが無尽蔵に動いていることに気が付いたダニエルは苛立ちを募らせながらも武器を銃から月鎌に変えて振るうが、またしてま尻尾は回避して、他の死神へとちょっかいをかける。

「何だこれは!?」

「おぉ~い、なぁ~んとかしってくれよぉ~」

 自分が対処している足に割って入ってきた尻尾にガイウスとリモーネが苦情を漏らす。

「そんなこと言っても……」

 捕まえられない、と言おうとしたテレーザの前を悪魔の頭が通り過ぎた。

「ニャニャ!お前たちはそれと遊んでいるニャ!」

 そう言って悪魔は死神から逃げ出した。

「しまった!」

 悪魔が体から分割した部位を押し付けて逃げ出したことでテレーザは察した。

 これは囮にすぎないということが。そして悪魔の目的、優先したことがあると。

「2人が危ない!」

 悪魔が狙ったこと、それは先に逃がしたディオスとオスローを殺すことであった。

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