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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
11章 変動の鼓動
437/854

訪問

 翌日。

 太陽が真上に近くなった頃にモルテとディオスの姿がランバン西住宅区にあった。

「店長、この辺りですよね?」

「ああ」

 昨日、偶然にも再会した葬儀屋フネーラ先代店長、ローレル・フネーラの自宅の住所が書かれたメモを見る。

 番地を確めて近くまで来たことは分かったが住宅が密集していることに加えて目印となるものがメモに書かれていない為に苦戦している。

「聞くしかないな」

 周辺に住まう者なら知っていることを願いながらモルテは近くにいた住人に声をかけた。

「すまない、この辺りにフネーラと言う者の住まいを知らないか?」

「フネーラ?フネーラ……フネーラ……それならそこの家、赤い扉の家がフネーラさんの家よ」

「そうか。感謝する」

 そう言ってモルテは改めて赤い扉の家を見る。

「あの家ですか?」

「そうだ」

 ディオスも赤い扉の家を確かめるがその表情はよろしくない。

「店長……昨日の話しですがもしかして……」

「ローレルも対象に含まれている」

「やっぱり……」

 モルテの隠そうともしない発言にディオスは複雑な気持ちになる。


 昨夜、警察庁にいた死神だけが今後の行動について話し合い極秘とした。

 それがランバンにいる死神の力を持つ者全てを調べ回るということ。

 悪魔と関係がある可能性がある以上は多くのランバンの死神に知らせて動いてもらうことは出来ない。それならその事実を知る死神だけで動いた方がいいとなったのだ。

 ただ、話し合いに参加している死神にもしかしたら悪魔との関係を持っているのではと疑いもあるだろうが、それを証明する術がない。それでも身の振る舞いのや重要な役割を担っていることから今のところは信頼できる味方であるという認識で一致している。

 では、どうやって死神の力を持った者達を調べるのかというと、こればかりは足を運んで調べるしかない。

 ランバンの死神が記憶している死神の力を持った者、この場合に指されるのは引退した死神である、その者達の名前を上げ、現在の住まいを知っていれば紙に書きまとめ、知らなければ後日調べる。そして、場所が分かる者に至ってはランバンの死神が赴くことになった。


 では何故モルテがローレルの元に赴いくことにしたかというと、個人の理由としてローレルに伝えなければならないことがあったからである。

 ランバンの死神なら顔を見に来たと適当な理由で会えるから不審に思われることはないが、モルテはアシュミストでローレルと顔を合わせている。そして何よりもローレルと話をしなければならないことが多くあるからと頼んで自ら赴くことにしたのである。



 そこの理由を知らないディオスとしては悪魔の関係者候補として疑って行くことに抵抗感を抱いていた。

 そんなディオスをよそにモルテは赤い扉の家に足を運ぶとベルを鳴らした。

 そしてしばらくして扉が開いた。

「ようこそモルテ。それと……」

「ディオスだ。」

「初めまして、ディオスと言います」

「初めましてと言っても最初にあったのは鉄道の中ですがね。立ち話も何ですから中へ」

 そう言ってローレルは2人を家の中に招いた。

 モルテは何も気負うことなく入ったがディオスは緊張した面持ちだ。

「どうかしましたか?」

「えっ!?えっと……」

「ローレルの家に緊張しているのだろう」

「なるほど、緊張しなくてもよろしいです。ゆっくりくつろいでかまいません」

「は、はい……」

 何か感じ取られたかと思ったディオスであったがモルテのフォローによってうまく誤魔化すことが出来てホッとする。


 ほどなくして2人はリビングへと通された。

「今コーヒーを入れますのでくつろいでください」

 そう言ってローレルはキッチンへと入って行きくのを見届けるとモルテはリビングを見渡した。

 壁には装飾品が飾られ、棚には置物、その中にはローレルの息子夫婦と思われる写真がいくつもあった。

「家族仲がいいのだな」

 写真の中にはローレルが含まれているのもいくつかあり、アシュミストを離れてからは息子夫婦と仲良く暮らしていたことが分かる。

 一方でディオスは椅子に座って静かにしていた。

 ローレルからくつろいでもいいと言われたが、モルテがローレルの元に訪れた理由を知っている為に内心では複雑、しかも葬儀屋フネーラ先代店長である為に落ち着こうと座ったのだがあまり効果はない。

「はぁ……」

 ついに溜め息をついたディオスは気はらしにと窓の外を見て、硬直した。


「お待たせしました、コーヒーになります」

 そこにローレルがコーヒーが入ったカップを持ってキッチンから出て来て置くとテーブルに置いてまたキッチンに戻り、今度は砂糖が入ったガラス容器を持って来た。

 ディオスは大急ぎで視線を窓からコーヒーが入ったカップに向けた。

「砂糖はお好みでどうぞ」

「ありがとうございます」

 差し出されたコーヒーにディオスは砂糖を一杯入れてかき混ぜると飲んだ。

 いつも店で飲むコーヒーよりも苦味を感じたが飲むには苦とは思わなかった。

「どうですか?」

「おいしいです」

「それはよかった。お客など店をやめてから来ないので自分の為だけに入れるようになってしまいましたからどうかと」

 久々に客に入れたコーヒーに不安を抱いたいたと告白したローレルにディオスはいつの間にか緊張が解れていた。


 モルテもコーヒーを飲み苦さを確認すると静かにカップを置いた。

「ランバンに来てからは充実しているようだな」

「ええ、周りの方に手伝ってもらいながら何とか」

「そうか。それで息子夫婦とはどうなのだ?共働きなのか?」

 モルテはローレル改めて息子夫婦の家に訪れてからの疑問である息子の妻が家にいないことをぶつけた。

 その言葉にローレルは暗い表情を浮かべた。

「亡くなられました。息子共々事故で全員が」

 その言葉に場が一瞬にして沈黙した。

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