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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
10章 教皇選挙(後編)
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悪魔の正体

 レナードによってエノテカーナに訪れたディオスとファズマ。店内には既にモルテ以外のアシュミストにいる死神がいたが、その様子は何やら深刻な面持ちであった。

「こ、こんばんわ……」

 一瞬にして雰囲気に飲まれたディオスは先程までどうして自分も呼ばれたのかという考えを振り払い何があったのかと不安になる。

「……来たか」

「こんな時間に呼び出しって一体どうしたんだ?」

「それを話すから座ってくれ」

 レナードに促されてディオスとファズマは空いているテーブル席に座った。

「単刀直入に言うと、サンタリアにいるモルテ達と連絡が途絶えた」

「えっ!?」

「はぁ!?」

 ディオスとファズマにこの話をすれば驚くことはわかっていたとレナードは二人が何かを言う前に話を進める。

「原因は悪魔の妨害と分かっている」

「悪魔?悪魔ってあの悪いこをするものですか?」

 ディオスの発言にレナードは死神から見た悪魔がどの様なものであるのか知らないことをすぐに悟った。

「ファズマはモルテから少しかじっているだろうがディオスは初めてか。この際に全て教える、事が事だからな」

 そう言ってレナードは死神が認知している悪魔について教え始めた。


「悪魔は俺達と同じ人間であり、死神が生きたまま刈ることが容認されている存在だ」

「悪魔って人間なんですか!?」

 これまで抱いていた悪魔像が崩れる発言にディオスは驚いて叫んだ。

「悪魔は死神と違って少しの切っ掛けでなれる。加えて生霊リッチ以上に厄介な力を持っている」

「人がそんなこと出来るんですか?」

「あれは人間と言えません。元人間と言った方がいいでしょう。人ではない異形の姿を取ることが出来ます」

「それに、普通の人や生霊を何とも思わない、道具としか見ない胸くそ悪い存在だ」

 レオナルドとリーヴィオの説明にディオスはそんな存在がいるのかと寒気を感じる。

「そうした存在が今回、どういう訳か準備を周到にして死神デスを殺しに来ている。それに俺達は手が出せないでいる」

「あり得ないだろ!?悪魔ってのは頭が単純だって聞いてるぞ!」

「その存在にヘルミアにいる死神が振り回されているってことだ。レナードがとんでもない提案を持って帰って来たのがその証拠だ」

 悪魔のことはモルテから聞かされた話しか知らないファズマにアドルフは二人が来る前にレナードが話した提案に未だに頭を抱えていた。

「……あの、悪魔が単純っていうのがどんな感じか分かりませんが、どうして死神デスを狙うんですか?」

 ディオスはミノリア島でモルテが話してくれた死神デスのことを思い出すと、おかしいと尋ねる。


 この質問にレナード達がどうしようかと考え始める。

 その様子にディオスは地雷だったかとファズマと顔を合わせて確かめ合う。

 しかし、それがすぐに杞憂であると悟る。

「ディオスは死神デスのことをどこまで知っている?」

死神デスは死を具現化する始祖の死神から力を受け継いでいること、あとはサンタリアのエクレシア大聖堂にいないとおけないことくらいです」

「それなら説明はいらないな。死神デスがエクレシア大聖堂にいるのは悪魔から狙われているからだ」

「悪魔がどうして?」

「死という現象をなくす為にだ」

 ディオスは首を傾げた。

 悪魔は負のイメージが強い。人間を唆して最終的には取りついたり死に追い込んだりする。

 未だに一般的なイメージを持つディオスにはどうして悪魔が死の具現化である死神デスを狙っているのかいまいち理解出来ていない。

「悪魔がどうして死をなくしたがっているんですか?」

「奴等は楽園の復活を目的としている。その為に奴等は死神デスを殺ことで成し遂げようとしている」

「楽園ですか?」

 楽園と聞いて何かと考えるディオスにマオクラフが教える。

「楽園って言うのはロード教の聖典に書かれている失楽園のことさ」


 失楽園とはロード教の聖典に記された人間最大の罪の話である。

 神は自分の姿を形とって作った人間と楽園で平和に暮らしていた。

 しかし、一人の人間が同じ人間を殺したことで絶望した神が全ての人間を楽園から追放したのが失楽園である。

 以降、神が住まう場所を天国シエラ、追放された人間が住まう場所を現界エーラと区分され、人々は背負うこととなった罪を許してもらうために信仰をすることとなる。


「悪魔はどういう訳か楽園時代にあたっていう人の不老不死を取り戻したがっているんだ」

「不老不死、ですか?」

 不老不死の記載もロード教の聖典にはそれとなく示唆されているだけてある。

 それに、不老不死と言われてもただ死ぬことと老けることがない程度で強く望もうとは思わないものにディオスは不思議がる。

「そんなことしなくても悪魔は死神に刈られない限りは十分に不老不死に近いな。だが、死神がいるから完全に不死とは言えない」

「もしかして悪魔が死神デスを狙うのは本当に不老不死になりたいから!?」

「そうだな。失楽園以降悪魔は死神デスをずっと狙い続けて来た。だから死神デスはエクレシア大聖堂に留まってそこにある結界の中で守られるようになったんだ」

 悪魔の目的と死神デスがエクレシア大聖堂にいる理由を理解したディオス。

 失楽園などいくつかは聖典の物語と思っていたが死神の話を聞くと本当のことなのかと思うようになる。

「随分気が長いことをしているんですね」

 だからこそ、悪魔がしていることがあまりにも気が長過ぎることにディオスの発言に全員が頷いた。

「だがよぉ、そぉ~れをしたところでぇ、神が定めたぁ理までは覆せないがなぁ」

「理ですか?もしかして生霊や不死者アンデットのことですか?」

「そぉ~れだぉ~」

 すぐに分かってくれて助かるとガイウスは頷いた。

「何で神がこんな理を作ったかは分からないが、死神がいなくなるとその世界で溢れる。だから俺達は悪魔から死神デスを守らなければならない」

 それが死神がしなければならないことだとレナードの言葉に死神は頷いた。


 死神と悪魔を取り巻く状況は分かったが、まだ分からないことがあるとディオスはここに来るまでずっと考えて先程まで忘れていたことを尋ねた。

「それは分かりましたが、その話をどうして俺にもするんですか?ファズマは店長の弟子ですが俺は違います」

 この話しは死神と死神の弟子だけが知ることのはず。それを何故自分にも話すのかと不思議でしかたがない。いや、死神がいる場所に呼ばれたこと事態がおかしいのだ。

 ディオスの意図を感じてレナードは目を閉じて数秒後に開いた。

「ディオスに頼みがあるからだ」

「頼み、ですか?」

「エクレシア大聖堂にいるモルテ達の元に行ってもらいたいからだ」

ディオスに白羽の矢が立ったその訳とは?

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