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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
10章 教皇選挙(後編)
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もう一つの試練

 ラルクラスは久々に開ける隠し通路を複数人の前で開け放った。

「これがその隠し通路ですか」

「思っていたよりも暗いですね」

 隠し通路がある部屋は窓から日の光が入っているから明るいが、隠し通路は奥へ行くにつれて暗くなっていることをアイオラとヤードが感想を述べる。

「それにしても、こんなところにも隠し通路があったとは……」

「こういった隠し通路はいくつもある。これは死神デスしか知らないものの一つだ」

「本来なら死神デスの見通しがたった頃にユーグに教えるつもりだったんだがな」

「そういうわけにもいかないってことですか」

 こんなところにもあったのかと驚くユーグにハイエントが教える。そうして色々と思うところはあるが集まった全員は改めて隠し通路を見つめる。

「ヴァビルカ教皇、管理者が示した場所はここでよろしいか?」

「ええ。この奥にアイオラ殿が仰られた男の子がいるとお教えられましたの」

「どうりで礼拝堂にいないわけですね」

 ヴァビルカ教皇が言ったことに納得するアイオラ。


 ヴァビルカ教皇が管理者という存在から男の子の所在を教えられなければ今頃は七人の死神(デュアルヘヴン)総出でエクレシア大聖堂内を探すはめとなっていただろう。

 場所が違っていたことに申し訳なさを感じるアイオラだが、見えた光景がエクレシア大聖堂ならどこも同じ通路で暗いこと以外分からず、結局は総出で探すことになっていたであろうから誰も責めない。


「それで、管理者とは一体?」

「管理者はサンタリアとエクレシア大聖堂の維持と結界を張っている天族だ」

「天族がここにいるのですか?」

 管理者の存在を明かしたラルクラスの言葉に知らなかった者全員が驚く。

「本来管理者は私達に手は貸さないのですが、悪魔が力を持ったまま侵入したことで今回は特別に力を貸してくださっているのです」

 「もしかして、前に言ってた上とは天族のことだったんですね」

「左様です」

 アイオラの疑問にあっさりと工程するヴァビルカ教皇。

「それで、天族が力を貸さないとはどういうことでしょうか?それと、話からして天族は手を出していない様にも聞こえますが?」

 管理者である天族がいるのなら自分で何か出来るはずなのにそれをせずに、むしろ死神に押し付けていることに疑問を持ったファビオが尋ねる。

「エクレシア大聖堂がこの地に置かれた際、天族とロード、そして始祖である死神デスの魂を引き継いだお弟子様との間に盟約を交わしたのです」

「それは?」

「結界内で起きたことは我々が解決することです」

「つまり、外敵からは守るが入って来た敵には自分で対処しろってことですか」

「そう、なりますかな。人間が対処出来ること、起こした問題は人間の力で解決しなければならないというとこです」

「そうすると今回は管理者にも不都合だから手を貸しているということか」

 天族が手を貸す理由をそう捉えてファビオは納得する。


「それならヴァビルカ教皇に教えずに男の子をここまで連れて来ればいいのに」

 今回のことに手を貸しているのならわざわざ回りくどいことをしないでもいいのではとオティエノの呟き一同頷くが、一部は事情を深く知っている為に気持ちは分かるが不可能と言う。

「直接手出し出来ないんだろう。出来るのは俺達を呼んで迎いに行かさせることなんだろう」

「面倒ですね」

 天族が出来る範囲があまりにも狭く、その僅かな隙からとはいえやはり回りくどいと思う。


 すっかり天族の話になってしまっているが、その為にラルクラスが隠し通路を開けたんじゃないだろうとアルフレッドが修正を取る。

「そんなことよりも早く行った方がいいだろう」

 ヴァビルカ教皇の話では隠し通路に悪魔がいること、アイオラが見た未来では男の子が怪我をすると聞かされている為に一刻も早く合流しなければ最悪死んでしまうと急かす。

「そうだな。アイオラの目が頼りだ。先行してくれ」

「分かりました」

「アルフレッドとヤードも頼む」

「ああ」

「はい」

 そうして3人は躊躇せず暗い隠し通路を全力で走り出した。


 三人の姿が闇に飲まれて見えなくなった頃、ヴァビルカ教皇が呟いた。

「アイオラが見たという男の子が無事であるのならいいのだがの」

「この通路は領域による探知が天族によって上手く機能しないからな。間に合ってくれとしか言えないな」

 余計な話をしてしまった為に時間を無駄ロスしてしまったことが痛いが、七人の死神(デュアルヘヴン)なら間に合うだろうと希望を持つ。

「それよりも問題は悪魔だ。この通路に侵入してきたとなると他の通路にも潜んでいる可能性があるな」

「天族に頼んで封鎖をしてもらうが、こちらでも手を打つ必要がある」

 もう安全とは言えなくなった複数の隠し通路の封鎖を決めたラルクラスは後程塞ぐ処置を取ることにした。


「それにしても、天族が俺達に迎いに行かさせる為に教えたのはどうしてだ?」

「もしかしたら、俺達にとって重要だからか?」

 一方でオティエノとファビオは天族の狙い、目的が分からないと悩む。

「考えるのは後だ。オティエノはモルテとハロルドにこのことを伝えろ。場合によっては一度こちらに戻って来てもらう」

「はい」

「ファビオはユーグとヴァビルカ教皇と共にもしもの為に準備をしてくれ」

「私もですかな?」

「貴方以外に怪我を治す術を持つ方がいるか?」

 ヴァビルカ教皇の冗談に真っ向から突っ込みを入れるラルクラス。

「ハイエントは俺と他の通路の封鎖を手伝ってもらいたい」

「ああ。具体的な方法は任せる」

 そうして指示を出し終えたラルクラスは動き始めた。

「時間が惜しい。頼むぞ」

 その言葉と同時に全員が振られた役割の為に動き始めた。


 エクレシア大聖堂の管理者ケエルが死神側に与えた試練。

 それは死神の運命を左右させるものであろうことを誰も感じることはなかった。

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