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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
11章 変動の鼓動
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ランバンに訪れた理由

 シュミランの首都ランバンは現在の古都クシュランエから移された比較的新しい首都である。

 今から100年ほど前に植民地政策に失敗したシュミランは再起を行う為に数々の政策を行った。その切っ掛けとして首都をクシュランエから南のランバンへ移したのだ。

 その為にランバンでは100年よりも古い建物は見当たらず、代わりに近代的建物と広々とした空間を確保するためのいくつかの公園が存在している。


 まさかのランバンにディオスは動転してしまった。

「て、店長!どうしてランバンに?てっきりアシュミストに帰るものと思ってたんですが」

 異渡り扉から出た風景が一般的なアシュミストの部屋でないことは分かっていたが、何故ランバンに移動したのか理由が分からない。

 そこに椅子に縛られたまま転がっていたガイウスがどうやってか椅子を元の状態にまで立ち直らせると話に加わってきた。

「ディオスはいっなかったからぁ知らないなかぁ~」

 どうやって縛られたまま立ち直ったのかと驚きと疑問を抱くディオス。だが、ガイウスは縛られた状態のまま無視して言う。

「モルテが死神デスかっら行くよぉ~にいっわれたのがぁランバンなんだよなぁ」

死神デスって……何があったんですか?」

「ん?話しは聞いてただろ?」

「おそらく耳を塞いで聞いていないのだろう」

 宴の場で七人の死神(デュアルヘヴン)が帰れない理由を話していたのをディオスは死神と関わりたくないから意識を逸らしていて知らないのだとモルテは捉えた。

悪魔囲い(フラグマ)関係でラルクラスから調べるように言われたのだ。その1つがランバンだ」

「はぁ……」

 モルテがランバンを調べる場所であることはディオスが宴を早めに切り上げた後に死神達に伝えられている。


 しかし、どうしてディオスは自分もランバンに訪れることになったかと分からず煮え切らない様子である。

「でも、どうして俺もここに?」

「それはガイウスが出口をランバンにしたからだ」

 そう聞かされてディオスはガイウスを見る。

「いやぁ~、実家の奴らかっらぁ逃げぇ~る為になぁ~。ほとぼりが冷っめるまではぁ何処かに隠れよぉと思ってなぁ~」

「それならアシュミストでもよかったのでは?」

「あぁ~、そ~だったなぁ~」

「えぇぇ~!?」

 ガイウスの本音に呆れるディオス。

 その間、ガイウスはオスローが縛られていた縄をほどいてくれたお陰でようやく椅子から解放されて体を伸ばす。

「そぉ~れにぃ、モルテはアシュミストからランバンに来る手間がぁは~ぶけただろぉ?」

「ディオスを送り返していないが?」

「観光でもぉしっていけぇ~」

「お気楽過ぎます!」

 あまりのお気楽発言にモルテとディオスは頭が痛くなる感覚に陥る。

「だがまぁ、俺もこっちを手伝うからよぉ~」

「こちらの死神と行うから手は足りている。それに、店はどうする気だ?」

「臨時休業だっなぁ~」

「貴様は……」

 どうやらモルテを手伝う口実としてランバンにいる気満々のガイウス。

 さすがに長期とまではいかないだろうがある程度のところで帰らせようとモルテは決意する。

 その理由はファズマとレオナルド達だけでガイウスが請け負うはずであったアシュミストの葬儀業回ってくればいずれ支障が出る可能性があるからだ。


「あの店長、俺は……」

 そう決意をすると、ディオスが恐る恐る声をかけてきた。

 ディオスは行き先も知らずに着いて着ただけでランバンにいる目的がない。

 モルテはディオスの声に気づいたことで考え込んでいた手を顎へと移動させて別のことを考える。

「来てしまったものは仕方がない。すぐにアシュミストに帰らせるのもいいがこの際だ、会わせるのも悪くないだろう」

「会わせる?」

「会える保証はない。何せランバンにいるのは分かっているが何処にいるかまでは知らん」

 誰も会わせたいのかは探さなければならないこだと理解するディオスだが、少しだけ意外に思っていた。

「でも、店長のことだからすぐに帰れって言わないんですね」

「店からしたら大切な人物だからな。従業員であるなら会っておくべきと考えただけだ」

「従業員としてですか?」

 モルテの言葉に断片的にではあるが何かが引っ掛かったディオス。だが、それが何かまでは不思議なことにピースが上手くはまらない。

「そういうことだ。そろそろ出て昼食にするぞ」

「さっきに飯かぁ~?」

「貴様のせいで朝食を抜くはめになっただけでなく大きく立ち振るわなければならなくなったからだ!」

 朝食を抜いたことで空腹であるモルテの怒りがガイウスへと向けられた。


 そうして4人は部屋を提供してくれた死神に礼を述べてランバンの街へと足を踏み込んだ。

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