悪魔囲い破壊へ
ヘルミアにいる殆どの死神がそれぞれの場所で各々が悪魔囲いに向けて死神の武器をぶつけ始めた。
「おりゃぁぁぁ!」
「てりゃぁぁぁ!」
「うおぉぉぉぉ!」
ある死神は鎌や月鎌を直接ぶつけ、ある死神は銃や弓で純粋に力を放ち、ある死者は直接手を当てて力を流したりと悪魔囲いを壊そうと動き出した。
多くの死神が悪魔囲い破壊の為に何故物理的方法に移ったのか。
悪魔囲いは展開している悪魔の強さに比例して強度を増す、受けた衝撃を拡散する性質を持つが特定以上は耐えられないというレナードの調べによるものである。
故に物理的に行っても問題ないということで方法一つとして実行されたのである。
一つである理由は悪魔囲いを認識して既に数日が経っており、その間に力を付けた悪魔に比例するようにして強度がましたからである。
強度が増せば死神がいくら実力行使に移ったとしても骨が折れるもので最悪破壊出来ないということもある。
よって……
「うわっ!」
「きゃあ!」
「くっそ、かてぇな……」
「思ってたよりも硬い」
前日の二倍以上の死神が力をぶつけたというのにその多くが悪魔囲いの強度の前に跳ね返されたのである。
加えて悪魔囲いにヒビといった壊れる様子も見られない。
「まだまだ!」
「もう一発だ!」
それでも諦めずに死神は悪魔囲いに力をぶつけていく。
「予想以上だな」
悪魔囲いに力をぶつけていたミゲルは一旦その手を止めて改めて見る。
「レナードは効果はあると言ってたが見た感じそうは思えないぞ・・・・・・」
少し前にレナードから聞かされた内容を思い出しながら疑い始めるが、そもそも効果はあると言っていたが破壊出来るとまでは言っていないことに気がつく。
「目の前の悪魔囲いに関しては破壊出来ないということか」
少し考えてサンタリアを囲っている悪魔囲いはそもそも破壊が無理なのだと悟り溜め息をつく。
「そもそもこれは方法の一つらしいからな」
そこにジョルジュがミゲルに話しかけるようにして加わる。横にいるリーシャも無言で頷いている。
二人も一旦手を止めてどうするかと悪魔囲いを見る。
「けれど、昨日の倍集まってぶつけているのに効果ないように見えるよ」
「殆どないだろうな」
「そうだな」
悪魔囲いが全く無傷、攻撃を受けても変化がない様子に誰も否定しない。
「他の方法取ってみる?」
「少し待ってくれ」
リーシャの提案に待ったをかけてミゲルは他の死神はどうかと連絡を繋ぐ。
「おい、そっちはどうだ?」
『どうって、いくらぶつけても変化なんてないぞ』
『こっちもだ』
『同じく』
『全然駄目だ』
『こっちもよ。本当にこれ壊せるの?』
『あ~、分からね』
『おいレナード聞こえるか?』
『聞こえているし見えている。そう叫ぶな』
他の死神も変化がないことにお手上げ状態となっており、言葉のキャッチボールをしながらレナードへと繋いだ。
『レナード、効果はあるって言ってた割には全然ないのだが?』
『いや、僅かにだが効果はある』
『嘘つけ!』
「嘘言うな!」
レナードの話にいくらやっても変化がないのに効果があることが信じられずに一斉に突っ込みが入る。
『やれやれ。〈領域の魔術師〉が言っているのだから本当と思うのだが?』
そこにエステルがフォローに入る。
『それなら、タイミングを合わせて一斉にぶつけたらどうかな?』
「一斉にか?」
『そうだ。見ていたけれどそれじゃあ拡散してしまう。一斉になら拡散する隙間が少なく効果はあるはずだ』
『ああ!』
『なるほど』
「そう来たか」
エステルの提案に今までのことを振り返ってそれはしていなかったことに気がつく。
『そう言うことだから……今も悪魔囲いにぶつけている死神一旦手を止める!今から合図するから一斉に力をぶつけてくれたまえ!』
「待て、何でエステルが音頭を取っている?お前まだ鳩の宿にいるだろ?」
『今手が空いているからに決まっているからではないか』
「何で空いているんだ……?」
この状況で突っ込んだら負けと思いながらも聞きたくて仕方がない気持ちを懸命に堪えるミゲルはそれを悪魔囲い破壊に向けると決めた。
ちなみに、エステルの手が空いているのはレナードとダーンが中心となって作っている死神道具が最終調整に入ったからである。
ここまで来てしまえばエステルが出来ることはもうないからである。
『それでは行くぞ!3、2、1、放て』
エステルの合図に所々にいる死神が悪魔囲いに向けて一斉に力をぶつけた。
その瞬間、悪魔囲いは先程とは別物のようにして大きく揺れて、拡散仕切れない力がヒビをいたるところに入れる。
「うわぁ~!」
「よし!」
その呆気なさに呆然とするミゲルをよそにしてジョルジュとリーシャが喜ぶ。
「これいけるんじゃないかしら?」
「いくだろうな!」
ジョルジュとリーシャと同じように他の死神が目の前の結果に活気づく。
その時、
『悪魔の気配を感知!』
『こっちも感じた!』
遠くにい領域使いの死神達が各々に悪魔の出現を告げる。
「今ここで!?」
「タイミング悪すぎる!」
せっかく流れに乗ってきたのに水を指すような悪魔の出現にジョルジュとリーシャがぼやく。
「そう言うな。どうやらお見栄のようだ」
ミゲルがそう言った先にはサンタリアとを繋ぐ隠し通路から悪魔が数体現れる。
「これ以上壊させない為かあるいは……」
ミゲルが余裕を持って言いながら死神の武器を構える。ジョルジュもリーシャも不機嫌な表情を悪魔に向けながら死神の武器を構える。
「それじゃさっさとやつてしまうか!」
いくつもの場所で死神と悪魔の対峙が始まった。




