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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
11章 変動の鼓動
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積もる不満

『ニャァ……』

 影に潜む何かは相棒の影に戻って来るなり大人しくなった。

「失敗したようだな」

『ニャつら思っていた以上に手強かったニャ……最初にやったニャつは簡単だったのにニャ……』

 どうやら最初に殺した死神と同じ感覚で襲いかかったが失敗したことに酷くショックを受けているようだ。

「それは奇襲に成功したからでは?」

『それはそうだけどニャ、今回も上手く行くと思ったのニャ!』

「それでも幾人かに深手を負わせることが出来たではないか」

『よくないニャ!殺さないとダメだったのニャ!その代わりこっちが殺されかけたニャ!』

 失敗した原因は死神の数が多かったことで奇襲は先に感づかれ、加えて外へ放り出された先にも死神がいた為に逆に命の危険に陥ったのであろうと相棒は考える。


 そしてそれは、奇襲をかけると言い始めた段階から初めから失敗すると思い、その通りになったと相棒は肩を落とす。

「まあ、相手の方が上手でしたから。それでも生きて戻れただけ良かったと思うべきでは?」

『よくニャいニャ!結局死神だけでニャくその辺の人間も喰ってニャいニャ!』

「そこで欲を出しては刈られる隙が出来てしまうから逃げに徹して良かったと思いますが?」

『シャーー!』

 全く自分の気持ちを理解していないと威嚇する何かだが相棒は全く気にせず、影に手を突っ込んで隠れていたそれの首を持って引き抜いた。

「いつまでも拗ねている暇はありませんよ。帰りましょう」

『ニャ~……』

 そのまま相棒の腕に収まったそれはすっかり大人しくなり、そのまま人の波へと消えて行った。



  ◆



 結局この日あったランバンの死神との顔合わせは待ち合わせの酒場が襲撃されたことと現場の混乱により中止となった。

「それで、どうしてまた警察庁に?」

「私に聞くな」

 本日二度目となるランバン警察庁にモルテとディオスはげっそりとしていた。


 と言うのも、領域は内部で起きた現状を一時的に隠したり時間を止めたりして影響を最小限に抑えたりする。一般人が領域外から見れば何事もないように見え、仮に領域に入ったとしても力があるものやその者の近くにいなければ動くことが出来ない。

 それがもし解除されてしまえば領域内で起こった時間は動き全てがあからさまとなってしまう。

 その結果、予想通りとも言うようにして酒場の一部が崩れたことにより現場周辺は混乱。

 すぐさま周辺にいた人や飲食店の店員等が崩れてしまった酒場に駆け込むと救出活動を行った。

 幸いにして死者はいなかったが重傷者が多数出た。重傷者には医療に心当たりある者が応急措置をしたことで一先ず病院に運ばれるまでは何とかすることが出来た。

 その間に騒ぎを聞き付けた警察が駆け付け、偶然現場にいたことになっているダニエルとフィリポと共に現場の状況を整理、聞き込みを行った。

 そうして多くの人達の行動により現場は思ったよりも早くに終息することとなった。


 では何故モルテとディオスがまたランバン警察庁にいるかと言うと、これまた状況とタイミングが悪く、酒場の壁が崩れた瞬間を外から見ていたのがモルテ達だけだったのである。しかもその時は領域が展開した直後であった為に力を持っていない一般人は見えてもなければ見てもいない。

 その為、唯一の目撃者としてモルテとディオスを含めた7人と酒場にいた数名の死神が警察庁に呼ばれて一室に待機している。



「これだから警察は嫌いなんだ……」

 警察嫌いのモルテからしたら葬儀業の仕事以外で待機することは毛嫌いしている為に早く宿に戻りたくて仕方がなく、ディオスはアシュミストの警察署でなこと為に普段通りに振る舞うことが出来ず肩身が狭く感じてしまっているために息苦しく感じてしまっていることで2人して深く溜め息を付いた。

「おぉ~い、なぁ~にがあって呼ばれたんだぁ?」

 2人の話から先にランバン警察庁に訪れていたことを知ったガイウスが好奇心で尋ねたら。

「今日あった鉄道内の殺人事件の現場に居合わせ、その状況を聞きたいからとここに連れて来られたんだ」

「あぁ~、なぁ~るほどなぁ」

 モルテの説明にガイウスは納得した。

 しかし、モルテの話しを別方面から納得した死神もいた。

「だからダニエルとフィリポと一緒にいたのね。モルテをわざわざ警察庁に呼んだのはダニエルが事件のことを教える為だったからじゃないかしら?」

「そうだ」

 テレーザの言葉通りとモルテは肯定した。


「しかし、同様の事件が三件あることしか聞かされていない。詳しい話しを聞きたいところだが……」

「私達もそれを今日話し合うつもりでいたわ。けれど……」

「ああ。先に酒場の方を話すべきだろうな」

 モルテとテレーザの話を聞いて、酒場内部にいた死神、ヨーデル・エレバス・マルカブが介入してきた。

「気づいていたのか」

「ああ。あの影は悪魔だろう」

 あの場所にいた死神全てが対峙した存在、それが悪魔であることはこの瞬間、確定となった。

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