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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
11章 変動の鼓動
441/854

変わる予定

遅くなって申し訳ございません

 夕日が今日一番に赤く照らす空の下で茂みに隠れていた猫が顔を出した。

『ニャ?』

 そして、病院の入口に顔を向けると見知った顔の少年がパッとしないが身なりが整った男と共に出て来た。

『ニャンニャあいつは?』

 猫は茂みから出てくると静かに男を観察し始めた。

 男は病院の入口前で少年と会話を始めた。

『ニャ~……ニャつの連れといると言うことは死神……ではニャいニャ。ニャんだあいつは?』

 男から死神の力を感じないことに猫は首を傾げた。

『ニャつといいそいつといい、ニャんで死神といるニャ?』

 考えても分からず猫は傾げていた首を元に戻した。

『しかし、あの死神がいニャいのは丁度いいニャ』

 そう言って猫は少年へと視線を向けた。

『あニャつは多分ニャーの正体に気づいたんだろうニャ。だからずっとニャーを見ていたんだろうニャ』

 誰にも語っている訳ではないが猫の口からは少年が初めて見た時から何度も確認の為に見ていたこと。恐らく正体に気がついた故に監視もしていたのだろうと思われる。

『これ以上知られる前に始末した方がいいニャんね』

 もしかしたら既に例の死神に知らせている可能性があった。それなのにその死神が近くにいないことを不思議不思議に思うが今は目先の獲物に集中する。


 そうしていると標的と男が共に歩き出したのを見て猫は狩りをするかの様に密かに後を付き始める。

『それにしても、あの男は邪魔ニャ。ニャンニャンニャこいつは?』

 標的と共に歩く男の正体が全く分からないことに猫は僅かに苛立つが名案を思い浮かばせた。

『そうニャ!ニャつも食ってしまえばいいのニャ!それがいいニャ!』

 遂に標的とされた男。そんな猫が付いて来ているとも知らない2人は話しをしながら歩く。

『しかしニャ、あニャつから派手にするなと言われているからニャ……あニャつの派手の基準は分からニャいが、様は目立たなければいいのニャ。そうするとどこがいいかニャ……?』

 人間を2人食うとなると今でもいいのだが死神が集っている病院の近くで行えばすぐに気づかれて着くなり刈られてしまう恐れがある。

 それに、前回逃げ延びた時にタネが露見されているから同じ手で二度逃げることは難しい。

『やっぱり何処か遠くで目がない場所になるかニャ……』

 う~んと唸って猫は閃いた。

『そうニャ、あそこがいいニャ!あそこニャら逃げ道も確保出来るニャ!』

 そう言うと猫は走り出して2人を追い抜いた。

 猫、改め悪魔はディオスとオスローを殺す準備に取りかかり始めたのだ。



  ◆



 テレーザはダニエルにフィリポの容態と路面鉄道で起きたことを教えた。もっとも路面鉄道に関してはダニエルの方が情報を持っていたことで教えると言うよりも確認の為に行われた。

