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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
10章 教皇選挙(後編)
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墓地下層到達

 七人の死神(デュアルヘヴン)の侵入の知らせを受けた上級悪魔は指示を飛ばしていた。

「下級を壁にして残りはここにいろ!」

「そこの中級、どこに行こうとしている!」

「何って死神の所ですよ」

「死神をぶっ潰して来ます!」

「馬鹿か貴様らは!」

「近くに奴等がいるのに俺達よりも低い下級に手柄を取られてたまるものですか!」

 そうだ!そうだ!と最下層に待機していた中級悪魔が上級悪魔の指示に大文句を放つ。その間に下級悪魔は上級悪魔の指示に喜んで上へと向かっている。捨てられると分かっていてもである。


 上級悪魔はもうじき七人の死神(デュアルヘヴン)がここに来ることを感ずいていた。だから下級を捨てて残りの中級を死神にぶつけ、その間に上級悪魔は力を蓄えるつもりであった。

 だが、近くに死神がいるというだけで中級悪魔は大興奮。悪魔は上位の者の言うことに従うことになっているが、お陰で不満が先に爆発してまい従うのは二の次。上級悪魔はそれを力ずくで鎮圧するはめとなる。

「その力を憎き奴等に向けろ!」

「だから行かせてください!」

「俺達なら奴等を足止め出来ます!」

「だからここにいろと言っているのだ!」

 上級悪魔の1体が怒りを爆発させて一瞬にして数体の中級悪魔を葬る。

 いくら従うことが分かっていても最初に不満を聞かされる身からすれば時間の無駄である。

 お陰で未だに七人の死神(デュアルヘヴン)対策が進まない。

「あ~あ、やりやがった」

「力を抑えているとはいえこれ程とはな」

「これだから憤怒を怒らせたくないものだ」

「同意するが、奴の力の一片が見られただけ良しとしよう」

 先程の一撃で中級悪魔が怯み不満が途切れた間に他の上級悪魔が各々呟く。

「いいか!奴等は必ずこの場に訪れる!その時お前達が相手をすればいい!」

「おおぉぉぉぉぉ!」

「奴等がここに!」

「それを分かっていたのですか!?」

「やっぱり上級はすごいです!」

 気を切らした憤怒の上級悪魔の告白に今まで不満を抱いていた中級悪魔が涙を流さんとばかりにその意味を理解して改めて自分達が置かれた役割に感動する。

 上級かれしてみたら、いくら死神を殺すことが頭にあるとは言えこれ程までに頭が悪いとは思っておらず、やっと理解したかと呆れている。

 かつて自分達も下級、中級の時に同じ反応をしていたのだが、そんなことなど頭の片隅にない。


 そんな状況が落ち着きつつあるころだった。

「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

 叫び声と共に死神の武器が憤怒の上級悪魔に振るわれ、見事に頭から切り裂いた。

 だが、

「嘗めるなぁぁぁ!!」

 不意打ちによる一撃に憤怒の上級悪魔は頭の片割れだけを後ろにいる死神に向けると爆発を起こした。

 死神を中心として起こした爆発は自身も食らうことを躊躇せず起こした憤怒の上級悪魔だけでなく近くにいた中級悪魔をも飲み込んだ。


「くっ……」

 そんな一瞬の間に憤怒の上級悪魔に一発入れたハロルドは領域を自身に纏わせるようにして展開するも、爆発によって吹き飛ばされて壁に激突する。

「死神だ!死神が現れたぞ!」

「殺せ殺せーー!」

 死神が現れたことでようやく自分達の出番だと無傷、ある程度巻き込まれても動ける中級悪魔がハロルドが飛ばされた壁へと突撃する。

 しかし、体制を直したハロルドが無言で振るうハルバードによって軽くあしらわれる。

 そんな様子を4体の上級悪魔が眺めていた。

「自分も飲み込んでやるかこれ?」

「死神を狙ってだが全く無傷だこれは」

「全くの無駄だな」

「やる必要あるのか?」

 そんな呟きを証明するように憤怒の上級悪魔は頭が割れており上半身が焼けているが生きている。

 ゆっくりと立ち上がる憤怒の上級悪魔だが、どこからか飛んできた矢を感じて目が見えないはずなのに掴もうと手を伸ばす。しかし、矢は直前で消えると後頭部から鋭く貫き、死神の力により命を刈られた。


 残り4体となった上級悪魔は静かに矢を放った死神を見た。

「ほう、手練れのようですな」

 そんな上級悪魔の様子を凛として弓の玄を引いたまま構えるアイオラ。

「次はあなた達です!」

 わざわざ宣戦するアイオラに上級悪魔は面白いと見る。

「二人、ではないな」

 上級悪魔はアイオラの反対側にいる銃を構えるヤードも睨む。

 最初に現れたハロルドからワンテンポ遅れての登場である。しかし、その誤差により死神が多数の中級を相手する必要が一人だけでいい状況が出来上がってしまった。


 七人の死神(デュアルヘヴン)が訪れることを感ずいていながら思わぬタイミングで出鼻を完全に挫かれた上級悪魔であるが、さらに計画を狂わされる。

「すみませんがここから先は通しません」

「それはこちらの台詞だ……何!?」

 何かがおかしいと思う上級悪魔は慌てて人間を閉じ込めている場所を見る。

 その瞬間、ヤードが不敵な笑みを浮かべた。

「ファビオ、あそこです!」

「おう!」

 どこに潜んでいたのか分からないファビオが床を滑って一瞬にして悪魔が作り上げた部屋へと到着する。

「はかったな!」

 まさか教えることになってしまったと悔しがる上級悪魔達。

 しかし、アイオラとヤードは涼んだ表情である。

「はかったのはどちらですか?」

「さて、邪魔者は排除しましょうか」

 救出をファビオに任せてアイオラとヤードは残りの上級悪魔討伐へと動き出した。

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