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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
10章 教皇選挙(後編)
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突然の謝罪と感謝

「ご迷惑とご心配をお掛けして申し訳ございませんでした!それと、助けていただきありがとうございます!」

「私からも皆に迷惑をかけてしまい申し訳ない。そして改めてディオスを救ってくれたことに感謝する」

 軽く頭を下げるモルテと深々と頭を下げるディオス。

 その突然とも言える謝罪と感謝に部屋に集まった全員が驚く。


 当初は謝罪しか頭に入っていなかったのだが、来る途中で助けてもらったことへの感謝もわすれないようにと思い出した為にこの場で感謝を口にするに至った。


 そんな二人の行動は確かに驚いたがすぐに落ち着きを取り戻す。

 そうしてすぐにアイオラがディオスへと歩み寄った。

「頭を上げてください。私達は死神として悪魔と生霊リッチに襲われてたあなたを助けただけです。それに、その際にあなたに深手を負わせてしまった方が申し訳ありません。辛い目に合わせてしまいごめんなさい」

「違います。貴女はあの時、俺に危険が迫っているって教えてくれたじゃないですか。対応出来なかった俺が悪いんです」

「それでも謝らせてください」

「……分かりました」

 ディオスとアイオラのやり取りが終わった所で様子を見ていたラルクラス達が安堵する。

「もう調子はいいのか?」

「えっと……まだ頭がぼやけている感覚ですがあります」

「出血が多かったですからね。しばらくは安静にしていてください」

「はい」

 アルフレッドの質問にディオスは現在の体調をモルテとしたやり取りを教訓として素直に言うと、怪我を負った時に対処してその後も経過鑑査に携わったヤードがその原因の理由と対応を促した。

「しかし、こうして元気になったことはよいことではないかの?」

「本調子ではないですがね」

 ディオスの傷を治したヴァビルカ教皇の発言にヤードは苦笑いを浮かべる。


「それで、ユーグはどうしてそんな様子だ?」

「触れないでください」

 少し視線を外して部屋に入って来てからげっそりとしたユーグに声をかけが、本人が言いたくない為に話が終了するが、一部では何となく心当たりがあるのだがそれは言わないことにした。


「それで、ディオスでいいのか?」

「すみません、自己紹介がまだでした。ディオス・エンツィオ=レオーネと言います」

 ハロルドの問にディオスはそういえばと自己紹介をする。

 そこにアイオラがパンと両手を叩いた。

「私達も自己紹介をしましょう。これからのこともありますし」

「そうだな」

「時間がないから手短に頼む」

 アイオラの提案にラルクラスとオティエノが賛同する。


 そうして手短にだが自己紹介が行われた。

 先代死神(デス)であるハイエントに驚いたディオスであるが、特に驚いたのは……

「教皇って亡くなったんじゃないんですか!?」

 いつも通りの反応をしてずっといた老人が教皇選挙をする理由となった本人であることに驚く。

 その反応にモルテ以外の七人の死神(デュアルヘヴン)は予想以上の反応に目を丸くするが、ヴァビルカ教皇は僅かに笑っていた。

「ご覧の通り生きております」

「ど、どうしてですか……!?」

「それが今回の教皇選挙と関係があるからとしか言えんな」

 未だに驚くディオスにハイエントがヴァビルカ教皇をジと目で見ながら言う。

「……ディオスを巻き込んだ責任がある。これからも巻き込まれるかもしれないから教えた方がいいだろうな」

「いいのですか?」

「俺が言うと言ったんだ。問題ないだろ?」

 ラルクラスの言葉にハロルドはまさかディオスに現状を教えると思っていなかっただが、言い返されては何も言えないと首を横に振った。

「話が長くなる。時間がない為に朝食を取りながらになるがいいか?それよりも食えるか?」

「問題ありません」

 ラルクラスの申し出を受け入れたディオス。

 ディオスとしては事情がどういったものか分からない為に内心では臆している。一瞬また巻き込まれるのではと思ったが、既に首を突っ込んでいる時点で巻き込まれていると切り替えて朝食へと移る。


 ちなみに朝食はアイオラお手製である。

 悪魔の動きが活発になってきたこと何かを仕出かす不安から食の確保の為にアイオラが動いたのである。

 その結果、領域やら監視やらで悪魔が近寄れない環境となってしまった為にエクレシア大聖堂の調理場を含んだ食関連はアイオラの直轄に近い形となってしまった。

 アイオラさまさまである。


 そうして朝食の席でディオスはヴァビルカ教皇が生きている理由と死神デス側の現状を教えられた。そして、これから起こるはずであることも。

「何だか、ものすごく大変なことになっているとしか思えませんが」

「実際に大事になっているから大変だな」

 ディオスの言葉にあっさり言ったラルクラスであるが一部からは何を今さらという視線を向けられていることに気づいていない。

「それでだな、ディオスは俺達と行動を共にしてもらいたい。ここに誰もいなくなる関係で安全が保証出来ないからだ」

 ラルクラスが何を言いたいのかすぐに分かったディオスであるが、念のために確認をする。

「それはもしかしてさっきの話ですか?」

「そうだ。枢機卿に潜む悪魔と関係者を全て駆逐するためだ」

 ラルクラスの口から出た言葉にやはりと思うディオス。

 ディオスはそれが本当に出来るのかどうか分からないから口ぶりからして可能なのだと直感する。

 死神が教皇選挙に介入を決めていると。

「ユーグ、後でローブを一着頼む」

「分かりました」

 そして、まだ自分がこの出来事に関わることを。

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