双子の店員
チャフスキー葬儀商の扉が勢いよく開かれ入ってきた人物を見いるレオナルド。
店内に勢いよく入ってきたのは店員のアンナ・ネフスキーであった。
「大変だよ父さん!」
「父さんではない。店主と言いなさい」
慌てた様子で入って早口で言ったアンナの言葉にレオナルドは訂正を入れた。
父さんと言っていることから分かる通りアンナはレオナルドの娘である。
「それと、言葉遣い」
さらに訂正を入れて問う。
「それで、どうしたのだ?」
「また飛び降りた人がいて、それとまた飛び降りそうな人がいてなんとか阻止して、それとそれと死んだ子の親が行方不明になってて……」
「落ち着きなさい。何を言いいたいのか分からない」
息も切らさず話すアンナに何を言いたいのか、何を言っているのか分からずとりあえず落ち着かせるように促すレオナルド。
その言葉にアンナは目を丸くした。しばらくして状況を読んだのか深く深呼吸をした。
「中央住宅街で飛び降りて死んだ人が出て」
「それで?」
「新住宅街で飛び降りそうな人がいたから力ずくで止めて」
「それで?」
「死んだ子の親が行方不明になっていたことが分かった」
「それで?」
「以上」
「説明になっていない!」
そこは親だからアンナが言いたいことは理解できる。だが、部分的な単語だけの極端な説明で説明ではないと突っ込むレオナルド。
そんな時、店の扉が再び開いた。今度は派手な音を立てず静かに。
「戻りました父さん……じゃなかったわ。店主」
「お帰りアリアーナ」
「お帰り」
店内でアンナと話をしているレオナルドに帰還を告げるアリアーナ・ネフスキー。レオナルドのもう一人の娘であり、アンナの双子の姉である。
「今アンナから報告を聞いていたところだ。アリアーナの方はどうだった?」
アリアーナが帰って来てくれてちょうどよかったと思うレオナルド。これでアンナの足りず理解しきれなかった情報をアリアーナの情報と照らし合わせて理解することができる。
「アンナと多分同じと思いますが、一つ目はカリーナ・ルダンの父親が一ヶ月前から行方不明になっていること。これについて警察では手がかりなし」
アリアーナの説明に一つ頷くレオナルド。警察でも手がかりがないとなるとアドルフに聞いても無理そうだ。
(それにしても、父親が行方不明か)
もしかしたら関連が出るかもしれないと頭の片隅に覚えておく。
「二つ目は中央住宅街で飛び降り自殺をした人が出ました」
「あれは驚いたよね。まさか白昼堂々、目の前で飛び降りてくるなんて」
「待て、近くにいたのか!?」
二人の会話に待ったをかけるレオナルド。その言葉にアリアーナとアンナが頷く。
「カリーナ・ルダンが通っていたお店に行こうとしていた途中で偶然」
「それから少ししてフネーラのファズマ君が来てくれたから対応を押し付けて……」
「それで、新住宅街で飛び降りそうな人を見つけたから力ずくで止めたと?」
「うん」
「え!?そんなことがあったの?」
「うん」
結論を読んだレオナルドの言葉にまた同時に頷くアンナに驚いた表情を浮かべたアリアーナ。
そういえば、出かけた時は一緒だったのに帰りが別々とはどうゆうことかと思ったレオナルドだがそれは後で聞けばいいことと振り払う。
ちなみに、一見飛び降り行為以外はまったく関連や関係がないように見えるがレオナルドにとっては大きく関係しているものであり無視できるものではな。
「それで、他にないか?」
レオナルドの問いにアリアーナが答えた。
「今回飛び降りに関係しているのが三人供、新住宅街出身、近い内に訪れたことがある人たちでした」
「ほう」
「今回自殺したカリーナ・ルダンと未遂で終わった人は新住宅街出身、もう一人は仕事で新住宅街へ訪れていました」
「なるほど」
アリアーナの言葉にこれで原因がどこにいるのか理解した。
「それともう二つ」
今度はアンナが話始めた。
「これは気づいたことなんだけど、三人供若いんだ」
「若い?どうゆうことだ?」
レオナルドの言葉にアンナは説明した。
「三人供、15才から20才くらいの歳だったの」
「それ私も思った。だけど、新住宅街っていう関係しかなかったのよね」
「それともう一つ」
アリアーナの言葉に人差し指を立てるアンナ。
「三人供、父親がいない」
「どうゆうこと?」
アンナの言葉について尋ねるアリアーナ。
「そもそも飛び降り自殺するっていうのがおかしいと思ったんだ」
「どこが?」
まだ分からないアリアーナにアンナは説明を始めた。今度は落ち着いているから部分的ではない。
「どうして自殺するのに飛び降りないといけないのか。自殺なら他にも方法があるはずなのに短い時間に三人も飛び降り。新住宅街以外に関連がないかなって調べていたら父親がいないことにたどり着いたの」
三人の共通点が幾つも現れた。アンナの言葉にレオナルドは嫌な可能性が頭によぎった。
「アンナ……何故それを早く言わなかった!」
突然声を上げたレオナルドにアリアーナとアンナは驚いた。
「まずいことになった」
そんな二人よ様子を無視してレオナルドは急いでコートを羽織った。
「全く、モルテの手紙通りになるとはな」
「父さん、どうゆうこと?」
レオナルドの切羽詰まる様子にアリアーナは店主と言うのを忘れて尋ねた。
「モルテが新しい従業員を雇ったのは知っているだろう?」
レオナルドの言葉にアリアーナとは頷いた。名前はレオナルドから聞いているから知ってはいるが残念ながら二人ともディオスの父親の葬儀に携わっていないから顔は知らない。
「その新しい従業員……ディオス君がどうしたの?」
それとどうしてレオナルドが急いで支度をするのか分からないアンナは首を傾げた。
無理もない。ディオスが今どこで、どこに向かって何をしようとしているのか知らないのだ。この中で知っているのはレオナルドだけである。
(モルテ、このようになることを予想していたのか?だから店の場所を教えるついでに……)
モルテの手の込んだ伝達と予想が的中したことに恐ろしいと感じるもどことなく楽しみという表情を浮かべたいのをグッと堪えるレオナルド。
手紙の内容は今回の件とディオスについて。あまりの予想の的中には驚くばかりだが悪いことに事態は一刻を争っていた。
「今の条件が本当なら、彼が危ない」