「なるほどね」

「ああ。フィリポも命に別状がないことはありがたい」

「ええ。でもしばらくは安静って言われてるわ」

「やはりか」

 予想が付いていた為にすぐに受け入れたヨーデル。


 だが、これで死神の状況が悪くなった。

「フィリポが動けないのは痛いな」

「こればかりは仕方がないだろうな。悪魔の力が分かっても防ぐのは一苦労だ」

 現在ランバンで暴れている悪魔の力にヨーデルが苦い表情をする。

「影に潜るからな。あれじゃ奇襲しやすいからな」

「だぁ~がなぁ、影がねぇ~ところじゃ使えねぇ弱点があるだろぉ~よ?」

 リモーネも難しいと唸るがガイウスは打開は出来るはずと言う。

「それはそうだが……そんな場所何てほとんどのないだろ?」

「癖がある分使える場所は限られている。それに時間帯によっては影が極端に少ない場所も出て来る。何とかして探し出しおびき寄せればどつにでもなる」

 ガイウスの言葉通りだとモルテが可能性の大きさ広げる。

 これにはさすがに厳しい表情を浮かべていたリモーネが呆れ顔になる。

「やっぱり七人の死神(デュアルヘヴン)となる死神は考えが違うな……」

 小さな可能性を最大限に使うモルテの姿勢に自分の小ささを嘆く。

「そうすると朝……いいえ、太陽が真上に登った正午がいいかしら?」

「そうだな」

 これで悪魔討伐する大まかな方針が出来た。


「それと、話しを変えるが引退した死神はどうだった?」

 昨夜の話しで引退した死神を調べようとなっていたことについてモルテが成果を尋ねた。

「こっちは白だったわね。リモーネは?」

「こっちも白だ」

「俺の方も白だ」

 テレーザ、ヨーデル、リモーネがランバンにいる判明している限りの元死神を訪ねたが不審な所がなかったと口を揃える。

「モルテの方はどうだったの?」

 モルテは自分からローレルの元へ訪ねると言った為にテレーザから問われた。

「ローレルは……」

 モルテは構わず自分が感じたことをその場にいる死神に教えた。



  ◆



 同時刻。

「この路面鉄道でいいんですよね?」

「はい。案内板に書かれているのが確かならこの路面鉄道で間違いないはずです」

 ディオスとオスローは宿へ帰る為に路面鉄道に乗ろうとしていた。

「それにしても人が多いですね」

「仕事から帰る人なのでしょう。少し待つことになりますね」

 どのみち路面鉄道に乗らなければ疲れるし時間がかかるからと行列の最後尾へと並びに行く2人。


 その時、ディオスに向けて誰かがぶつかって来た。

「すみません!……大丈夫?」

 慌てたディオスだがぶつかって来た相手は女の子。しかも、何故か泣いている。

「……ママァ~!」

「どうしたの!?」

 泣きながら母親を探す女の子にディオスは慌ててしゃがむと尋ねた。

「ママァ、ママァ~!!」

「え、えっと……」

「ディオスさん、こういう時は慌てず、まずは宥めることです」

 どうすればいいのか分からないディオスの代わりにオスローが女の子を引き連れて人が少ない場所であやす。

 しばらくして落ち着いた女の子は泣きじゃくりながらも泣いていた理由を話し始めた。

「ママ、ママァにあいたぃ~……」

「はぐれたの?」

「ううん、ママァをむかえにきたの……」

「どういうこと?」

 その後も泣きじゃくりながらも話す女の子の理由をまとめればこうだ。


 数日前に仕事で遠出していた母親が今日帰って来るとのこと。

 それで待ちきれなくなった女の子が家を飛び出して駅まで迎えに行こうとしたのはいいが、どうやら乗る路面鉄道を間違えてしまい、何処か分からない場所に来てしまい泣いていたのだ。


「迷子ですよね?」

「迷子ですね」

「ママ~」

「ああ、泣かないでくれるかな?」

「ママ~!」

 また泣き始めた女の子に頭を下げた悩ますディオスは見捨てられないと一つの提案を出す。

「それじゃ一緒に駅に行く?オスローさんもいいですか?」

「ほんとう?」

 ディオスの言葉に女の子が一生懸命に泣くのをやめようと頑張る。

「ディオスさんがそうしたいと仰るのなら私も構いませんよ。それに、この様な小さな子供を見捨ててしまうのは私としましても無視出来ません」

 オスローの許可も降りたことでディオスは胸を撫で下ろすと女の子に優しく語りかけた。

「それじゃ泣くのをやめて駅に行こう?」

「……うん……」

 ディオスの言葉にぐずりと鼻を鳴らした女の子だが泣いていた目をこすって涙を拭う。


 そうして、しばらく女の子がちゃんと落ち着くまでの間、ディオスはどの路面鉄道が駅に向かうか、いくつ先かを確認すると、オスローと共に女の子を連れて駅へと向かった。

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