開門まで
サンタリアの正門が開くまでもう間もなくとなった頃、ヘルミアに集まっている死神はこれでもかという程に意気揚々としていた。
「それじゃその子がやってくれるのね」
「よく引き受けてくれたな」
「ああ。言っておいてなんだが俺も驚いている。まあ、あいつは前からモルテに恩を感じているから引き受けることにしたんだろう」
ダーンとベルモットの感想にその時に感じたことを言うレナード。
「だけど、本当にあっさり行くって言ったものだな。これは命懸けのことだと言うのにさ」
「こっちの意図を読んでくれたんだろうな。本当なら俺達に関わりたくないはずだからな」
「どんな奴だよそれ?お人好しか」
「限りなく優しいな」
「……ああ、そうか」
具体的に話さないレナードから出来るだけヒントを引き出したミゲルは人物像にようやく納得がいって、それなら引き受けてくれると肩を落とした。
「だけど、レナードの所に条件が当てはまる子がいてよかったね」
「本当にいるとは思わなかったがな」
サナリアの言葉にまさかとオウガストは驚いた口調で言うが、どことなく口元が綻んでいた。
死神達が話しているのは一般人でありながら死神と関わりを持って、今回の件に協力してくれるディオスのこと。
サンタリアにいる七人の死神にヘルミアとサンタリアを現在取り巻いている状況を伝えることを引き受けてくれたディオスに死神は停滞仕掛けていた現状を打破出来るとおおいに喜んでいた。
なお、レナードはもしものこととして現在ディオスの名前とどういった特徴を持っているのかは伏せている
とはいえ喜んでいるだけではない。一通り話してオウガストはレナードに尋ねた。
「それで、彼は今どうしている?」
「エステルと話してあいつには自分からサンタリアに向かってもらった」
「自分から!?どうしてもらうつもりだ?」
そうして今度は全体的に作戦を考えたエステルに尋ねる。
「彼には正門から行ってもらうよ」
「おい、大丈夫なのか?」
予想以上に真正面からであることにルーベンが問う。
「力を持っていないからむしろ正面からの方がいいはずだ。それに、天眷者に頼んで聖職者側の入口から入ってもらおうかと思ったけれど、それじゃ秘密の入口から遠ざかることと侵入している悪魔から不審に思われる可能性があるからやめたのだ」
あり得そうなことに全員それについて意を唱えない。
「そうすると、それが一番安全な方法ってことか」
「そうだな。それと私達死神と関わりを持っていないということを確実にする為に隣町から来てもらうことにした。既にそこの死神には伝えている。朝一でヘルミアに着いてサンタリアの正門前にいるはずだ」
「徹底的にやったな」
「危険なことをやってもらうから当然。それなら安全に運べるように努力するね」
そう言ったエステルに全員が表情を引き締めた。
死神が出来ないことを一般人に、しかも成人年齢に達していない少年にやってもらうのだ。
喜んでいる場合ではないと悟る。
「俺達が他に出来ることはあるか?」
「ん~……こちらも暴れるかい?」
ジョルジュの質問に答えたエステルの提案に一部の死神が目を見開くが、エステルは気にせずにレナードに尋ねた。
「レナード、悪魔囲いはどうだい?」
「いじるくらいは可能だ。それに、さらに詳しく調べるのなら奴等にバレることだ。だったらこっちに視線を集めることくらい可能だ」
「まさか、レナードが囮になるのか!?」
レナードとエステルの会話からそう結論付けたミゲル。
「これくらいは可能だろ?それに、あいつに頼むと言ったのは俺だ。これくらいはやらねえとあいつに悪いだろ?」
悪魔囲いをいじって悪魔から注目を集めるくらいしなければ引き受けてくれたディオスに申し訳ないと思うレナード。
それを聞いたミゲルはまったくと吐き捨てる。
一連の話を聞いたオウガストはすぐに話を整理、そして作戦を口にする。
「それなら、正門が開いてから悪魔囲いの調査に当たってくれ。その間に悪魔が現れるようであるなら刈れ。魅惑にかかっているようなら捕まえて天眷者に払ってもらうようにしてくれ」
「それじゃ私が伝えて来るよ」
オウガストの作戦にリーシャが口を挟んだ。
「それとこれはレナードが中心で行ってくれ。彼の顔を知っているのはレナードだけだ。レナード、常に彼を見ろ。そして気が済んだらすぐに離れろ」
「分かった」
作戦指揮として任命されたレナードは一つ頷いた。
「時間がない、指名した者は俺と一緒に、他は好きなように動いてくれ」
そう言ってレナードは残り数分で死神の配置を指名していった。
それから数分後、サンタリアのエクレシア大聖堂の鐘の音がヘルミアにも聞こえた。
明日から通常の投稿時間に戻ります




