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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
11章 変動の鼓動
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ランバンの死神の現状

思っていたよりも文字数が多く時間が遅くなりました。申し訳ございません。

 酒場を襲撃した存在が悪魔であることはあの場にいた死神全員が確信を持っていた為に話しは加速した。

「それにしても、大胆に出たものね」

「恐らく中級だろう。どうやってか知らんが、死神が集まる時を狙って一気に殺すつもりだったのだろう」

「浅はかだなぁ。逆~に刈られぇ~るかもしれねぇが、危険をおっかす代わりにぃ効率はぁい~よなぁ」

「そうよね」

「だが死神を狙っておきながら巻き込まれた人間に死人が出なくて良かったくらいだ」

「最大のぉ幸運ってやつだなぁ」

 悪魔や生霊リッチは人間を殺し、魂を喰らうことで力を増す。

 そういった存在なら無闇に殺して力を蓄えてもおかしくなかいのだが、今回の襲撃ではそれがなかったのだ。


「そういえば、悪魔は生霊よりも死神を標的にすると聞いたことがある」

「おぉ~、聞いたことあっるぞぉ~」

「悪魔の目的は死神デスだから力を授けられている私達も憎いのでしょうね」

 悪魔の闘争本能が死神へと向きやすい理由についてテレーザが推測する。

「しかし、よく襲撃に気がついたものだ」

「いや、俺達は襲撃に気付いてはいないんだ。」

「は?」

 てっきり悪魔の襲撃を寸前で回避したと思っていたモルテだが、ヨーデルが否定した。

「ヨーデルが言ったことは本当だ。偶然回避したようなものだ」

「どういうことだリモーネ?」

 ヨーデルの言葉を肯定するように話したのは同じように酒場内部にいた死神、リモーネ・ファジネル・アルナイルが何とも言えない表情を浮かべている。

 ちなみに、モルテがランバンの死神であるリモーネの名前を知っているのは、異渡り扉があった貸家の持ち主がリモーネだからである。

「酒場でちょっとな」

「具体的に頼む」

 言いにくそうなリモーネにモルテは状況が状況であるからと詳しく求める。


 話によると、酒場で働いていた店員が死神達の席に酒が入ったグラスを運んで来たのだが、ひょんなことから手を滑ってしまい床へと落としてしまったのだ。

 その時に、『水は嫌ニァーーー!!』と叫び声と同時に悪魔が床から、今からすれば店員の影に潜んでいたのであろう、そこから出現して暴れだしたのだ。

 暴れまわる悪魔を刈り取る為に動き出すも、悪魔は予想以上に動き回る為に例え領域内の時間が止まっていようと他の客に被害が出てはならないと領域で守ったりするも場が悪いことで動きが制限され、代わりに悪魔のしなやかな動きとトリッキーさに数名の死神が負傷。

 そして、やっとのことで捕まえることが出来ても死神の武器にしがみついて決定だである刈り取ることが出来ないまま悪魔は逃げるようにして壁を破壊。その後はモルテ達が対処した通りになる。


 色々と突っ込みどころがあるが概ねそうだと話すリモーネ。

 所々にテレーザはランバンの死神のまとめ役として、モルテとガイウスは外からの死神として別方向から色々と確認をした。

 途中でテレーザが頭を抱えたりもしたが酒場内部で起こった状況は把握出来た。

「俺達も警戒していたけれど、気配もなくあそこまで近づかれていたとは思っていなかった」

 悪魔特有の気配なら感じ取ることが出来る死神でも中級程度の気配を全く感じることが出来なかったことに悔しさを募らせるヨーデル。


 だが、心当たりがあるモルテは仕掛けの予想を言う。

「恐らく遮断結界(コンセプター)を使ったのだろう」

遮断結界(コンセプター)?」

「悪魔が作った道具だ」

「悪魔が!?」

 悪魔が道具を作ったという情報はまだ広まっていない為にランバンの死神はその真偽を確認せず、しかし悪魔が作(・ ・ ・ ・)った(・ ・)という言葉に驚愕する。

 ちなみに、遮断結界(コンセプター)とは教皇選挙終了後に悪魔が死神に気配を悟らせないように使った道具に付いた名前である。

「それ本当なのか!?」

「ああ」

 リモーネの言葉にモルテは今回あった教皇選挙のことを話した。

 途中でヴァビルカ前教皇が実は死んでいなかったことやエクレシア大聖堂を管理する天族のことは本人と死神デスであるラルクラスからきつく口止めをされている為に抜かしたが、それでも悪魔が長年かけて起こした事件と詳細を伝えることには何ら問題はない。

 そして、死神対策として悪魔が独自に作った道具が使われたこと、特にヘルミアに集った死神を大いに悩ませた悪魔囲い(フラグマ)には死神が関わっている可能性があることをこの場で述べたことでさらなる衝撃が走った。

「悪魔が道具を作ったってことに驚きだが、それに死神が関係しているなんて……」

「あくまでも今は可能性の範囲だが、けしてなしとも言えないことだ」

 モルテはこの事実を死神が集う場で言うつもりでいたが、悪魔の襲撃により話が伸びるならと今いる死神に伝えてしまおうと切り出したのだ。

「話しは分かったわ。死神デスがモルテをランバンに向かわせたのにはそういうことだったのね」

「そうだ。ラルクラス……死神デスは悪魔と生霊の被害が出ないように大い場所で道具が作り出されたか、もしくは試して要るのではないかと考えたのだろう」

「……そう」

 あらかじめモルテから受け取った知らせに何故死神(デス)の命令でと気になっていたテレーザであったが、そこにあった背景が明かされたことで今まで募っていた疑問が解消された。

