寸断された死神
ヘルミアでからサンタリアへ渡りの伝達文箱を使っても手紙が送れないことが発覚した同じ頃、七人の死神もその事実が発覚していた。
「渡りの伝達文箱が使えないって大変じゃないか」
「大変って言うよりも大問題だ」
「困りましたね」
ゆっくりとした口調とは裏腹に内心で焦るアイオラ、オティエノとファビオはすぐに何故なのかと渡りの伝達文箱を見る。
発端はエクレシア大聖堂に悪魔がまだ潜んでいるのをモルテとハロルドから受けたこと。
あらゆる方法で潜んでいるのを知り、それが先に刈り取った後の悪魔ではないかと見方を付けると現在ヘルミアがどうなっているのか気になり始めたのだ。
ラルクラスの許可を取って悪魔のことだけをつづった手紙を渡りの伝達文箱でヘルミアの死神に送ろうとして、渡りの伝達文箱が全く機能しないことに気がついたのだ。
渡りの伝達文箱が機能しないことは七人の死神にとっては重大であり、その便利さと機能の仕組みをしるラルクラス達も険しい表情を浮かべた。
「結界はまだ弱くしているんですか?」
「はい。この一件が終わるまでと話を通しておりますな」
「目視でも結界は弱いままだ」
ユーグの確認にハイエントとヴァビルカ教皇がサンタリアを囲んでいる結界に異常はないと言う。
渡りの伝達文箱は領域を応用して作られた死神道具であるが領域が展開出来ない場所では使えないという欠点がある。その場所がサンタリアである。
サンタリアは結界によって死神の領域が展開しにくくなり、領域使いでなければ展開は難しいとされている。
当然領域の応用である異渡り扉はサンタリアに設置出来ず、渡りの伝達文箱もサンタリアの外と連絡をやりあうのは不可能である。
しかし、教皇の死去や今回特別に結界を弱くしたなら領域の展開や死神道具の使用が可能となり、領域使いでない七人の死神でも領域を使うことが出来るのだ。
それが何故か死神道具である渡りの伝達文箱が機能しないのだ。
「渡りの伝達文箱は機能しないのに領域が使えるのはどうしてだ?」
「分からないけれど、どうにかしてヘルミアと……」
「いや、無理に伝えるのはこの際やめた方がいい」
ヘルミアにいる死神に悪魔のことを伝えなければと頭を悩ますファビオをラルクラスが止めた。
「しかし……」
「無理に外に出てここに戻って来れないとも考えられる。そうなる可能性に七人の死神を向かわせるほど俺はここにいる者を犠牲にさせる気はない!」
ラルクラスの迫力にファビオは僅かに引いた。
あまりにも正論すぎるのだ。感情や当初の目的を達成しようとするならどこかで歪になる。もしかしたら動かないことでも歪になるかもしれないがラルクラスが言うことが正しいと直感してしまう。
「……死神の言う通りですファビオ。それに、こちらで渡りの伝達文箱が使えないと言うことは外からこちらへと使う渡りの伝達文箱を使っても送られないことは分かっているはずです」
アイオラもラルクラスが正論と促す。
その言葉であることに気がついたオティエノが顔をパッとする。
「そうか!外から送られて来たら原因はこっち。けれど仮にも送られて来ないとなると原因は外か!」
「そうだ」
オティエノの気付きにファビオ、そして促していたアイオラがラルクラスが真に言いたいのはそう言うことかと気がつく。
全員ラルクラスが言いたいことが僅かに違っていたが、ここでそう言うことなのかと理解して、ラルクラスは頷く。
実際はラルクラスとしては七人の死神をバラバラにするつもりなどなかったのだが、オティエノの推測があまりにも現状であり得る可能性であるためにそういうことにした。
「外から何かしらの接触があるまでは外に出るな。それと、もしかしたら何かしらのことで渡りの伝達文箱が使えるとなるかもしれない。手紙はそのまま入れておいてくれ」
「分かりました」
外との連絡が出来ないのは不安であるが、ここずっとは渡りの伝達文箱による連絡なしでやってきた七人の死神は素直にラルクラスの指示に従い自分の作業へと戻った。
◆
その頃、ヘルミアの鳩の宿では新たな状況変化に終われていた。
「リーシャ本当かそれは!?」
突然リーシャから領域を使った連絡でオウガストが驚きの様子を浮かべる。
『今入った事実よ!今ルーベンとジョルジュさんが確認しているからね』
「……リーシャ、ジョルジュはここの死神でないはずだが?」
『ジョルジュさんが目撃したからよ。今は正門の所にいるはずだから』
「分かった。こっちからも数人に向かわせるから詳しい説明を頼む」
『はいはい。出来るだけ早くね』
そうして連絡が終わると話を聞いていた死神が視線を向けたままでいる。
「オウガスト、どうした?」
メサの言葉にオウガストは嬉しいはずなのに険しい表情で言った。
「行方不明になっていた観光客がヘルミアで見つかった」




