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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
11章 変動の鼓動
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駅前

 あれから時間が経ち夕方。

 モルテとディオス達は場所を駅に訪れてガイウス達とランバンの死神のまとめ役が来るのを待っていた。

「すごい……」

 その間、ディオスは何度も駅を見てはその大きさと外装に興奮していた。

 そんなディオスの様子に1人の死神が駅について解説する。

「ランバン駅は首都がクシュランエから移る際に課題であった物流の欠点を解決する為の貨物駅だったんだ。それが人の増加に加えて出稼ぎ等で遠方から人が来るようになった。その不便を解消する為に地方を繋ぎ今の駅となったんだ」

「それってつまり、今も貨物駅としての役割もあるってことですか?」

「ああ。正確には貨物鉄道だが人が乗り降りする場所から少しだけ離れた場所にある」

「そうなんですね。だからランバン駅は大きいんですか」

「敷地面積は相当なものだ」

 駅についての話しが全く尽きないことに片耳を向けて聞いていたモルテは呆れて溜め息を付くともう1人の死神に声をかけた。

「どこがいいのか分からん」

「彼に至っては初めてのものに興奮しているんだろう?それに、フィリポは鉄道や駅が好きだから話さずにはいられないんだ」

「就いた仕事を間違えているな」

「皆言っている」

 ディオスとフィリポと言う死神の様子を見ながら呆れる。

「しかしダニエル、わざわざ私達に付き合う必要はないはずだが?」

「そうだが時間があまったこととバラバラに行くよりなら共に行った方がいいと思ったんだ。それに、テレーザの顔を知らないままなら大変なことになる」

「……ここのまとめ役は癖があるのか」

「癖があるな」

 ダニエルと名乗られた死神はハッキリと言ってのけた。



 ここでダニエルとフィリポの2名の死神について紹介する。

 ダニエル・ジタロッテ・サビクはランバン警察庁に所属する刑事であり、鉄道内連続殺人事件を担当している。

 モルテとディオスを警察庁に呼んだのは事情聴取に加えて死神ならあらかじめ事件の懇談を教えようと思い呼んだのである。

 フィリポ・バンビーノ・シェアトもランバン警察庁に所属する刑事でありダニエルの後輩。そして大の鉄道好き。

 今回は事件の担当ではない為に警察としては関わっていないが、死神として裏から事件解決の為に手助けしている。


 そんな2人が何故モルテとディオスと共に駅にいるかというと、待ち合い場所に各々が行くよりならまとまって行った方がいいとダニエルが言ったからである。

 故に、ダニエルとフィリポは仕事が終わったからとモルテとディオスと行動を共にしているのである。



 それからしばらくして、モルテはポツリと呟いた。

「それにしても遅いな」

「確かもう一人死神がいると言ってたな?」

「ああ。ガイウスと言う死神だ。弟子ではないが死神の目を持ったオスローと共にいるのだが」

「弟子でもないのに目を持っているのは珍しいな」

「オスローは運動音痴と運転音痴でな」

「なるほど」

 ガイウスと共にいるはずなのにオスローが死神や弟子でないことを以外に意外と感じたダニエルだが、その後に述べられたことにそれでは死神になることは無理であると理解する。

「それなら彼は何なんだ?」

 そうしてダニエルは死神の目を持っていないのに同行しているディオスは何者かと問う。

「ディオスは私が営んでいる店の従業員だ。色々あって死神を嫌っている」

「死神を嫌っているのによく死神と共にいるな」

「事情があるんだ。その点はディオスの為にあまり触れないでもらいたい」

「……分かった」

 ディオスも色々と変わっているなと思うダニエル。

 実際は首を突っ込んだり巻き込まれてそのまま流される形で行動を共にすることになっただけであるが、それを追求することは今のところない。


「おぉ~、いたなぁ~」

 すると目に見える場所にガイウスとオスローがいた。

「ようやく来たか」

「夕方っては言ったがぁ時間を言ってねぇだろぉ?」

「そうか?」

 待ちくたびれたとばかりにモルテは睨み付ける。

「ですから申したではありませんか。待たせてはならないと」

「しっかしなぁ、決めてぇものだろぅ~?」

「明日もあるのですから今日は下見だけでよろしかったのです」

 オスローにも咎められて困った様子を浮かべるガイウス。

 そんなガイウスの話し方にダニエルといつの間にかディオスと話しを終えていたフィリポは目を丸くした。

「こいつはこんな話し方をする。悪気はないが我慢してくれ」

 と、遠回しに慣れてくれとモルテは言った。

「それで、そちらがランバンを纏めている死神でしょうか?」

「い、いや、俺ではなく他の死神だ」

 突然オスローに話しを振られたダニエルは慌てて否定した。


「あ~、いたいた!」

 するとそこに軽快な声がモルテ達にかけられた。

 見るとそこには茶髪に色の薄いサングラスをかけた中年の女が手を振っていた。

「赤い髪が目立ってて分かりやすいわね。それとダニエルとフィリポもいるなんて驚いたわ」

「あれがテレーザか?」

「ああ」

 声をかけてきた女がテレーザであるかを確かめたモルテ。

「そう、あたしがランバンの死神のまとめ役、テレーザ・ランバスター・ベガよ。よろしくね!」

 そう言うとテレーザは何故かモルテに抱き付いた。

「お、おい!?」

「テレーザは抱き癖があるんだ」

 突然のことに戸惑うモルテにダニエルが先程述べたテレーザの癖について教えた。

「それとこっちの男の子も可愛いわね~」

「えぇぇぇ!?」

 しばらくテレーザはモルテに抱き付いていたが離れると今度はディオスにも抱き付いた。

 ちなみに、ダニエルの説明によれば、テレーザの癖の対象は女と子供であり、ガッシリした体型や成人年齢に達し自分好みではない男は対象外であるために初めて会うガイウスやオスローはテレーザからは対象外であった。

「テレーザ、そんなことをしている暇があるならそろそろ移動しよう」

「あら、連れない」

 さすがに大勢の人間がいる場所で抱き付き癖を発揮させるのは良くないとフィリポが咎めるとテレーザは渋々ディオスから離れた。


 ようやく気を取り直したモルテは一つ咳払いをした。

「それで……」

「あら、もう行きたいの?」

「出来ることなら早くだ」

 このままテレーザの雰囲気に飲まれてたまるかとモルテは行動を早める。

「そう睨まないでちょうだい。もう案内するから着いて来て。さあ、行きましょう」

 一つ笑みを作ってテレーザはモルテ達を連れてランバンの死神が待つ場所へ案内を始めた。

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