「確かにここ最近、ランバンでは生霊と思われる事件が増えているわ。けれども、悪魔の事件に関しては路面鉄道の事件が起きるまでなかったわ」

「本当か?」

「ええ。そして、これで合点が付いたわね」

 そう言ってテレーザはヨーデルとリモーネと顔を合わせて頷き合った。


 その時、待合室の扉が開きダニエルとフィリポが入って来た。

「2人とも、丁度いいところ」

「テレーザどうした?」

 突然テレーザに声をかけられたことに何事かと戸惑うダニエルとフィリポ。

「鉄道の事件、あれが死神と悪魔による共犯によるものの可能性が高くなったわ」

「何!?」

「やはりか」

「おぉ~い、俺だけわっからねぇ~から教えてくれぇ」

 テレーザの言葉に驚くも予期していたと受け入れたランバンの死神に対し、鉄道であった事件を知らないガイウスが説明を求めた。

「鉄道の事件はモルテ達が巻き込まれたことはさっき聞いてたわよね?その事件は1週間前に起きたのよ。鉄道に乗っていた仲間の死神が最初に殺されたのよ」

 ここで初めて鉄道事件が明かされ、最初の犠牲者が死神であることにモルテとガイウスが驚愕する。

「もしや、死因は今日殺された者と同じか?」

「そうだ。首を切られていた」

「堕ちぃた死神とぉ同じかぁ~」

「方法は、な」

 そう言ってダニエルとフィリポは椅子に座った。

「だが、明らかに異常なのは、切口だ」

「切口がどうなっていた?」

「綺麗すぎるんだ。それなのに魂は食い散らかされていた」

「何だぁそれはぁよ?」

 よく分からない説明にガイウスは首を傾げたが、実際に遺体を見たモルテには感覚としてダニエルの説明が分かっていた。

「死神と悪魔の持つ能力が合わさっているということだ。例えるなら包丁で綺麗に食材を捌いたところで食べる時に食べかすがこぼれる。例えはこれで合っていると思うが?」

「ああ、非常に近くて助かる」

 モルテとしてもかなり大雑把な例えであったが、それでもこれが今までの例えで分かりやすいとダニエルは頭を下げた。

「だから共犯と言ったのだろう?だが、その後に殺されたのが死神でないことからすると、犯人である死神が悪魔化している可能性もある」

「そうね。でも、混雑した列車の中で殺人を人知れずやるには死神じゃ難しいわ。でも悪魔なら可能よ」

「そう来たか。だが、死神が関わっていることはこれで確定したな」

 事件の犯人に死人が紛れ込んでいることは間違いないと話が付く。


「目星は、付いていないようだな」

「死神と悪魔が共犯の可能性があることはここにいる私達にしか知らないことよ。他の死神には可能性として堕ちた死神が有力だってことを伝えて探してもらっていたわ」

「何故本当のことを伝えなかった?」

「私達の中に裏切り者がいる可能性を伝えたら混乱が起きるからに決まっているでしょう?だから教えなかったし、私自身も裏切り者がいるとは思っていない。けれども他の死神がどうかってなると別の話よね。だから言わないことにしたのよ」

「なるほど」

 少しだけ試したモルテだが、テレーザの答えはテレーザらしいと思った。

「けれどまだ見つかっていないわ」

「つまり、堕ちた死神がいるわけではない。だが、ランバンにいる死神でもない、か……」

 停滞してしまった現状に部屋が静粛となる。

 そして、

「ランバンにいる死神の力を持つ者全てを調べる必要がある」

「それってどういうこと?」

「恐らく弟子ではないだろうが現役でもないとなると昔活躍したが今は引退した死神の可能性もあるということだ」

 斜め上をいったモルテの発言にランバンの死神達が驚愕する。

「そんなこと、あるのか?」

「あるないではなくあくまで可能性だ。いや、可能性ではないな。一線を退いたと言えどそれは肉体的衰えであり力はそのままだ。そこに悪魔が目を付けたとしたら……」

「俺達にとっては盲点ということか」

 モルテが言わなければ気づくことがなかったであろうことにランバンの死神達は話し合いを始めた。


 現在ランバンにはどれだけの元死神がおり、今は何処にいるのか、誰が尋ねるのかと話し合う。

「……おい、それは話が長くなりそうだから別の場所でしてはくれないか?」

 そこにモルテが待ったを入れて強制中断させるとすっかり脇に置いていたダニエルとフィリポが待合室に入って来た理由を問う。

「それで、そっちはどうしたんだ?」

「一通りの事情聴取が終わったから帰っていいということだ」

「そうか」

「やっとか」

「おぉ~」

 やっと警察から解放されることにモルテを初め幾人かが喜ぶ。

「それで、2人はこの後も時間は?」

「ある」

「俺もだ」

「それならこのメンバーで場所を移して話し合いの続きをしましょう」

 テレーザの提案に反対意見を言う死神はおらず、待合室にいた全員が……ではなく、

「ディオス、お前は先に宿に戻れ」

「え、いいんですか?」

「あまり聞きたくないという表情を浮かべているぞ」

 死神関連の話に完全に蚊帳の外になったことに加えて死神嫌いのディオスを先に宿に帰らせることにしたのだ。

「それなら場所はモルテが取っている宿の近くの酒場に行きましょう」

 と、テレーザがモルテの現在の拠点の確認を兼ねてと提案した。


 その後、警察庁を後にしたモルテ達はそのまま宿までディオスを送ると近くの酒場で話し合いを開き、解散したのは日付けが変わった頃であった。

結局モルテはこのように1日でいくつもの出来事に巻き込まれているんですよね。


ガイウスの家族に追いかけられる➡路面鉄道車内の事件に巻き込まれる➡酒場襲撃に巻き込まれる


本日のモルテは厄日ですね。

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