ドラゴン対策
レナードはササイを貫いた領域を納めると急いでディオス、ユーグ、ヘイゼル、ルナマリアの4人へと駆け寄った。
「無事か?」
「レナードさん、ありがとうございます」
「私も無事です。それと、あなたのお陰で私の命は救われました。ありがとうございます」
「いえ、気がついたら体が動いていただけなので……」
無事であるとに感謝をするヘイゼルに戸惑うディオス。
だが、そんなディオスを怖い目付きでレナードとユーグが睨んでいた。
「だから、何で勝手に動くんだ!」
「頼むから今の状況を理解してくれ。これ以上ディオスの身に何かあったら俺がモルテに責められる!」
「ええ!?何で怒られているんですか!?」
「勝手に動いているからだ!」
「危ないことに首を突っ込みすぎるからだ!」
レナードとユーグから自重してくれと叱られるディオスは意味が分からないと慌てふためく。
無意識でやっているのだから一番ややこしく理解に苦しむものであるが、少なくとも現状において唯一の戦力外であるディオスが無茶苦茶な行動に出たら周りはそれに振り回されてしまうものであるのだが、裏を返せば心配しているのである。
そこも理解していないディオスは色んな意味で鈍すぎる。
そんな説教をどこか遠くから見守る様に見ていたヘイゼルは軽く頭を下げた。
「死神殿。ササイ、シャルマン、カルミニアンの3名を刈ってくださりありがとうございます」
「……私達にお礼を言ってよろしかったのですか?」
「はい。どの様な理由があれど悪魔として災いを振り撒く存在へと成り果てててしまった彼等を私共は開放する術をお持ちではない。代わりに刈ってくださったこと感謝いたします」
天眷者でも止めるだけは出来るが完全にとはいかない。
中途半端でしか止めることが出来ないことを歯痒く思うヘイゼルにレナードとユーグは気持ちを感じて何も言わない。ディオスもヘイゼルの表情をどこか寂しそうに見えていたが口にすることなど出来なかった。
ラルクラスは表情を張りつめたまま静かにルナマリアへと近づいていた。
「ルナマリア殿、先程の術は何だ?あの術は……」
問い詰めるラルクラスの顔にルナマリアは人差し指を立てたまま笑みを浮かべるとそのまま自分の鼻の先へと近づけた。
「説明はこれが終わってからです」
説明を先伸ばしにするルナマリアの行動にラルクラスは心の底でやはり、と呟いた。
6人がそれぞれ会話を交わしていると、すぐ近くをブレスが掠めた。
「うわあぁぁ!!」
何事かと慌ててドラゴンを見ると直線にブレスによる炎で床が燃えており、七人の死神が距離を取っていた。
「どうやら苦戦をしているようだ」
「ドラゴンにしては鱗が硬いからだろう」
「もしかして、レナードさんはドラゴンを刈ったことがあるんですか?」
「一度だけな。見たのはこれで三回目だがな」
「三回も!?」
普通一回だけでもすごいはずなのに三回もという衝撃にディオスだけでなくユーグやヘイゼルも驚く。
「一回は遠くから見ただけでもう一度は直接だ」
「何ですかその無駄に経験豊富な……ってそれなら七人の死神を助けてくださいよ!」
もうレナードが率先してくれれば倒せるんじゃないかと懇願するディオス。だが、レナードは鋭い口調で制する。
「馬鹿言うな!今はあいつ等がドラゴンを止めているから俺達が他の悪魔を刈っていられるんだ!」
「どういうことですか?」
「この場で最も避けたければならないのはドラゴンと悪魔が連携を取ることだ。今はドラゴンと悪魔を二分にしているから対処出来ている。だが、一瞬でも隙を与えれば先程のような惨事になる」
レナードの意を取ったラルクラスの説明にディオスは悪魔が枢機卿を襲いかかったことを思い浮かべる。
「だからあいつ等もそれが分かったから無茶して責めていねえ」
「だが、確実に責めることが出来ないのは確かだ」
「それって時間稼ぎは出来るけど手詰まりってことですよね?」
現状維持しか出来ていない七人の死神に気持ちが急に不安になっていく。
「物欲のドラゴンは怠惰のドラゴンよりは劣るが硬い鱗を持っている。何か工夫をしなければ貫くことは出来ない」
「ルナマリア殿?」
「聞いたことがあっただけですよ」
予想外にもドラゴンの鱗のことについて話したルナマリアに気を取られたヘイゼルはどこからと疑問に思う。
ディオスは今の話を聞いて頭を悩ませる。
「工夫か……鱗がなかったら簡単なんだろうな」
「なかったらって……なかったら簡単だろうなそんなこと……」
「せめて、鱗が取れたらいいんだけど……」
その発言に全員がディオスを仰視する。
「その手があった!」
「えぇ!?」
ラルクラスといった死神だけでなく枢機卿までもが声を揃えて言ったことに驚くディオス。
そして、レナードから教えられた策にまた驚くこととなる。




