葬儀屋フネーラの物件事情
御無沙汰です。連載再開です
葬儀屋フネーラから出て来た客を見送りながらファズマは店内へと入った。
「戻りました店長」
ファズマは店内にいたモルテに帰還したことを報告した。
「ファズマか。随分と遅かったな」
「思ったよりも難航してしまいました」
「それはいつものことだから仕方がない。少しくらい問題を抱えている一般人の話しは何かを気に表面化しない限り知られることがないのだからか。だが、遅くなった理由はそれだけではないだろう?」
モルテからの鋭い発言にファズマは遅くなったもう一つの理由を分かっており、それを知りたいから聞きたいと悟ったが、こちらとしても今知っておきたいと思うことがあった。
「確かにそうです。それとは別に、さっきの客は何ですか?」
話を反らされたとモルテは溜め息をついた。それは今でなければならないのかと聞きたいところだがファズマの話が長くなるのは目に見えている。忘れる前に言っておいた方がいいだろうと話す。
「大工だ」
「大工ですか?」
大工が一体何の様でここに訪れたのか。しかし、その疑問も直後に期待へと変わる。
「もしかして、リフォームすることにしたんですか?」
「したいのはやまやまだがリフォームでは無理だろう。少なくとも建て直しが必要だ」
「それ、少なくともではなく確実にですよね?」
期待を込めた言葉をモルテに向けるも帰ってきた言葉にファズマは落胆した。リフォームでは無理と言うのは薄々分かってはいたがはっきりと言われてしまうとダメージが大きい。
実は葬儀屋フネーラは外見とは裏腹に内部、見えない場所での老朽化が激しく応急処置でとりあえず仕事と居住スペースだけを確保する程度ですませている。
よくも応急処置だけですませていると言えるがそこは木工や大工作業の腕の見せどころ。専門ではないにしても七年ほど前にモルテとファズマが仕事の合間に少しずつ不自由や大きな違和感にならない程度に修理をしていったのだ。十年持てばいい方で近くなったらまた改めて考えようと言い応急処置後は放置。
そして、もう少しで十年経つからどうするかと打診をしていた矢先に大工だ。当然ファズマは期待をしていたがモルテにバッサリ切り捨てられた結果となった。
ちなみに、葬儀屋フネーラの老朽化についてディオスとミクは知ってはいない。
余談ながら、葬儀屋フネーラの水回り設備があまりにも今の時代のものではなくかけ離れた充実さと便利さと水の無駄遣いと言えるような量の水の使い放題ができるのは応急処置とは別の要因で設置されているからである。
「それでは、大工がどうして店に?」
ダメージはまだ残るが復活したファズマは改めて尋ねた。
「向かいの空き家。あそこを明日から改修するらしい。それでしばらくうるさくなるだろうからそれの報告と挨拶らしい」
「買い手ついたんですね」
「らしいな。店にすると言っていたな。どの様な店かは聞いてはいないが」
「そうですか」
一通りの話に納得するファズマ。
ファズマが葬儀屋フネーラに住み着いてから向かいにあった空き家は誰にも買い手がなかった。敷地や間取りは広く、建物もそれほど老朽していない。ただ、建物が古く買い手がつかなかっただけ。それがこの度買い手がついたのだ。それも店として。
一体どの様な店でどの様な人が営むのかと考えたが深く楽しみに考えるものでもないのでそれはすぐさま頭の片隅に納めた。
「それと、ミクとディオスは?」
「二人には使いを頼んだ。クロッサセス時計商とレオナルドにな」
「どうして……」
モルテの口から時計商と言う言葉が出て一体何故と思ったファズマだがすぐさまその理由を知った。
「ああ、そうゆうことか」
そういえばディオスは持っていなかったと思い出すファズマ。元々持っていなかったとは考えられない。置いてきたのか、もしくは借金返済の一部として売ったのか分からないが持ってはいなかった。
「これからは持っていなければ不便だ。まあ、新しく入った従業員への選別といったところだろう」
どことなく扱き使うと聞こえるのは気のせいだろうか。
「それと、暇を出した。今頃はレオナルドに届け物を届けて新住宅街へ向かっている頃だろう」
「花を手向けにですか?」
「そうだ」
思っていたことが当たりファズマは何も知らないディオスが心配になった。
「大丈夫ですか?」
「ミクと同行させているから早々危険に陥ることはない。本当に危険になったらミクが止めるし一緒に逃げるはずだ。それに、既に手は打ってある」
モルテはそう言うとファズマに真面目な表情を向けた。
「さて、報告を聞かせてもらおう」
モルテの言葉にファズマは今まで外に出て調べてきたカリーナ・ルダンと関連がありそうな類似的出来事を話始めた。
久々だから葬儀屋フネーラから~と言うのは言い訳で……
本当ならチャフスキー葬儀商のターンだったけど訳あって葬儀屋フネーラのターンにorz
テンポが悪いと落ち込む……




