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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
11章 変動の鼓動
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門前の虎、後門の狼

 ガイウスを連れ戻したいライハード家から逃げてやり過ごそうと考えるモルテは多少手荒にしても問題はないと考える。

 向こうの執事達が動き出したらこちらも正当な理由が付けると動きを待つ。もし動かなくてもそのまま扉へ行く間に何かしでかしてきたとも言い訳に出来る為に焦りはない。

 大雑把ではあるが効果はいいはずと動きを待ち、それは起こった。

 1人の執事がガイウスへ、もう2人の執事がモルテへと向かってきた。

 モルテを押さえ付けている隙に他の執事やメイドがガイウスを取り押さえる気なのだと考える。

 これをしでかした執事達がただの素人の突撃、それならどれだけ楽だったことか。


 モルテは執事達の動きに無駄がないことを見抜くと構えることなく間合いに入って来た執事の1人の懐に入ると動きを止めて右拳で腹を殴り投げ捨て、もう1人の執事が繰り出した突き手を避けると後ろから回し蹴りを食らわせて控えていたメイドに飛ばした。

「冗談だろ?」

 襲い掛かって来た執事達をやり過ごしたというのにモルテは何一つ喜んでいなかった。

「ガイウス、こいつらは何なんだ?」

「執事っとメイドだがぁ?」

「動きに隙がないばかりか、かなりのやり手だが?」

 モルテと同じように襲ってきた執事をあしらったガイウスがこれが普通と言い切る。

 そんな会話を交わしている間にもナミアノが次の指示を出していた。

「全員でかかりなさい!」

「親が言う台詞ではないな」

 耳に入ってきた指示にモルテが呆れていると部屋にいた執事やメイド達が一斉にモルテとガイウスに襲い掛かって来た。

「逃げるぞ」

 ナミアノを初めとしたライハード家の狂気に付き合っていられるかとガイウスと共に攻撃を掻い潜り扉へと走る。

「行かせません!」

「退かないのならそのまま押し開ける!」

 扉の前に立ち塞がったメイドを前にしてもモルテは怯むことなく顔を鷲掴みにするとそのまま勢いを付けて扉に押し付けると扉を止めている金具が耐えきれなくなり壊して開けた。

 これにはさすがに執事やメイドだけでなくライハード家が驚愕して動きが止まる。

「急げガイウス!」

「おぉうよぉ~」

 その隙にメイドを放り投げて金具が外れた扉を跨いで部屋から出て大急ぎで黄金の鐘から逃げ出す。

「な、何をしているの!行きなさい!」

 我に返ったナミアノの言葉に慌てながら追いかける執事とメイド達。

 そこに騒ぎに気づいたフロントスタッフが現れた。

「お客様、如何なさいましたか?」

「っ……そこ、説明をお願いします。私達は2人を追いかけます」

 フロントスタッフへの説明を長年仕えてくれている執事に任せるとセルファロスとウェイバーを引き連れて追いかける。

 家族が直接追いかけることはよくあること。だが、その行為が普通であるはずがないことをモルテはまだ知らない。



  ◆



 逃げ出すことに成功したモルテとガイウスはあえて裏道を走っていた。裏道なら見つかるまで時間がかかると考えたからだ。

「脱出せ~こうだなぁ~!」

「ガイウス、お前の実家に仕えている奴はあんな奴らばかりなのか?」

「おぉ~よ。ぜ~いん手練だぜぇ~」

「仕える者にそんな技能いるはずないだろ!」

 黄金の鐘での一件で執事達がそこいらにいるチンピラよりも武道に優れていることに頭が痛くなる。

「見つけましたぞ!」

 背後から男、振り返ると執事と数名のメイドが走って来ていた。

「見つかるのが早いな」

 もう少し見つかるまで時間がかかると思っていたモルテは執念の執着に目を細める。

「あ~いつらはプロだっからなぁ~」

「それでよく家出に成功したな」

「そっこはぁ~、前もってのぉ計画とぉ~オスローのおっかげだぁ」

「そうか」

 もう執事達のことを追求すると頭痛が治まらないと素直に受け入れた。


 だが、モルテの頭痛がこれで治まることはなかった。

「ガイウスーーー!」

 丁度十路地になっている場所、右側から男の太い声と共に細い鉄棒がモルテとガイウス目掛けて猛スピードで振るわれてきた。

 声があったことでモルテとガイウスはそれぞれに避けることが出来たが分断され、間にはセルファロスが肩にゴルフクラブを乗せていた。

「いい加減に家に戻れ!」

「おっ断りだなぁ!」

 セルファロスに向けて拒否するガイウスだが、モルテはまた頭痛により頭を抱えた。

「こいつもゴルフクラブか……」

 どうやらライハード家の男はゴルフクラブを武器にしてしまうのだと突っ込みに困る。

「いや、普通息子にゴルフクラブを振るう親がいるか!」

「そっこぉ~にいるだろぉ?」

「それがおかしいと言っているんだ!」

 ガイウスの言葉に珍しく死神関連意外のことに突っ込みを入れていくモルテ。

 そもそも、セルファロスが現れたタイミングがおかしいのだ。恐らく全員が出払ってから追いかけて来たのだと思われるが、裏通りを運良く走り抜けて来たとしても執事やメイド、加えてモルテとガイウスよりも早く走って回り込める身体能力がおかしすぎる。

「聞くがガイウス、ゴルフクラブを振るった男は父親だよな?」

「そぉ~だがぁ?」

「お前よりも歳が上だな?」

「あったり前のこっとぉ~言うなよなぁモルテ~」

「そんな奴が回り込んで立ち塞ぐのはどうなんだ?」

 確かめてもやはり年齢不相応の身体能力に違和感を感じ始める。

 とはいえ、モルテとガイウスは本気で走っているわけでもなければ死神の身体能力を発揮しているわけでもないし死神の力を使っているわけでもない。

 逃げようと思えば逃げ切れるのだがそれでは振り切ったともいえない。

「さて……どうしたものか」

 ガイウスとは分断され後ろからは執事やメイドが迫って来ている。

 この状況をどの様にして切り抜けようかとモルテは考え始めた。

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