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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
2章 葬儀屋の仕事
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死の謎

 モルテが医者の元へ向かったのを見届けるとディオスはマミューに向かい合った。

「学友として、葬儀屋としてカリーナのご冥福をお祈り致します」

 カリーナの冥福を祈り一礼するディオスにマミューは目を閉じた。

 その後、ディオスは口を開いたり閉じたりを繰り返したが、意を決して口ごもりながら尋ねた。

「……その、聞いてはいけないこととは分かっていますが……カリーナに何かあったんですか?」

 これは葬儀屋フネーラの従業員ディオスではなく学友ディオスとしての言葉であった。

 その言葉にマミューは力なく首を横に振った。

「分からないんです」

 それはディオスとしては思っていなかった言葉であった。

 こう言っては悪いが自殺をしたなら家庭に何かあったのではと思ったからだ。カリーナの学友であったディオスは本人から家族仲がいいことをよく聞かされていた。だから理由がそこにあったのではと思ったのだがどうやら違っていたらしい。

「二週間くらい前に突然カリーナが私達を避けるようになったのよ。最近なんだけど夜になると外に出ていたみたいで、それを注意してどうにかしてやめてもらおうと思ったら……」

 そこまで言うとマミューはうつむいた。やはり娘であるカリーナのことを語るのは辛いのが分かる。

(何で家族を避けるようになったんだ?)

 ディオスはマミューの話からカリーナが突然として避けるようになったのか考えていた。

 話を聞く限り家族仲が悪くなったわけではない。つまり、カリーナに何かが起きたのではと考える。

「あの時は何もなかったのに……」

「あの時?」

 マミューの口から出た言葉をディオスは危機逃さなかった。

「あの時って何かあったんですか?」

 ディオスの問にマミューは口を閉ざした。だが、すぐに唇を緩めて話した。

「一ヶ月前に夫が行方不明になったの」

 やっぱりあったんだという思いよりもいなくなったという驚きの方が強かった。

「本当に突然に。理由も何もなしにいなくなってしまったの」

「警察には?」

「行ったわ。けれど、手がかりは何もないの。カリーナはすぐに戻ってくるって信じてた。もちろん私達家族も。けれど……」

 二人の間に沈黙が流れた。

 当然だ。夫の突然の失踪に娘であるカリーナの死。不幸が立て続けに起きたのだ。ショックでないと言ったらそれは間違いなく嘘であるし言う気もしない。気持ちをしっかり保つことしか今は出来ない。

(そうなると、どうして自殺なんか?)

 ディオスは再びカリーナの死について考えていた。

 仮に父親の失踪に病んで自殺を選んだとは思えない。カリーナは家族思いだ。易々とあきらめたりはしないはず。

 それに、父親か失踪したのが一ヶ月前、カリーナが家族を避けるようになったのが二週間前。変化までに二週間の間がある。間が空いていることがおかしい。

「カリーナの様子がおかしいと思ったことはありませんか?」

 ディオスの言葉にマミューは思い出した様子で言った。

「そういえば、怯えてたような……」

「怯えてた?」

「何に怯えていたかは分からないけど……そういえば、それが二週間前だったわ」

「二週間前……」

 マミューの言葉に呟くディオス。

 これで大体分かった。カリーナは父親の失踪で自殺をしたわけではない。二週間前に何かが起こりそれで自殺をしたのだと。

 では何故自殺をしたのか。それはまだ分からないでいた。

(あれ?これって自殺をしたって言うのか?)

 だが、自殺と考えていたディオスはふとその考えがおかしいのではと思い始めた。

 何かが起きたのなら誰かに相談するなり記録を残したりするはず。そんな話が全くない。

 そして、ある可能性に気づいたディオスは背中に寒気を感じた。

(もしかして、誰かに殺された!?)

 考えれば考えるほど出てくる嫌な可能性にディオスの表情は僅だが変わっていた。


「ディオス」

 そんな様子のディオスに医者と話をし終えたモルテが声をかけた。

「て、店長!?」

 突然声をかけられ驚いたディオスは言葉につまりながらも振り返った。

「話がついた。もうしばらく処置に時間がかかる。その間に車に乗せられる準備をする。手伝え」

「は、はい!」

 モルテの指示にディオスは後を追うようにその場を後にした。だが、カリーナの死については頭の隅で何度も考えていた。

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