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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
10章 教皇選挙(後編)
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騒然とする枢機卿

 教皇選挙に出馬しない枢機卿は前もって選ばれた中から政務を行なうこととなっている。そして、重要な事案の決定は会議によって決められることとなっている。

 その会議において幾人かの枢機卿が小声で話し込んでいた。

「奴の元に向かった同胞はどうなりましたか?」

「未だに知らせが来ません」

「手こずっているのでしょうか?」

「もしくは止められているかです」

 枢機卿であるから会話は敬語で話すが内容は端から聞けば物騒であるとしか言えない。

 それを壁の隅で他の枢機卿がいないこといいことに不安事案について話す数名の枢機卿。

 別の場所でも……

「到着が遅れているようですな」

「思った以上の抵抗にあっていると思われます」

「しかし、何故急にこれほどまで?」

「やはりあれではありませんか?」

「……息を吹き返す切っ掛けとなったわけですか」

 数名の枢機卿が他の枢機卿が周りにいるにも関わらず小声で話す。

 その近くにいる枢機卿は会議中なのに余計なことを話しているのかと思うも、興味がないことと意識が会議に集中している為に耳に入っていないことで内容を知らないでいる。


 そんな最中、突然会議室の扉が音を立てて開いた。

 何事かと驚いた枢機卿団が見るとそこにいたのは黒ローブを羽織った集団、死神デスとその弟子に七人の死神(デュアルヘヴン)二名と分かる。

 場は一瞬にして騒然となる。

死神デス!?」

死神デスが何故!?」

 普段政務の場に介入してないはずの死神デスの登場に言葉を溢す者、立ち上がる者とその驚き様を伝える。

 そんな中でいち早く突然の来訪について尋ねる枢機卿がいた。

死神デス、一体どうなさったというのですか!?」

 恐る恐る尋ねるウッドロウにラルクラスはこの場にいる枢機卿に聞こえるように叫んだ。

「この中に悪魔とその関係者が潜んでいる!」

 下手に遠回しに話すよりなら端的にとこの場へ訪れた理由を言う。

 その告白に先程とは逆に静けさが漂うと、改めて先程までよりも場が騒然と化す。

「あり得ぬ!」

「あり得ませぬ!悪魔が潜んでいるなど!」

「信じられません!」

「どうして悪魔がいるとなるのですか!」

 一部の枢機卿がラルクラスに向けて否定的な言葉を述べる。

 その様子に危機感を抱いたウッドロウが叫ぶ。

「静まりなさい!この様なことで声を荒げてはなりません!」

 ラルクラスの言葉を切っ掛けにして混乱に陥るのを防ぐためにウッドロウが喚く枢機卿を咎める。

 それで僅かに静かになるも対象がラルクラスからウッドロウへと変わる。

「しかしウッドロウ殿、悪魔がこの場にいるとはあり得ませぬ。それは貴方もご存じのはず」

「それに悪魔の関係者も潜んでいることも考えられませぬ」

「ここには天族から力を授かった者が集まった枢機卿のみ。悪魔は別といたしましても関係者、力に飲み込まれた者がいるとは到底思えませぬ!」

「もちろんです」

「では貴方は死神デスを庇うのですか!」

「まずは死神デスの話を聞くのが先ではありませんか?」

 ウッドロウの言葉に攻め立てていた枢機卿がラルクラスに敵意の視線を向ける。

「許可もなく無断で入って来るほど重大であるとは承知していますが、どう言うことかお聞かせ願えますか?」

「初めからそのつもりだ」

 敵意を向ける枢機卿を無視してラルクラスはウッドロウの申し出に頷ずく。


「残念なことだが、枢機卿の中には力に飲み込まれた者がいる。そして、それを可能とする悪魔の侵入も確認している」

 ラルクラスの発言に場がざわつく。

「この場にいるのは枢機卿団の同行を探り、あわよくば思い通りに動かそうとしていたのだろう?そうだろう?そこにいる者!」

 スッと壁際に指差すと、そこにいた数名の枢機卿が驚いた表情を浮かべた。

「待ってくだされ死神デス殿!あの者の何処が悪魔、その使いと申するのですか!」

「残念だが既に調べはついている。そことそこの枢機卿もそうだ」

 ラルクラスはまた指を指して言うと、先程無視した枢機卿を含めた全員に言う。

「信じられないのなら力で見極めればいい」

 そう言われて殆どの枢機卿、一部は言われる前に行っていたが、それをしようとした時、指差された枢機卿が突然飛び出してラルクラスへと向かう。

「くそ!もう少しのところで!」

 言葉は既に敬語ではなく荒々しい様。

 その行動にようやく天眷術を使えるようにする聖句の一句を早く読み終えた枢機卿が遅れて気が付く。

 あまりにもタイミングが悪く天眷者である枢機卿は動けなかった。

 しかし、ラルクラスは全く動じていない。

「逃げられぬと悟って本性を出したか」

 あまりにも古典的な、しかし現状打破ではいい狙いであるが、死神デスを狙うには力が足りないと思う。

 その予想は正しく、悪魔はモルテが振るった鎌で数度にわたって切られてその場に崩れ落ちた。


 突然の出来事にどよめく枢機卿。

「うっ……」

 そして、この場で唯一力を持たないディオスも初めて見る殺し、既に人間でないことは聞かされていても人の姿のまま殺された様子に声を漏らす。

「大丈夫か?」

 すかさずオティエノが小声で尋ねるがディオスからの反応はない。


 そんな騒然と化した場で一部の枢機卿と悪魔認定された枢機卿は別であった。

 悪魔認定された枢機卿はこの場を切り抜ける為に一部が人間の姿から異形へ、関係者は

 その場から逃げようと駆け出すが、すかさずオティエノの領域によって捕らえられる。

「散々大聖堂(ここ)で暴れたのだからそれ相応の報いを受ける覚悟はあるだろう?」

 既に死神と天眷者によって鎮圧されることを悟らざるを得ない悪魔達。

 そして、天眷術に捕らえられて七人の死神(デュアルヘヴン)に刈られていくこととなった。

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