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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
10章 教皇選挙(後編)
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死神乱入

 空間の歪みから現れた死神の武器はゴルフクラブに釘バット。

 どう見ても武器とは思えないそれが、現れた死神が振るったことで悪魔を吹き飛ばし天井に埋め込んだ。

「ナイスショットォ~!」

「ホームラン!」

「ガイウスさん!?」

「ジェンソンか!?」

「おう、お久しぶりですラルクラス」

 聞き覚えのある闖入者に驚きの表情が広がる。

「おうぅ~生きてるってぇのはきぃ~てたが無事だったかあぁ~」

「何でガイウスさんがここに?そもそもどうやって入って来たんですか!?」

「それはレナードがこっちの状況がまずいと見て領域で飛ばしてくれたらからだ小僧。それで俺等が先陣として突っ込んで来たんだ」

「た~しかにまっずいなぁこれはよぉ~」

 驚くディオスに説明するガイウスとジェンソンだが、二人とも襲いかかってくる悪魔を討伐しながらの説明である。


「やはりレナードか」

「おかしいですね。結界は安定しているはずなのだがの」

「それでも領域で侵入を可能にしてしまうのが<領域の魔術師>の異名を持つレナードだ」

「どうしたら天族が張っている結界を通り抜けられるのかお尋ねしたいですね」

 天族であるケエルが大急ぎで結界を安定させてこれ以上の悪魔侵入を防いだというのにそれをものともせずに領域で二人の死神を送り込ませてしまったという事実にヴァビルカ教皇を含めたラルクラス達5人が頭を抱える。

「ん?先陣って言ってませんでしたか?」

「……まさか」

 ジェンソンが言った発言を思い出して呟いたディオスの言葉にユーグが顔を青ざめる。



「何で生きてやがるクソヤローー!!」

 直後、ヴァビルカ教皇は背後から現れたダーンの飛び蹴りをまともにくらい悲鳴を上げる暇もなく乱闘している枢機卿や悪魔だけでなく七人の死神(デュアルヘヴン)と黒竜の間を通って壁へと激突する。

