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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
10章 教皇選挙(後編)
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巻き返し

 アルフレッドとハロルドは黒竜へと駆け出した。

 黒竜の力に恐れを抱いてないわけではない。けれども力に怖じ気づいていた気持ちはもうない。刈ると決めた以上は刈らなければならない。それが死神である。

「はあぁぁぁぁぁ!!」

「うおぉぉぉぉぉ!!」

 アルフレッドとハロルドは黒竜が吐くブレスを避けると死神の武器を振りかざした。

 黒竜の黒い鱗にアルフレッドのバスタードソードとハロルドのハルバードが高い金属音を上げて傷を与えた。

「入った!」

 眼鏡を外して制限を力を解除したアルフレッドとさらに鋭さを増したハロルドの二人の攻撃に歓喜する。

 しかし、鱗の下に辺る皮膚までは切れておらず、アルフレッドとハロルドの表情もどこか苦しそうである。

「もう一度だぁぁぁ!!」

 ハロルドは同じところ目掛けてもう一度ハルバードを振り下ろした。

 だが、黒竜はその場で雄叫びを上げた。

「ぐっ!?」

「ぐあっ!?」

「うっ……!?」

「きゃ!?」

 雄叫びは近くで聞いて空気の振動でアルフレッドとハロルドを吹き飛ばしただけでなく秘密の中庭にいた死神や枢機卿にも向けられ全員の動きが止まる。


「今だ!」

 不利な状況に置かされていた悪魔が黒竜の雄叫びによって出来た隙を逃さないと巻き返しを開始した。

 悪魔達は動きが鈍いが力を使われたら厄介な枢機卿へと襲いにかかる。

「おりゃぁぁ!」

「ぐあぁぁっ!?」

「ひぃやぁぁぁ!!」

 完全に動きが止まっていた多くの枢機卿が悪魔に襲われ悲鳴を上げるが、黒竜の雄叫びにより耳が麻痺している内は例え近くにいても全く聞こえないと言ってもいい。


 異変に気が付いた時には手遅れとも言える状況であった。

「しまった!」

 黒竜の雄叫びのせいで自分の声すらも遠くに感じながらもオウガストが領分を使って死神に現状を伝える。

(枢機卿が悪魔に襲われている!)

(何だと!?)

 領域なら例え口を使わなくても伝えたいことをそのまま伝えることが出来るという狙いは上手くいき秘密の箱庭にいる死神全員に伝えることが成功する。

 死神全員が気づいて周りを見回した時には枢機卿が幾人も倒れていた。

「お前らぁぁぁ!!」

 その光景にジェンソンが叫びながら釘バットを振りかざす。

 それに続くようにしてガイウス、オウガスト、エステル、ラウラが死神の武器を震い枢機卿に気を取られていた悪魔を刈っていく。

 だが、既に数人の枢機卿は命が絶えていた。

「くそが!」

「お前達全員刈り取る!」

 もはや狂気と言ってもいい勢いでジェンソンとラウラが辺り構わず悪魔を半分まで刈り取ってしまう。


「すごいものだな」

 その光景にエステルが驚いているとオウガストがまだ展開していた領域を通してアルフレッド達の声が聞こえた。

(……すまない)

(こんなことになるとは……)

(今は謝るな。誰もこんなことになると思っていなかったんだ)

(だが……)

(そう思うのなら次は雄叫びなんかやらせずすぐに刈り取れ!)

 誰も黒竜が雄叫びを上げて現状において最悪の事態になると思っていなかっただけに深刻である。

 だが、立ち止まっている隙はないと領域を使って動きが止まっている枢機卿を救出しているレナードが喝を入れる。

「さすがに雄叫びは私も予想していなかったな」

 ドラゴンのイメージで雄叫びがないためにエステルは現状を対応は間違っていない。けれどもドラゴンが一枚上手であったと結論付けて自身の気持ちを無理矢理納得させる。

「ディオスがいない!」

「何だと!?」

 そこにいつの間にか近くからいなくなっているディオスに気がついたユーグの声が聞こえた。


「終わりだヘイゼル殿!」

 まだ死神の救援が来ない場所で悪魔となったササイが動きが止まったヘイゼルに止めを刺そうとしていた。

 そこにラルクラスとユーグの側をいつの間にか離れていたディオスがヘイゼルを突き飛ばしてササイからの攻撃を回避する。

 ディオスがヘイゼルを助けに行けたのは偶然近くにいたから。

 穴から魔王サルガタナスが放った暴食乱用(グラトニーアビュース)から逃げた時にヴァビルカ教皇が張っていた結界からも抜け出すこととなったのだ。そして、黒竜の雄叫びによって場が混乱となった状況で見たヘイゼルのピンチ。目の前で起きよとしている出来事に助けに行かないほど冷たくないディオスは気がつくと体が動いていた。

 よってディオスは命の危険を省みずにヘイゼルを助けていた。


「大丈夫ですか?」

「あなたは?」

 もう駄目だと思っていたところでの救出。それを行ったのが死神と共にいた少年であるが、どう見ても死神や天眷者とは違い力がない少年であることに気がついて戸惑う。

「うおぉぉぉぉ!」

 二人の動きが止まったところにシャルマンとカルミニアンが拳と爪を突きつけようとしていた。

 完全に倒れた状態であるディオスとヘイゼルは起き上がる時間がない。今度こそ終わりが近づく。

守りの盾(シールド)!」

 だが、そこにルナマリアが滑り込んできて一瞬にして結界を張ってシャルマンとカルミニアンの攻撃を防いだだけでなく弾き飛ばしてしまった。

「何!?」

「貴様、まさか……!」

「勝手に動くな!」

 ルナマリアが使った術。それが何か知った直後、ユーグがあっという間に刈り取ってしまった。

「おのれ!」

 同胞が刈られたことにササイが悪魔の力を放つが後方にいたラルクラスが展開した領域によって防がれてしまう。

「これで終わりです!天眷・我らは害する者達から(ギアト)信じる者達を守らねば(エレンフォ)ならない!」

 すかさずヘイゼルが天眷術でササイを結界で捕らえてしまう。

「ヘイゼル!」

「……さようなら」

 ヘイゼルがササイに別れを告げた瞬間、ササイの体を見えない何かが貫き命を刈り取った。

明日は諸事情により投稿が17時と遅れます。

申し訳ございません

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