 教皇が突然吹っ飛んできたという出来事に死神や天眷者や悪魔と関係なく全員が何かと硬直する。

「テメェ死んだんじゃねえのか!」

「生き返りました」

「生き返ってんじゃねえ!」

 そんな状況を無視してダーンと壁にめり込んでいるヴァビルカ教皇が対称的な表情でやり取りを交わすと、またダーンが飛び蹴りをくり出す。

 慌ててめり込んでいた壁から脱出したヴァビルカ教皇はダーンの飛び蹴りを回避したが、その表情はどこか楽しげである。

「逃げんじゃねえ!」

「逃げますよ。今のダーンの顔は魔王でも逃げてしまいたいくらいに恐いですから」

「ふざけたこと言ってんじゃねえ!」

「いえ、事実ですし本当に恐いです」

「そのふざけた口を二度と開かねえようにもういちど昇天させてやる!」

「それは困りますな。せっかく生き返ったのにここでまた死んでしまうのは」

 そう言いながらもついには死神の武器である小さな鎌を振るい出すダーンだが、ヴァビルカ教皇は身体強化した体ですんでのところ避けていく。

「それよりもダーン、いきなり蹴るは武器を振るうのはどうでしょうか?私は老体ですのできついのですが?」

「何言ってやがる!同い年のくせに自分の方が老けているように言うな!」

「死神であるダーンと普通の人間でしかない私の体を同じにしないでくれませんか?」

「嘘抜かせ!術で強化しておきながら痛いだのなんだの言ってんじゃねえ!」

 ダーンとヴァビルカ教皇は共に70代の老人である。ダーンは死神として一線を引いており、ヴァビルカ教皇は普通の老人程の身体能力しかない。

 それなのにダーンとヴァビルカ教皇は器用にも近くにいる悪魔を結界で捕まえたり鎌を振るって刈って数を減らしている。

 本当に70代のお爺ちゃんであるのかと疑問を抱きたく光景である。


  * * *


「何でジェンソン達がいるんだ?」

 ダーンとヴァビルカ教皇のやり取りに死神デス七人の死神(デュアルヘヴン)以外の死神がいることに気がついたアルフレッドが頭を抱える。

 その気持ちはアイオラ達も同じであり困惑していた。

「どうしてここに?」

「そもそもどこから入って来たんだ?」

「<領域の魔術師>のお陰だよ」

 女性の声が聞こえたと思った瞬間、突然黒竜の背後に人影が現れると槍を突き刺した。

 だが、黒竜の鱗が固く僅かな傷を与えた程度で弾き飛ばされてしまった。

「思っていた以上に固いわね。これじゃハロルドでも手に余るわけだ」

「ラ、ラウラ教授!?」

 黒竜に槍を突き刺した死神が師であるラウラであることにハロルドが困惑する。

「何故教授がここに!?学会の発表はどうしたんだ?」

「そんなもの当の昔に終わった。ここにいるのはこっちがとんでもないことになっているから教え子が心配で来たのよ」

 ラウラが心配と口にした途端、ハロルドの背に嫌な汗が流れた。

「教え子が心配とは。いい師ですねハロルド」

「それは違うぞヤード」

 皆がラウラに好印象を抱いたがハロルドだけは首を横に振って否定する。

 それを肯定するかのようにラウラの表情が黒竜を前にして喜びへと変わっていく。

「それに、こんな状況になるのだったら学会の発表を捨ててでも受け入れればよかったわ!」

 ラウラの発言を聞いたアルフレッド達は複雑そうにハロルドを凝視する。

「ハロルドの師匠ってもしかして……」

「強敵と戦うのが好きな人だ……」

「よくそんな師を持ったな」

「ハロルドが強気でよそよそしかった理由が分かった気がするよ……」

 受け継いでいるところはあれどラウラとは正反対の反応に何故か今回呼ばれたメンバーで良かったと思ってしまう。


「何落ち着いているの?さっさと黒竜刈って魔王刈りに行くわよ!」

 もう黒竜を刈る気満々でいるラウラはアルフレッド達に叫ぶと戦闘態勢に入る。黒竜も先程の不意討ちにラウラを敵と定めて睨み付ける。

 お互いに攻撃に出ようとした時、突然止める者が現れた。

「こら!ラウラはそっちではなくこっちだからな」

「離してオウガスト!エステル!」

「離しませんよ」

「黒竜は七人の死神(デュアルヘヴン)に任せて我々は雑魚悪魔の討伐だ」

 両腕をガッチリと捕まえられて黒竜から遠ざけられるラウラは激しく抵抗する。

「つまらないわよ雑魚なんて!」

「ならさっさと刈って黒竜をやればいいではないか。雑魚をやらなければレナードに頼み送り返すからな」

「くぅ~……」

 オウガストとエステルに引きずられていくラウラはものすごく悔しそうな表情を浮かべていたが、突然エステルから離れるとヤケ糞とばかりに黒竜以外の悪魔を物凄い勢いで刈り始めた。

「さすがは<疾風>の異名を授けられた死神だ」

 20年前に最年少として呼ばれた元七人の死神(デュアルヘヴン)の実力は衰えていないとオウガストとエステルは思うのであった。


  * * *


 秘密の中庭内に死神が突然現れることがなくなったこでラルクラスは最後に現れて隣にいるレナードに尋ねた。

「さて、どういうことか聞かせてもらえるか?」

「こっちが不利と見たから手助けに来た」

 簡単に言ってしまうレナードだがラルクラスとハイエントの心境は複雑なものであった。


 死神デスが何故死神を7人しか呼ばない理由はサンタリアで起こる不測の出来事を多くの死神に知らされない為である。

 継承の儀や教皇選挙が終わってしまえばその時に起きた出来事は広まってしまうもそれは微々たるものである。

 だから人数を制限して七人の死神(デュアルヘヴン)が生まれたのだが、天族が張っている結界を無視して自由に出入り出来るとなれば困るどころではない。


 だが、今回はそれがあったからこうして不利な状況へと傾きつつあった現状から抜け出しつつある。

 状況を理由にして許してしまうのはどうかと思ってしまうが今回は大目に見るかとラルクラスとハイエントは顔を合わせて仕方ないと頷くのであった。


「レナードさん、店長が……」

「知っている。魔王とこの下に落ちたんだろう?」

 慌てるディオスを制してレナードはモルテと魔王サルガタナスが落ちた穴を見る。

「だが、助けに行くことは出来ない」

「どうしてですか!?」

「モルテの邪魔をすることになるからだ」

 レナードの目には魔王サルガタナスとやり合うモルテが見えていた。

 その戦いは一歩も引くことなく均衡しており、ここで介入をしてしまえば邪魔になることが分かっている。

「そうか。さすがは<悪魔殺し>だ」

 レナードの言葉を聞いたラルクラスはモルテの実力を高く買う。

 ディオス以外誰もモルテが魔王サルガタナスに負けるとは思っていない。

「レナード、他の死神と共にここの悪魔を頼む」

「おう!」

 正式にラルクラスから秘密の箱庭にいる悪魔を刈る許可が降りたことでレナードも参戦した。

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